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虹をかけた女王様と、スズメに挨拶する私。


エリザベス女王が亡くなった。

遠い国の人で、正直どんな事をしてきた人かもあまりよく知らない。

だけれど、何故だか無性に悲しかった。

明るく華やかで、可愛らしい笑顔を見せてくれる人。

そんな印象だったからだろうか。

一番星が消えてしまったような、野原に一輪咲いた花が枯れてしまったような。

不思議とそんな気分になった。

沢山の国民が悲しみにくれる中、バッキンガム宮殿には虹がかかったという。

バッキンガム宮殿にかかった二連の虹
( HUFFPOSTより)


そんな悲しい顔していないで。

ほら、顔を上げてごらんなさい。


女王がいつもの可愛らしい笑顔で、そんな風に言っている気がした。



話は変わるが、私の家には毎朝スズメが来る。

家の前の電線に、1羽だけ。

止まっていつもうちの方を見ている。

そのスズメを、私はひぃばあちゃんだと思っている。


高校3年の大学受験の日、曾祖母は亡くなった。

最後の方は認知が進んで、私の祖母(自分の娘)の事も誰か分からなくなっていた。

祖母は曾祖母が入居している施設を毎日訪ねていたのだが、顔を見せるたび「まぁ、綺麗な人が来た。どちらさんでしょう?」と言われると、笑って話していた。

( ちなみに私の祖母はエリザベス女王に顔も雰囲気も激似なのである。)


大学受験の日の朝、1羽のスズメが電線に止まっているのを見つけた。

「ひぃばぁちゃんが応援しに来てくれたんやろね」と、私と母は何の気なしに言っていた。

受験が終わり、母からの連絡で曾祖母の訃報を知った。

認知が進み施設に入ってからは、曾祖母に会いに行くことはほぼ無かったので、正直亡くなったという実感がわかず、悲しみもすぐには湧いてこなかったように思う。

曾祖母と遊んだ記憶も、小学校中学年くらいまで。

庭に茣蓙(ござ)を敷いておはじきやビー玉を転がしたり、白玉団子を作って食べたりした。

優しいひぃばあちゃんだった。


そして、葬儀の日。

驚くことが起こった。

家に入りきれない程、沢山の人が来たのだ。

庭や駐車場にも、人、人、人。

親戚だけではない。知らない顔が山ほどある。

うちはお金持ちではない。田舎のごく普通の家だ。勤めに出ていた訳ではないし、何か名が知れ渡るような業績があるでもない。

90歳を越えた人の葬儀に、こんなに人が来るものなのか?

一体何者なんだ、ひぃばあちゃん。


のちに祖母や母から聞いた話によると、曾祖母はかなりの人格者であったらしい。

家族は勿論、親戚や近所の人たちの事をよく気にかけ、大変な時は援助をし、多くの人に慕われていたのだそうだ。

村の会合では料理を山ほど作ってその場を取り仕切ったり、生活が大変な人には食材やお金を与えてやることもあったらしい。

自分の事よりも、周りを最優先に思いやる人。

曾祖母を慕い、頼りにしていた人が多くいたと聞いた。

葬儀に参列したあの人たちは皆、曾祖母が生前に手を差し述べた人達だった事を知り、とても誇らしい気持ちになった。


今日もスズメが1羽、電線に止まっている。

曾祖母は "一国を背負う女王様" ではないけれど。

人を助ける優しい心を持ち、沢山の人に愛され慕われた人。

身分は違えどそこは同じなのかな、なんて思ったりする。


おはよう、ひぃばあちゃん。

今日も一日、幸せに健康に過ごせるように、見守っていてください。

そしてどうか、明日もまた会いに来てね。

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