湘南シーレックスの経営を紐解き2軍経営の在り方を考える



前書き


こんにちは、linaresです。皆さんは湘南シーレックスを皆さんは知っていますでしょうか?
湘南シーレックスは横浜ベイスターズの2軍であり、2000年から2010年まで活動していました。しかし2010年に消滅し11年より1軍と同じ横浜ベイスターズに変更となりました。この11年間を追うことで今年から2軍に参入したハヤテ・オイシックスの行く末や経営の道しるべがわかるかもしれないと思い調べました。

まず1999年当時のファームの状態を確認します。
1999年の状態で、当時ファームは、
イースタンリーグ→日本ハム、巨人、西武、ロッテ、横浜、ヤクルト
ウエスタンリーグ→阪神、中日、近鉄、ダイエー、オリックス、広島
の両リーグ6球団となっており、それぞれ本拠地とチケット価格は


となっている。ちなみに現在は下記のようになっている。

99年の時点で湘南は半分しかないチケット料金を取るチームであったことがわかります。 
設立の背景当時ベイスターズの社長であった大堀隆が97年ファームの本拠地を平塚から合宿所の横須賀に移したとき、チーム名変更を思いついたそうです。
99年10月横浜2軍を湘南シーレックスへ変更することが発表されます。「シーレックス」は英語のSEA(海)とラテン語のREX(王者)を合わせた造語で、「海の王者」の意味。また、「湘南」という「全国的に知名度・好感度が⾼く、しかも使⽤料無料のブランド」(球団)を名乗ることで、新たなファンを掘り起こす狙いがあったそうです。
実際の記事に要因がいくつか挙げられていました。 

設立の要因


要因➀→地域との密着横浜という地名は全国区だが湘南や横須賀も知名度には負けていない。そのブランド価値を利用する。少年野球のチーム名にもシーレックスを使ってもらい地域に根づく。 
要因②→プロアマの垣根を超える地元の日石三菱、日産などの社会人野球チームや大学チームと交流することで、低迷するこれらに対し関心を呼ぶこと。 
要因③→チームの活性化、経営改善本来地ファームは育成の場で営業価値を生み出す場所ではない→赤字経営は深刻な問題。グラウンド、選手の年俸、合宿所の費用などで総額10~15億の運営費がかかっている中で、昨年99年の売上は約5000万円。何もしないよりかはお金を生み出せるようにすること。当面は設定予算の年間経費1億3000万円で売上1億を目指し、経費の1億3000万円に少しでも近づけることが目標。 
また費用の内訳については記事に載っていなかったのですが、部分的に乗っていたのでそれで推定します。まず1軍と共⽤の合宿所の運営費や室内練習場の管理費などがかなりの部分を占めているそうです。こうした施設関係費を除いても、遠征費など年間1億円以上の運営費がかかるらしいです。またキャンプ費が5000万円かかっていたみたいです。また当時の2軍監督・コーチの合計年俸が9900万円。選手の年俸ですがチームの総年俸が265,970万円、その中で何をもって2軍の費用とするかですがとりあえず2軍未出場選手を除いた年俸にしてみます。2軍未出場選手は投手だと森中・河原・川村・矢野・三浦・木塚・野村・小宮山・関屋・福盛、野手は進藤・石井・ローズ・メローニ・中根・鈴木・佐伯の17選手でした。ただ関屋は1軍の登板もないので含めることにしました。こうすると116,470万円になるので上記のグラウンド、選手の年俸、合宿所の費用などで総額10~15億の運営費に何となく入りそうな感じになります。この計算だと運営費の1億円の中にグラウンド代なども入りそうな感じなので円グラフにすると下記のようになります。


こう見ると選手費が圧倒的に占めているのでいわゆる独立リーグの運営とは全く違う雰囲気があります。
 
要因④→選手の意識改革
選手たちからシーレックスのユニフォームは着たくないというものは多く刺激となっている。→1軍と2軍を明確に分けることで意識改革
「ユニフォームがダサすぎて必死に一軍を目指した」by中野渡 球団と喧嘩して首になった野球選手より
「着始めた時は気にもならなかったんですけどね。だんだんいやになってきました。横浜のユニホームにあこがれて、プロ⼊りしたんですから」by古木 2000年5月8日朝日新聞より
 
またこの4つの要因のほかに後ろで2000年3月期から連結決算システムの導入→子会社も決算報告の対象に→プロ野球球団の多額の赤字が計上される事態へ→球団単体での黒字化を目指す流れもありました。
 
