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【SS】心お弁当②|#毎週ショートショートnote

植物学者の木下の助手である井上は、ガーデニングの才能もある。中学・高校時代は、学校の花壇整備に無くてはならない存在だった。

研究所の入口を飾る花壇も、春の季節はとりわけ華やかで、ちょっとした撮影ポイントとなっていた。

「今年も盛況じゃないか、井上」
「皆さんに喜んでいただけてよかったです、博士」

「ここだけの話だがな、私は花が咲く前の花壇を見ていると『だし』を思い出しててな。白い花は白米、黄色い花は卵焼きみたいに思い浮かべたり… 頭の中で弁当を作ったりするんだよ」
「初耳です!でも『だし』を連想するのはなんかわかります」

『だし』とは、夏野菜と香味野菜を細かく刻んで和え、麺つゆみたいなもので味を整えて、ご飯や豆腐などに載せて食べる山形の郷土料理だ。

「花は心のお弁当みたいなもんだよな」

博士の言葉で、井上は中学を卒業する時に、生徒会長(=通訳の彼女)から花壇整備のことを表彰されたことを思い出した。

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井上と通訳の女子の間に、進展が… 期待できるか?

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