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活用型情報モラル教材「GIGAワークブック」導入事例のご紹介 第2回 <兵庫県>


一般財団法人LINEみらい財団(以下、LINEみらい財団)では、GIGAスクール構想の中でより重要となっている「情報モラル」と「情報活用」の知識・思考力の育成や向上を図るために開発した、活用型情報モラル教材「GIGAワークブック」の、自治体様・学校様に向けた説明会を2023年2月14日に開催しました。

そこで、兵庫県教育委員会 教育企画課 指導主事 上田剛氏に「ひょうごGIGAワークブック」の導入経緯や、研修内容についてお話しいただいた内容を紹介します。

■兵庫県での「GIGAワークブック」導入事例(兵庫県教育委員会 上田剛氏)

1.これまでの情報モラル教育に関する取り組み

学校や家庭での自主的なルールづくりの支援や啓発リーフレットを配布

これまで兵庫県では、兵庫県教育基本計画に基づき、情報モラル教育の推進を主要事業のひとつとして、学校や家庭での自主的なルールづくりの支援や保護者に対する啓発リーフレットの配布を行なってきました。また、子どもたちのスマホやネットに関する実態調査も行なっています。
この他に県内の市町教育委員会独自で、中学校生徒会が中心となった独自のルール作りや、児童・生徒を対象にしたスマホに関する教室の開催、自治体独自にネットパトロールを実施するなど、さまざまな取り組みが行なわれています。
しかし、コロナ禍やGIGAスクール構想の前倒し等による急速なICT整備により、その様子が変化しました。学校では、1人1アカウントのクラウドサービスの利用により、学校内外を問わずオンラインを活用したコミュニケーションの機会が増加し、これまで難しかったデータの共有も容易にできるようになりました。こうした端末の活用が増えることに伴い、新たなトラブルが顕在化し、教育委員会だけでなく、学校、教員、児童・生徒、家庭と、それぞれが情報モラル教育の必要性を再認識しはじめました。

2.「ひょうごGIGAワークブック」の作成経緯

前身である「SNSノート」を以前から活用し、研修も行なっていた
そこで、2022年度は、「ひょうごネットモラルパワーアップ事業」を立ち上げ、以下の三本柱を一体化した情報モラル教育を推進しています。

  • 授業で使うことのできる教材の作成

  • 教員用の情報モラル教材の作成

  • それらを周知する研修会

その中で作成した教材が、兵庫県オリジナルのGIGAワークブックです。兵庫県では「ひょうごGIGAワークブック」と呼んでいます。

教材にGIGAワークブックを選定したのは、以下の3点の理由が挙げられます。

  • 従来の教材と違い、デジタル社会を生き抜く上でこれから必要な力という視点でまとめられている。

  • 教材のカード比較分類法が児童・生徒の自発的な会話を促し、主体的に学べる。

  • 自分の考えと友達の考えを簡単に比較でき、他者理解、自分理解につながる。

兵庫県では、GIGAワークブックの前身である「SNSノート」から、情報モラル教育を進める上で非常に有効な教材ととらえていました。この「SNSノート」を活用した情報モラル教育を進めるため、これまでに静岡大学の塩田准教授に研修の講師 をお願いしていた経緯があります。この研修は、小学校、中学校、高校、特別支援学校のすべての情報教育担当者を対象に開催している情報教育研修会の中で行なわれていました。

こうした背景から、兵庫県版の「SNSノート」を作成しようと動きはじめたところ、LINEみらい財団においてGIGAワークブックが開発されたタイミングにぴったりと合い、「ひょうごGIGAワークブック」を作成することとなりました。

3.兵庫県オリジナルページの紹介

不安や悩みを1人で抱え込まないよう、独自にトラブル時の相談先一覧などを掲載
GIGAワークブックには各自治体オリジナルのページを追加できるようになっています。
兵庫県のオリジナルページは、冒頭の児童・生徒向けページと巻末の保護者向けページの2ヵ所にあります。

まずは端末を利用する上で兵庫県の子どもたちに守ってほしい共通の約束を、「きまりを守ろう」、「自分の情報を守ろう」、「自分の体を大切にしよう」、「自分や他の人を大切にしよう」の4つの視点で整理した「ひょうごっ子8つの約束」ページです。
この8つの約束をもとに、学年やクラスの目標、学校の目標を書き込むページを作成しています。これは鎌倉市版のGIGAワークブックを参考にさせていただきました(※1)。

また、教材開発に携わっている静岡大学の塩田准教授から、「情報モラルを指導する中で、安全に活用する力の育成はもちろん、トラブルに遭った時の解決方法も合わせて身に付ける必要がある」とアドバイスをいただきました。端末やインターネットのトラブルは、学校の先生や保護者の方、友達にも言いにくいことがあります。そこで、不安や悩みを1人で抱え込まないよう、各トラブルの相談先を一覧としてまとめました。
※1「GIGAワークブックかまくら」

