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老人と老木

この世界は美しいもので溢れている。
This world is beautiful
and
You can not buy with money

「老人と老木」

老木が横たわっていた
その老木は
風に晒され
雨に打たれ
寒さに凍え
朽ちて
腐り
その身を削っていた

それでも
この老木に
一瞬の暖かな光りが
注がれる

そして
この老木は
その暖かな光りに
これ以上はないほどの幸せを感じている

この老木は
横たわっているだけで
何も話はしないが
私にはそう見えた

その姿は
一人の老人の姿を見ているようだった

哀しみと
孤独だけを抱き
老いていくことに怯え

今では
「若い頃は」が口癖になり
色んな病に侵され
薬で身を削り
腐っていく
そして
ついには若者にまで忘れ去られようとしている

そうやって
この老木のように
ただ その身を横たえる

それでも
若者は何かの岐路に立ち
迷った時には
その老人の知恵を借りに来る
その老人の知恵と経験とを
昔語りのように聞きに来る

それは
老木が
暖かな光りを注がれ
朽ちて
腐りながら
小さな若葉と
虫とを抱くように

そして
その老人は薬で身を削ることなく
自分の知恵と経験とを
若者に託し
暖かな光りの中で
老いながらも生気を宿す

朽ちて
腐りながら
たくさんのいのちを抱いている
この老木のように

老いて
朽ちて
腐っても
死んではいない
この老木のように

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