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秋のモクセイと焙煎、桂花烏龍茶

暑い夏が終わると、次は香りも色も綺麗なモクセイの季節です。


台湾のモクセイの品種は、少し日本の金木犀と違い、四季咲きモクセイという品種がほとんどです。学名はOsmanthus fragrans var. semperflorens、中国語では桂花と呼び、銀木犀も金木犀も四季咲きモクセイも木犀(モクセイ)の変種であるようです。文字通り、金木犀はオレンジ色のお花、銀木犀はより白いお花を咲きますが、台湾で一番よく見かける四季咲モクセイの特徴は、開花期が長いとのことです。実際の開花期は大げさの四季ではないのですが、夏を除き、秋から翌年の春までに何回も咲くそうです。夏は唯一の不開花期なので、秋に咲くモクセイの香りが特に濃く感じます。秋の涼しい風とともに吹いてくるモクセイの香りを、烏龍茶と一緒にいただくと癒しの一服になります。

【包種茶、ver.1 ~ver.3まであるの?】

台湾の「桂花(モクセイ)」の歴史を遡ると、1880年代に初めて台湾茶の世界に登場したことが分かります。1870年代は不況などの原因で台湾茶の需要が大きくカットされその状況を改善するために、1881年、大稻埕(現在の迪化街エリア)のある茶貿易商、吳福源という方が、「香片茶」、つまりお花の香りをお茶に着香させる、というフレーバーティーの作り方と職人たちを台湾の茶農家に紹介しました。中国福建省発祥の作り方で、最初は台湾の茶葉を福建省に運んで加工していたのですが、運ぶコストや時間が無駄のため、台湾でもフレーバーティーに使える花を沢山栽培し、台湾で加工することになりました。ジャスミンの他に、台北の近郊にモクセイが沢山栽培されました。特に「南港」と「石碇」という二つの場所で一番多く栽培されています。それ以来、この地のフレーバーティーは「包種茶」と呼ばれるようになり(青心烏龍種のお茶を紙で包む、という意味で包種茶)、中では「南港包種茶」が一番有名です。この時期の包種茶は、実は現在私たちが飲む包種茶と違い、桂花(モクセイ)が使用されています。そして1912年に、「お花が入っていないのに、お花の香りがするお茶」が初めて発明されました。この前代未聞の作り方で大ヒットして以来、「包種茶」は「お花の入っていない香り高いお茶」に生まれ変わりました。昔の包種茶と区別するために「包種茶ver.2」と呼ぶこともあります。特に文山地域で作られた「包種茶ver.2」の品質がよく、「文山包種茶」という呼び名もこの時期から定着してきました。そして「包種茶ver.3」は高山茶の前身についての話は、次回の高山茶の回にします。

100㌔のお茶に25㌔の桂花が必要であるため、茶畑の周りに沢山のモクセイの木が栽培されました。

これらのモクセイの木は、まさに茶の木のために存在しているのです。

そう思うと少し寂しい感じがしてきました。

毎年の10月は、モクセイの季節である。南港の里山のトレッキングルートや登山マップを見ると「桂花歩道」もあります。秋にモクセイの森に潜ると、アロマが身体に沁みます。

モクセイを摘む手作業が多く、人件費の高騰、そしてお花がなくても花香り高く「包種茶ver.2」が作られ、モクセイの木は観賞用になり、長年眠っていました。

しかしながら、近年のグローバル化により台湾茶が再び海外のバイヤーから要望を受けるようになりました。特に、アジアンっぽいフローラルティーが求められるとのことで、2015年に行政院農委会の茶業改良場により、モクセイの花を「包種茶ver.3」、つまり球型烏龍茶とブレンドした物を中心にして海外市場の開拓に力を入れました。




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