【SS】イカ室たぎった｜＃毎週ショートショートnote（裏お題）

「あの…、受験教室って、どこですか？」

試験開始10分前に、駆け込んできた女学生。受験生の誘導を任された試験官の僕は「まず、落ち着いて！この教室は、あの理科室の角を曲がったところにあります」と答えた。その子は「ありがとうございます！」とニッコリ笑い、おさげを揺らし走っていった。僕は「頑張れ」と心の中で応援した。

そして新学期。部活勧誘の意味もあり、文化祭を春に開催する。化学部の部長になった僕の手腕発揮どころだ。

U字試験管の真ん中に半透膜を置き、キレイに着色した溶液を注いで浸透圧の実験をした。映えるし、理解もしやすいだろう…そんな狙いは的中。たくさん来場者があり入部希望者もいた。

一人だけ「この試験管はどうやって曲げたんですか？」とか「このピンクはウルトラピンクですか？」等と質問するおさげ女子がいた。よく見たら、受験の時会った子だ。化学とは関係ない質問だったけれど、答えられるものには精一杯答えた。とても楽しくてドキドキする体験だった。

「おい、イカ室むろ。なんか、たぎってたんじゃね？」

僕の苗字は岩室いわむろだけど、ひょろっと背が高く白衣着て袖をヒラヒラさせてるとイカに見えるらしく、仲間から『イカ室』と呼ばれている。

僕は… あの子に、恋をしたのかな。

［約550字］　字数オーバーごめんなさい

『理科室まがった』の別視点から。↓

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