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月夜の森の梟

いつか必ずやってくる永遠の別れの時。
逝ってしまう者と残される者。

一人残されるのは寂しいから、
私がお先に失礼したい。

でも一人だと何もできないあなたを
置いていくのも忍びない。
あなたに少し先に行ってもらい
向こうで待ってもらう方がいいのかも。

ただ実際の人生、願う通りの終わり方が
できる人はどれくらいいるのだろう。

愛する人生のパートナーとの時間が
永遠に続かないことはわかっている。
贅沢なことは望まないから
このささやかな日常が少しでも長く
続いてくれますように

月夜の森の梟

夫・藤田宜永さんを亡くした小池真理子さんが
彼との永遠の別れの前後の心情、
心象風景を綴ったエッセイ。

クールなイメージを抱いていた小池真理子さんの
夫への愛情、追悼、孤独、悲しみ、後悔の念の
静かな、でも強い表現に戸惑いながらも
心揺さぶられました。

治療のたびに検査を受け、
そのつど結果に怯えていた。
不安と怯えだけが、彼を支配していた。
無情にも死を受け入れざるを得なくなった
彼の絶望と苦悩、
死にゆくものの祈りの声は、
そのまま私に伝わってきた。
月夜の森の梟   11頁

男性の平均寿命よりもずっと長生きしている
後期高齢者である父。
歳の割には健康と言われていたけれど
年齢的に手術による治療は無理な病が
昨年たまたま見つかった。

削られていく時間の中
死をはっきりと意識し
その瞬間を迎えることに全神経を
集中させている父の様を
傍らで見ている私に
この一節が響き、一気に読み進めました。

出版時に友人からお薦めされて
気にはなっていたのですが、
発行元が大嫌いな朝日新聞関連の
出版社と知り気が進みませんでした。

病をかかえた父への気持ちを
どうしたらいいのかわからなくなった今、
いよいよ手に取り読みました。

とても共感し、また
こんなに心に優しい企画ができる人も
あの会社にいるのか、と驚きました。

父のことは
改めて書きたいと思います。

🌸写真はご近所の庭先に植えられたばかりの
紅梅。今日は大寒。光は日々と強さ暖かさを増してきて、春はもうすぐそこに😊





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