外資系人事OLが、ジャニーズの組織戦略を人事的に解説してみた① ~タッキーって何やってんの?編~

 

2019年、ジャニーズ事務所の動向が何かと世間を騒がせていますよね。

2018年は渋谷すばる・今井翼の退所、某ベテランタレントの不祥事、2018年末の滝沢秀明の引退。

そして2019年、嵐が活動休止発表、そして、2019年7月、代表取締役社長であるジャニー喜多川氏が死去。 

「ジャニーズ事務所崩壊の危機?」「ジャニーズ帝国大丈夫?」とテレビでもネットニュースでも会社でも学校でもざわつきまくり…。

かくいう私も、ジャニーズ事務所に関する報道が流れる度に、職場で「大丈夫?」「生きてる?」「今日よく会社きたね」と何度も生存確認をされたものでした。

…そう、私は小さいころから母親の英才教育を受け、人生の3分の2をジャニーズに捧げている、生粋のジャニオタです。

一方、私は平日の昼間は某外資系IT企業の人事部で働くOL。毎日毎日、あそこの組織のコンディションがどうだ、こちらの組織の働き方改革がどうだ、そっちの組織では人材流出が止まらない!と、様々な人事課題にぶつかっては、どうしようかなー、何したらいいかなー、と頭を悩ませています。

そんな私が、現在のジャニーズ事務所の激動を人事戦略・組織戦略的観点から解説してみるよ!というブログです。

初回の今回は、こんなテーマでいきたいと思います。どん!

「タッキーって一体なにやってんの?ジャニーズの若手育成大改革とは」

前述の滝沢秀明(タッキー)は、2018年末をもってタレントを引退、「ジャニーさんの気持ちを継いで裏方に回る」ことを決意します。

そして「タレント育成及び舞台・コンサート・映像作品プロデュース」を事業内容とする「株式会社ジャニーズアイランド」の社長になりました。

株式会社ジャニーズアイランド設立のお知らせ 2019.1.17
https://www.johnny-associates.co.jp/news/info-181/

 …ってどういうこと?
タッキーなんでタレント人生投げだしてまで引退したん?

タッキー今なにやってんの?(よく名前は見るけど)

と思いませんか?

 

ここで、前提として、ジャニーズの組織構造の基礎知識のお話です。

ジャニーズ事務所のタレントのキャリアステップって、基本的にはめちゃめちゃシンプルで大体こんな感じです。

入所→ジャニーズJr.→CDデビュー!(いわゆる”デビュー組“になれる)

(中には、CDデビューせずに他の道を歩む人もいます。ジャニーズの様々なキャリアステップについては今後書いていきますね。)


これを一般企業に当てはめるとこんな感じ

新卒入社→研修期間→本配属!

まぁどこにでもある結構普通の構図ですよね。


さて、この“研修期間”がくっっっそ長いのがジャニーズ事務所の特徴です。あと、一般企業だとどんなに仕事できなくても「本配属されない」って有り得ないじゃないですか。でもジャニーズ事務所は全然あります。っていうか結構な割合がデビュー諦めて辞めちゃう。本配属=CDデビューできるのはほんの一握りです。

あとこの “研修期間”は人によって全然期間が違います。事務所の推しだと即CDデビューできるし、スキルがあって、長く在籍していても全然CDデビューできない子もいます。

更に特筆すべきはこの”研修期間“の子たちも、売り上げにつながる仕事してるよ、ってこと。ファンも沢山ついてるし、CDこそ売っていないものの、ドラマも出る、バラエティも出る、グッズも売り上げてる。

だけどCDデビューをしていないから、「まだ君は研修期間だよ」というラベルがついているわけです。

 

さて、タッキーが引退する直前、ジャニーズ事務所ではこのジャニーズJr.に関して大きな課題を抱えていました。それは、一言でいうと「ジャニーズJr.がくすぶっている」。

