傷心旅行

一人旅はいつぶりか…

彼氏ができる前までは誕生日に必ず有給を取って温泉旅行に行っていた。
彼氏ができてからは2人の休みが重なった時に
旅行に行ってのんびりするようにしてた。

初めこそはお互い頭の中は仕事ばかりで会うたびに
どちらかが仕事の話をしだして必ず喧嘩になってた。

半年の記念日にお互いに長い休みが取れたら温泉旅行に行って仕事の話をしないようにしようと言う約束をした。
それからは、喧嘩も減って穏やかな関係になっていた。

恋愛も仕事も順調に進んでいた。
そんなある日、私に昇進の話が舞い込んできた。
私は仕事一筋の人間だったし、この会社の
役に立ちたいと思い昇進の話を受けた。

それから私は彼との約束を何回かキャンセルした。
彼は「昇進をしたんだ!忙しくなるのは仕方ないよ、落ち着いたら海外にも行ってみようか!」
そう言った彼は少し悲しそうな笑顔をしていた。
別れを告げられたのはそれから2週間が経った時だった。
「君は1人でも生きていけるよ」そんなよくある別れ文句を言っていた。

あぁ、旅行でもして吹っ切れようと思ったのに
今日の旅行は行き道からついていない。
楽しみにしていたロマンスカーは人身事故で運休、晴れの予定だったのに初日から雨。
私の気持ちみたいとか思いながら、バスに揺られて気持ちよく寝ているうちにいつの間にか旅館に着いていた。

旅館は少し奮発して露天風呂があるところにした。
部屋について雨にぬれた洋服をかけ、ほっと一息ついてから部屋を見渡した。

1人なのに大きい部屋にしちゃった。

まあそんなのどうでもいい。
早くこの冷え切った心を露天風呂で温めたかった。

雪に変わった雨を見つめながら露天風呂に入った
寒いと思っていたけどやっぱりあったかい。
大きいお風呂で足を伸ばしたらいつの間にか私は泣いていた。

やっぱり1人が好き。
好きなことは嫌いにはなれない。
少しは前に進めたのかも…
そんなことを考えながら暖かくなった心と体にキンキンに冷えたビールを流し込んだ。

今まで行った旅行の中で
一番ビールが美味しく感じた。

明日は食べ歩きでもしよう。
そして、足湯に入って、両親にお土産を…いつのまにか寝ていた。

朝になるとすっかり雪はやんでいた。
目覚めた時には心も体もスッキリしていた。
朝食の前に風呂に入った。
凝り固まった想いは湯気にのって
どこかへ飛んでいった。

今回は今までで一番楽しい旅になりそう。
そう呟いて湯船から上がり朝食へ向かった。

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