戯言鉄砲
同じ職場の職員の妹さんが、赤ん坊を連れて職場に顔を出された。
かわいい赤ん坊を一目見ようと職員達が集まり、小さな人だかりができた。
そのとき職場のおばさんがハイテンションで、「あなたもあんなに小さかったのよぉ!」と言った。
ありがちなセリフだが、ワシ、一石を投じる。
「それはおばさんも同じですよね?」
おばさんは一瞬、えっ、という顔をした後で言った。
「私なんてあなたと比べたらもうずっと昔の話よぉ!」
ワシは引かない。
「いや、今は、いつ小さかったかではなく、小さい時期があったかどうかの話ですよね?」
「いやまあ、あのね…」
「戯言を言わない!」
「えっ」
おばさんは鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしていたので、とどめを刺すことにした。
ワシは大きく息を吸い込み、
「オギャアアアア!!!」
と産声をあげた。
それに呼応したのか、赤ん坊もワンワン泣いている。
「ちょっと!!赤ちゃんが怖がってるじゃないの!何してるの!?」
人だかりから口々に罵声が聞こえてきた。
課長が大急ぎでやってきて、ワシを説教部屋に連れ込んだ。
そして課長はワシをボッコンボッコンに殴り付けた。
最初の方こそ、ワシは元気の良い赤ん坊のようにギャンギャン泣かされたが、次第に泣く元気も無くなっていった。
すっかり動かなくなったワシの体が説教部屋から放り出され、ドサっと床に転がると、フロア全体から拍手喝采が巻き起こった。
母の腕に抱かれた赤ん坊も、エヘヘと嬉しそうに笑っていたので、ピースフルだなぁと思った。
あんたやっぱ、笑った顔がよく似合ってるよ!!
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ワシのことを超一流であり続けさせてくださる読者の皆様に、いつも心からありがとうと言いたいです。