しゃべるピアノ|#完成された物語

その男は毎日のように路上でピアノ演奏のパフォーマンスをしていた。

彼の演奏はそれは素晴らしく、観客たちから毎回のように多くの投げ銭による収入を得ていた。

しかし、ある日のこと急に演奏が止まってしまった。

まるで命の灯火が消えたように、ピアノが音を奏でなくなったのだ。

ー あぁ、壊れちゃったのね。ずいぶん古いピアノだったもの。

観客たちは「かわいそうに…」などと呟きながら去り、やがて誰もいなくなってしまった。

ー ありがとう、思い出した。

ピアノから声が聞こえた。そして中から小人が顔を出した。

ー 僕の演奏で、君のいた世界を思い出せたのかい?いろんな国のいろんな場所や古い曲とかを弾いたけれど、今日の曲が当たりだったんだね。

ー そう。これで帰れる。ありがとう。

夜空の下のピアノから、一筋の光が満天の星に向かってのぼっていき… やがて消えていった。

男の弾いた曲は『木星』だった。

なんか似非『星の王子さま』… ですね。
失礼いたしました。

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