夢を夢のまま
小さい頃の夢って何?
私は漫画家になることが夢だった。
それが叶わないことだと分かったのは中学生の頃だった。
美術の時間に評価されるのはいつも私以外の誰か
その時、私には才能がないのだと確信した。
高校になってもしたいこともみつからず適当に生活していた。
毎日部活と勉強を続けていた。
私が唯一没頭していたのは読書。
図書室で勉強をし、息抜きで小説を読んでいた。
私だけの世界に没頭して、虚空の中でひとり。
その虚空を破ったのは一人の教師だった。
「何を読んでいるの?」そう話しかけてきた。
私は「重松清の『せんせい。』っていう作品」と答えた
「いつも本を読んでるよね」
「僕はあまり本を読まないんだけど君が真剣に本を読んで楽しそうな表情や悲しそうな表情をしているのを見て本を読んでみたいと思ったんだ、おすすめの本があったら教えて」と言ってきた。
最初はこの人は何を言っているのかと不思議に思った。
とりあえず読書が苦手な人にもおすすめできる本を教えた。
めんどくさい人に目をつけられたと最初は適当にかわしていた。
3日後おすすめした本を持って私の元にやってきた。
「君がおすすめしてくれた本とても面白かったよ」
「先生は暇なんですか」と皮肉を言ってやった。
そうすると先生は「没頭してしまってね」と笑った。
そこから先生におすすめの本を教えて、読んだ感想を伝えにくるという日々が続いた。
ある日先生が「君の夢は何?」と聞いてきた。
唐突に発された言葉に追いつかなかった。
私には夢なんてない、夢は叶わないって知ってるから。
「夢なんてないです、夢なんてあっても意味ないでしょ」そういうと先生は
「本当は君にも夢があるはずだよ。今が今やりたいことは何?」
「あなたのおかげで小説を自分でも書きたいと思っているぐらいですけど」
「それはいいことだ、少しずつやってみてはどうだ?」
「そんなことしても夢は叶いません」そういうと先生は少し困った顔をして
「そう思うのもわかるが、夢は叶うためにあるものだ。夢は潰されるためにあるものではない」
「私も中学生のころ、先生になりたいと思っていた。しかし大人たちは君の学力では無理だと言われ夢をつぶされた」
「でも今私は教師をしている。夢は叶った」
「夢をかなえるのに努力は不可欠だ。だが努力をする前に大人たちはその努力をつぶしにかかる。だから君は夢をかなえるための努力をしてほしい」
そう先生は語った。
そうか私は努力をする前に諦めていたのか。
周囲の人間から認められなくても努力をし続ければ夢は叶えられるかもしれない。
そこから私の夢は小説家になった。
私は高校を卒業して社会人になった。
今は仕事をしながら休みの日に小説を書いている。あの先生のいう事を信じて小説を書き続けている。
私は夢を叶えるために努力し続ける。
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