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べこもち うちにあって 日本の一般家庭の1%未満にしかないだろうと思うものを挙げてみる その13

「特にこのゴールデンウィークの時期なんかには、べこもちが家にあるうちなんか1%どころじゃないんでないかい?」

と思った人は北海道民でしょう。
私も18年前まではそう思っていたので。

とりたてて甘いもの好きでなくても、子どもの時から洋菓子も和菓子も袋の菓子も普通に食べてきました。
和菓子の中では「すあま」や「(団子の方の)ちまき」がより好きでした。和菓子好きの友人に
「豆大福っておいしいけど、中のあんこがなければもっとおいしいのにね」
と言って散々反論されたことで、あんこを内包していない和菓子がより好みだとある時自覚しました。あんこが嫌いなわけではないのは、ぜんざいやあずきバーやどら焼きは好きだから「内包」という形でやや興が削がれるようです。またあんパンは好きなので、餅や団子類との関係においてのみみたいです。

だかとにかくべこもちは子どもの頃好みではあったけれど、それ以外に好きな食べ物はいくらでもあったので、その後首都圏に住んでからも深追いすることもなく暮らしていました。

とにかく久しぶりにべこもちが欲しくてたまらなくなったのは、18年前息子の初節句の時でした。
まだ5ヶ月にならない息子に与えるわけではないけれど、夫の
「子どもの日に近くの店で柏餅でも買うてこようか?」
という言葉にすっかりその気になった私。
「あ、いいねえ。でも柏餅より私はべこもちの方が好きだから、べこもち何個かお願い」
とリクエストしました。
「べこもち?」
と不思議そうに繰り返す夫の「?」を気にも止めなかったのはそれまで東日本文化寄りの私が日常の数々の場面で圧勝してきたからでした。

夫は大阪出身
私は北海道出身
住んでいるのは神奈川県

娘が夜泣きした時に争った「夜泣き 癇の虫に効く」と言えば 宇津救命丸か? 樋屋奇応丸か?

最初に工作に使うようなデンプン糊と言えば ヤマト糊か? フエキ糊か?

みたいなことで一歩も譲らず口論になったことは数知れず、双方
「🎵うずきゅうめいがーーーん」
「🎵ひやひやひやの ひやっきおうがん」
と声を張り上げてCMソングを歌い上げたこともありました。
しかし住んでいるのが首都圏ということもあり、近くの店頭で売られている宇津救命丸や、ヤマト糊のシェア数で「それ見たことか」を繰り返してきました。
まあ実際それで勝った気でいた私でも夫はいまだに負けたとはちっとも思っていないようですが。

まあ、柏餅は双方知っていましたが、同じく端午の節句によく食べられるべこもちを知らないのは想定内だったで、注意深く東日本ではべこもちが有名で私はそれを欲していると言い聞かせ、上の娘を連れて買いに行ってもらいました。

しかし夫は、柏餅とイチゴ大福のみを買って帰って来ました。

「べこもちじゃないの?」
といささか不満げな私に
「べこもちはなかった」
と言う夫。
「はしごして何軒か回ったけどどこにもなくて、柏餅にした」
と言うので、それは売り切れなのか、目が節穴なのかと疑ったけれど
「店の人に聞いても、べこもちなど聞いたことがないと言われた」
と。
そこまで言われてはどうすることもできず、代わりに私が乳飲み児を連れてまで検証しに行くのもどうかと、その場は柏餅を食べたのでした。おいしかったけれどどこか納得いかない気持ちでした。

後日ネットで検索して自分としては仰天の事実を知りました。

べこもちは北海道にしかない

びっくりしました。圧勝どころではありません。
黒糖と白糖でベコ(牛)のようなこのクセもなく素直でおいしい和菓子が、あの慣れ親しんだお菓子屋でもスーパーでも買える和菓子が、北海道だけなんて。

そう思うと無性に食べたくなって、まだそのころ北海道にあった実家に帰った時に食べたり、修学旅行先が北海道だった娘に土産に買って帰ってもらったりもしました。白い恋人や北菓楼のバウムクーヘンなどを土産物屋で買う友達の中で、ただ一人札幌の野外の出店でべこもちを見つけて買ってきてくれた高校生の娘はやり遂げてくれたと思います。

でも思い余って作ったりもしました。
一度目は黒い部分の色が薄く二度目は上出来の上の写真。

リーフ型なのは、なぜか昔から葉っぱの形でホルスタイン柄というのに倣ったから

今娘の初任地が北海道。
遊びに行く度にもちろん買えるし食べられるし、持ち帰りの頻度も上がります。
いつも常備しているわけではないけれど、このように今は家にある回数も増えました。

で、ここ数年はどうも北海道独自のお菓子というのが徐々に広まってきた気がします。というのも北海道物産展でお馴染みのスイーツやらラーメンやらに混じって、売られているのを見かけたからです。あまり売れてるとは言い難い様子に賞味期限が一般的な市販品より長いのを知って大量買いしました。


真空パックで長持ち

去年千歳空港でブースを作って売っているのも見ました。
道民の女の子なのかな?
「北海道にしかないと言われるお菓子、べこもちはいかがですか?」と言っていましたが、本人はなぜこれを売らされているのか納得していないような小さな声でした。こんな何の変哲もない物を売らなければならないのか?という恥ずかしさがありそうな表情でした。アピール度も低く釣られるお客もほとんどない中、買ってあげたかったけど、到着したての私。ごめんなさい。
ルタオや六花亭のような華やかさはないけど、私は大好きだしそもそも個人的に六花亭で一番買っているのはべこもちなんですよ。


ちなみに べこもち という菓子は東北地方にもあるが別物と知り、青森で見つけて買ってみたものがこちら。

青森県大間で見つけたべこもち

これが青森べこもちのスタンダードなのかはわかりませんが、正月の蒲鉾のようなめでたそうなカラフル模様で確かに別物でした。説明書きにしたがって炙って食べました。
ほんのり甘みはあるのですが、和菓子と切り餅の中間のような固さと甘さ。
この時は下北半島からフェリーで海を渡って函館の友達を訪ねたのですが、ただ一番上の一個だけある黒白渦巻きの物だけが、津軽海峡を渡って北海道でデビューし変貌を遂げながら天下を獲ったような気もします。

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