初年度に実際に行ったこと
コカ・コーラとコラボし、シーレックスオリジナルスポーツウォーターの販売。
2軍限定のキャラクターを作りグッズ販売に力を入れる。→「キャラクター関係で約三千万円の売り上げになる」by シーレックス事業部本部長 倉田
スポンサー確保を積極的に行う→京浜急⾏電鉄、湘南信⽤⾦庫、さいか屋、マルハなど⼗⼆社・団体をスポンサーに(2001年の記事では湘南信用金庫のスポンサー代は1000万円)。
横浜信用金庫とのコラボでシーレックス応援定期預金を発売、シーズンパスも1万円で湘南信⽤⾦庫を通じて販売。
京急バスにラッピングカー2台を運航してもらった。
横須賀球場で⾏う35−40試合の主催試合のうち、七割に当たるウイークデーは、四、五⽉の寒い期間を除き、基本的にナイターにする。
8月27日にはカレーナイターと銘打ったイベントを開き来場者にカレーをプレゼント、休日にはバーベキュー大会を主催、その他の日でもシールのプレゼント、最終戦にはファイルやノートをプレゼント。
スカパーで10試合の放映。
⽉刊情報誌「ビューティフル・ヨコハマ」の発行。
 

初年度の結果


公式戦入場者数は1.5倍に、売り上げは2.4倍に。売り上げの内訳は下記のようになった(単位:万)、

ということは、99年度のスポンサー売り上げは1,124.3万円、2000年のスポンサー売り上げは6000万円となる。また2000年のスポンサー売り上げの内3000万円がシーレックスウォーターの売上だったそうなので、純粋なスポンサー売り上げは3000万円ということになる。
全体の売上7000万円の内横浜スタジアムの売店(パン、ジュース、焼きそば、カレー、球団グッツ)の売上が2000万円であったらしいです。
来場者数では5月12日までの9試合で2万1000人を動員するロケットスタートとなっていたようです。ただこのシーズンはイースタンリーグ全体で99年が29万8千人のところ00年は42万人とリーグ全体で大幅な増員が見られているのでここにも注目しないといけません。
 
アマチュア野球との交流では日産との交流試合を行いました。
 

シーレックスのその後、01~10年まで


00年オフに選手の人件費、合宿所があるベイスターズ総合グラウンドの年間賃貸料を除く経費をすべて湘南が引き受けることになります(事業所が独立)。
また地元企業向けのファンクラブを年間3万円で販売しました。これには地元企業団体150団体が参加したようです。01年にはスポンサーも61社に増えたようです。
そして2001年の事業収入は1.5100億円と昨年より1700万円増加。内訳はチケット7000万円、スポンサー契約3000万円、シーレックスウォーターは2100万円など。
横須賀スタジアムの観客動員数は01年に1085人、2002年には932人、2003年には1025人とある程度の安定をみせました。しかし2004年は951人、2005年は813人と減少し始めます。
そして風向きが2005年変わり始めます。2005年の1月にシーレックス事業部が廃止されます。要因として数千万単位の支援をしていたスポンサー企業が撤退し、協力的だった横須賀の経済界は、球団運営への不信感を持ち始めました。
 
そしてそうしているうちに2010年急に消滅が決まります。
理由として加地球団本部長は「地域密着度が高くなり、一定の目的を果たした」、「県外ではチーム名の認知度が低い」と説明しています。(週間ベースボール2010年8月23日号)
ユニフォームのとロゴの統一による経費削減も上げています。統一することで1000万円の節約になるそうです。
また毎年約2億円の⾚字を計上し、05年には球団業務部内に吸収され、営業⾯は既に⼀本化されていたそうです。
 
ただし、9月13日号のボールパーク共和国では二軍独自のチーム名は今後球界に誕生してほしいというアンケートでほしいは61%、ほしくないは39%となっており、肯定意見では地域密着や選手の意識改革、否定意見では1軍2軍別なのはなれないという意見がありました。
 

筆者の感想と考え


2軍で独立しサービスを行うという点で選手の意識改革を行うという点では一定の効果はあったように思える。ただ興行として考えると内訳は詳細にわからないがスポンサーの依存度が約半分を超えており、1.5億円と独立リーグ、B2リーグに近い状態だったのかと推測できる。ただチケット収入は非常に多くそこはNPBにかなりよっている?
しかし、新2軍球団は独立リーグと近い状態となるのかシーレックスと近い状態になるか個人的に考えた際に独立チームに近くなると考えており、選手の顔で売ることや1軍に昇格する期待感で売ることは難しいと思う。
またある意味ベイスターズブランドを利用しても20年前ぐらいの話ではあるが入場料だけでは2000万円ほどしか儲からず球場内の売上でも7000万円ほどなのでオイシックスアルビレックスの池田拓史社長の言う6億円売り上げの11%しかならない。つまり他スポーツと同じかそれ以上に広告収入やそれ以外の売り上げを確保しなければならないと再確認した。
最後に既存のNPB球団がユニフォーム代約1000万円で選手の意識改革を行うことができるなら普通にありだと考えた。ホークスの和田が24年契約更改で1軍とファームでユニフォームを変えることを提案していたり、ロッテは今季からファームユニフォームを採用するなど動きがみられる。その中で2軍を独立化させ意識改革を行い、さらに地元のスポンサーから少しお金をもらえるなら全然ありと考える。またマイナーのチームのように帽子やユニフォームにデザインを凝らしそれを売るという行為が行われている。現在ファームの注目度が若干上がっているなら踏み出してもありと考えた。
 
参考資料
週間ベースボール、毎日新聞、朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞

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