巻末の保護者向けページには、家庭で気を付けていただきたいことを「端末を使うときのルールについて」、「端末の安心・安全な利用について」、「端末を使うときの健康面の配慮について」、「トラブルが起きた場合の対応について」の4つの観点でまとめています。
次に、「インターネットの良さと危険性」というページを設けました。インターネットは、危険だからといって子どもたちに利用させないよう制限できるものではありません。端末がインターネットに接続していれば、世界のあらゆる情報に、誰でも、いつでも、どこからでもアクセスができ、子どもたちがこれからの社会を生きていく上でなくてはならないものです。だからこそ、子どもたちが危険性も知った上で上手に活用できるよう、インターネットの特性と、その特性から起こりうる危険性をまとめました。
最後は、「ケータイ・スマホアンケート」および「インターネット夢中度調査」の結果の抜粋です。ここでは、子どもたちと保護者の認識のずれを中心に、兵庫県の子どもたちの実態として紹介しています。

4.研修の内容

講義と、実際の授業を想定した演習で、教材の良さを実感してもらう
こうしたオリジナルページを盛り込んだひょうごGIGAワークブック」ですが、実際に先生方に使っていただけないと意味がありません。
そこで県下の小学校、中学校、高校、特別支援学校のすべての情報担当者を対象に、情報モラル教育の概要や「ひょうごGIGAワークブック」の活用方法などを一体化した研修会を実施しました。これは、各地区の現状も考慮した県内での一律の研修会とするため、各教育事務所の情報教育専門推進委員、県立教育研修所の指導主事と共同で研修内容を構築しました。

講義1は、塩田准教授による講義です。内容としては「情報モラル教育の今後のポイント」「情報活用能力について」「情報モラル教育のステージについて」「学校で起こるトラブルの整理および傾向」「行動変容に影響を及ぼす要因」「カード比較分類法」など、幅広く話していただきました。加えて、簡単な授業の演習も実施いただきました。
講義2と演習は、各地区の研修担当が行ないました。講義では「ひょうごGIGAワークブック」についてスライドで説明しました。特に「ひょうごGIGAワークブック」を各自の端末で開くことで、手書きのメモができること、それらを保存できることを丁寧に説明しました。
演習は、教材の中から「使いすぎていないかな①」、「どのように写真を撮ればよいのかな」のパートを選定して実施しました。
それぞれのパートの指導案を作成し、授業形式で行ないました。演習でカードを並び替え、隣と比較する活動の中で、自然に会話が生まれたり、隣の人との価値観のズレを感じたりと、参加した先生には、この教材の良さを実感していただくことができました。
「どのように写真を撮ればよいのかな」では、小学校4年生・理科の授業の冒頭での活用を想定に演習を行ない、参加した先生に教科での活用イメージを伝えることができました。
研修会後のアンケートでは、「情報モラル教育の進め方についてイメージが湧いた」、「今後、教科横断的にひょうごGIGAワークブックを活用したい」など、建設的な意見を数多くいただきました。

この研修内容は、参加した先生が各校へ持ち帰り、他の先生方へ伝達していただく必要があります。

そこで、校内研修を支援できるよう、「兵庫県 教育の情報化サイト」のウェブサイト(※2)に塩田准教授の講義動画や「ひょうごGIGAワークブック」の説明動画を掲載し、教材をダウンロードする際に研修動画が目に入るようにしています。この動画視聴にはパスワードが必要なため、県外の先生にはご覧いただくことができません。

このように「ひょうごネットモラルパワーアップ事業」では「ひょうごGIGAワークブック」の作成だけでなく、先生方の研修の支援に力を入れています。

※2「兵庫県 教育の情報化サイト」

5.導入予定の自治体へアドバイス

教材だけでなく、演習を含めた研修をセットで考えることが重要
GIGAワークブックは非常に良い教材なのですが、情報モラル教材は他にも多くの機関で作成されているので、学校の現場の先生にとっては「また教材か」と思われる方も多いかと思います。そのため、やはり研修とのセットで考えることが重要かと思います。
兵庫県では、「SNSノート」から約5年にわたって研修会を実施しておりますが、参加された先生は、カード比較分類法の演習などでは自然に会話が生まれることを体感され、「これは非常にいい教材だ」、「持って帰りたい」ということを、口々に言われます。
もしGIGAワークブックを導入される場合は、そういう演習を含めて一体化した研修会をしていただくことで、非常に効果のある教材になると思います。

■兵庫県教育委員会の導入事例 まとめ

兵庫県オリジナルページとして、トラブル時の連絡先・相談先の一覧を作成されたことや、現場の先生に使っていただくための研修の工夫など、具体的なGIGAワークブック導入の事例をお話いただきました。LINEみらい財団としても、研修のサポート等行なっていきたいと考えております。お気軽にお問い合わせ、ご相談いただけますと幸いです。

兵庫県教育委員会様ご協力ありがとうございました。

LINEみらい財団は今後も、教育現場や社会の変化にあわせ、情報モラル等に関する教育活動に取り組み、子どもたちがデジタル社会で生きる力を養うことを支援してまいります。

●ひょうごGIGAワークブック(兵庫県教育委員会HP内)
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