具体的にいうとこんな感じ。

1.CDデビューの頻度が落ちている
2014年にジャニーズWESTがデビューしてから、2018年にKing&Princeがデビューするまで、実に4年の月日が空いています。当たり前ですがその間にもジャニーズJr.はどんどん入所しているわけです。ジャニーズJr.はただただ人数が増えます。ちなみに、2014年までは、長くても、あいだ2年くらいしか空いていませんし、同年に2グループがデビューすることもありました。

2.活躍の場所が減っている
それまでのジャニーズJr.、特にタッキーがまだCDデビューする頃(2000年頃)は、ジャニーズJr.であってもガンガン学園ドラマとかに出ていました。ジャニーズJr.だけのバラエティ番組のレギュラーもあった。知名度の高いタレントも多かった。でもそういう環境がどんどん減っていってました。

ジャニーズJr.個々人の能力が落ちていたわけではないと思います。単純に活躍の場所がない。

一般の会社に置き換えて見れば、本配属しても全然おかしくないスキルは確実にある。だけど現場の受け入れ態勢が整ってない。そもそも配属してあげる人事機能が成り立っていない。研修内容も充実してない。だから研修期間から抜け出せない!という状態だったわけです。

在籍期間が長いジャニーズJr.は、そりゃくすぶりますよね。

(でもみんな健気にお仕事頑張ってて素敵なんですよね…あ、個人的な感情が漏れました)

 さて、話を戻しますが、タッキーが社長に就任した「株式会社ジャニーズアイランド」は、ずばりジャニーズJr.に関連するいわゆる「人事機能」を全て担っている会社です。

 いわゆる人事機能って、一般的にざっくりいうとこんな感じ。

人事

人を採用し、適切な職務に配置、育成。その仕事ぶりを評価し、会社への定着を高めるための制度を導入する。

私の勤めているような外資の会社では、「会社での経験・成長を生かして新しいステップへ踏み出す」という意味で、ポジティブな退職も見られ、それが「卒業」、として良しとされることも多くあります。

 人事の仕事は多岐に及びます。自社の風土に合い、活躍してもらえるポテンシャルのある人材の見極め、採用。適切な職務に配置するための適性把握。得意なところを伸ばし、よりステップアップするための研修の設計、OJTの仕組み導入。社員をモチベートする評価制度。定着して活躍してもらうための風土の醸成、制度の導入。そして社員を更に活躍できるようなポジションに配置転換…。

 

 はい、これです。

タッキーがやっているのは、これ、全部です。

 採用(オーディション、新人の発掘)、育成(演技指導、マナー指導)、配置、評価(どのプロジェクト(演目)に誰を配置するのか、どのグループに誰を入れるのか)、定着(タレントのサポート体制強化、福利厚生の改善)・・・。

 今まで、実はジャニー喜多川氏がここのところを全て担っていたんです。だけど年齢も80歳を超え、手が回らなくなっていた、っていうところが実態だったんじゃないでしょうか。

 「若手から信頼も厚く、商品企画にも定評がある。社長とセンスも合うし、なにより大のお気に入り。そんなトップ営業が、若手の人事戦略・企画・運営を一手に引き受ける人事部長に就任した」

というのがタッキー引退劇の実際のところ、というわけです。

 2019年8月8日、ジャニーズJr.から、SixTONES、SnowManという2つのグループのCDデビュー決定が発表されました。

どちらのグループも、多くのメンバーが入所10年以上。中にはキャリア15年の人もいます。

横浜アリーナを埋めて全国ツアーできるほどの人気がある。

でも、ず―――っとデビューできなかった。研修生から脱出できなかった。

くすぶっていたジャニーズJr.の大改革を、タッキーは7か月でやっちゃったわけです。

 

さてさて、今後このブログでは、じゃあタッキーは何がすごいのか、育成方法、プロデュース方法、演出の何が革新的なのか、みたいなところを、ジャニーズJr.のオタクであり、一人事担当者の視点から解説していきたいと思います。

 

今日はここまで。


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