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アイスクリームフィーバー


ずっと楽しみにしていた映画を観ることができた。
「アイスクリームフィーバー」という映画だ。

私は高校生の時から吉澤嘉代子さんの大ファンで、だから彼女が映画の主題歌をやる、という告知が出た時は驚いたし、嬉しかった。

そして、その映画の原案は川上未映子さんの小説「アイスクリーム熱」(「愛の夢とか」に収録)というのだから、さらに驚いた。私の本棚にある本だ。

告知を見て、すぐに本棚から「愛の夢とか」を引っ張り出して再読した。

「アイスクリーム熱」は文庫本で9ページほどの短編で、物語としてもあっさりしている。
アイスクリーム屋の女の子が常連の男の子に恋をして、一夜を共にしたがその後会えなくなり、そんな恋のことも忘れてしまう、といった内容だ。

しかし、映画「アイスクリームフィーバー」は男女のお話ではない。
パンフレットの言葉をお借りすると、「いまを生きる4人の女性の憧れ、興味、好意、執着が交差する」お話しである。

ラストに向かって登場人物が交差する様や、時間軸に驚きがあって楽しかったし、
カメラワークや映像、音の使い方も、一般的な
映画とは違いとても印象的だった。

小説は余白が多い物語だったけれど、映画も同じく余白が多かったなあ。
分かりやすさを求める人には向かないけれど、余韻を楽しみたい人にはオススメしたい映画。
私はすごく好きな映画だったなあ。


映画の中で「生涯に一度の恋だなーって恋、したことあります?」という台詞が出てくる。

私は、ある。昔の恋人。
叶いそうで、叶わない恋だった。

叶わない恋ほど気持ちが昂って「火傷」みたいになる、といった台詞に納得してしまった。

私は火傷しているんだな。
火傷している自分も認めながら、前を向いて生きているんだった。私には日常すぎて意識していなかった。

主題歌である「氷菓子」には
「あれから何時も舌を火傷してるみたい」
という歌詞がある。
映画を見る前はピンと来なかった歌詞だったが、腑に落ちた。

この手の火傷は長引く。
でも、思い出や想いも、全部全部抱きしめながら、歩いていくと決めたんだ。

しかし、私もいつか小説の主人公のように、恋も、火傷をしていたことすら忘れてしまって、何もかも思い出せない日が来るのだろうか。
映画の主人公も、一瞬の夕立のような恋を忘れる日が来るのだろうか。
それとも、忘れないためにアイスクリーム屋を続けるのだろうか。


もやもやと考えながら、映画館近くの好きな飲食店でご飯を食べて、帰った。


その日、夢には昔の恋人が出てきたが、私たちが言葉を交わすことはなかった。

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