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わたしの好きな和歌 〜天の海と月の舟〜


こんにちは、まりもです。

前々回、万葉集と再会した話を書きました。↓↓↓


その万葉集の中でも特に好きな和歌があるので、
ご紹介したいと思います。


※読みと現代語訳、解説・歌人の情報は角川書店さんの「ビギナーズ・クラシックス日本の古典 万葉集」を引用・参考しています。



わたしが1番心惹かれた和歌がこちら。

天の海に 雲の波立ち月の舟 星の林に 漕ぎ隠る見ゆ

(あめのうみに くものなみたちつきのふね ほしのはやしに こぎかくるみゆ)

現代語訳: 
果てしなく広がる天の海に、雲の白波が立ち、その海を月の舟が漕ぎ渡って、星の林に隠れて行くのが見える。




万葉集1068首目、
柿本人麻呂(かきのもとのひとまろ)さんの歌です。

これが本当に1300年前の歌なの?!
と思わず2回3回繰り返して詠みたくなる、とてもロマンチックな歌ですよね。

月を舟に見立て、広い広い天の海の、雲の波の上を滑りながら煌めく星の林に分け入って行く…こんなメルヘンに満ちた、美しい情景を人麻呂さんは高らかに歌っています。

わたしは初めてこの歌を詠んだ時、和歌ってこんなに自由でいいんだと感じました。

和歌って聞くと、
「何言よんのか分からん」
「貴族が詠むなんかありがたい(?)やつ」
「めっちゃ知識いりそうで無理」

と嫌厭してしまうイメージばかり思いつくのですが、人麻呂さんのこの歌は、わたしの中でそういうイメージを取っ払ってくれました。

ただ目に見える景色を詠むのではなく、
自分の中にあるイメージや想像を膨らませて、
外へ放出していくことを昔も行っていて、しかもそれが許されていたのだと思うと、和歌が身近に感じられました。


また、この歌の解説では、

「月の舟を漕ぐのは誰かというと、それは月人壮士(つきひとおとこ=月の男)である。」
と述べられています。

月人壮士というワードは他の和歌に何首か出てきていて、
七夕の牽牛のことであると考えられているようです。

中国の七夕伝説では
牽牛と織姫が天の川を渡って逢瀬をするとされていますから、もしかしたら人麻呂さんのこの歌は、織姫を迎えに行く牽牛を詠んだものかも知れませんね。

いずれにせよ、
色んなイメージをかき立ててくれる本当に素晴らしい歌だと思います。
(ポルノグラフィティ大ファンのわたしは「月飼い」という大名曲を思わずにいられない…新藤晴一さんは現代の人麻呂さんじゃないかと思うくらいです。笑)


柿本人麻呂という歌人は、
3人の天皇に仕えた宮廷歌人として活躍したそうですが、役人の位はそんなに高くなかったようです。

沢山の名歌を残す代表的な万葉歌人で、
天皇のために格調高く詠みあげるものもあれば、
奥さんを亡くされた時の悲しみの歌など私的だけれど情緒に訴えかけてくるものもあり、この垣間見える人間らしい部分にわたしは共感するのかもしれません。


いろいろ語ってしまったので長くなりましたが、
ぜひもう一度この人麻呂さんの和歌を詠み、
そして万葉集を手にとって頂けたらと思います。(万葉集の回し者?みたいになってしまった…)

長くなりましたが、最後まで読んで頂きありがとうございました♪
それでは!


22/10/23   まりも

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