ATP産生の第3工程 ~電子伝達系~
ATP産生の第3工程、電子伝達系についてみていきましょう!
第1工程の解糖系はこちら
第2工程のクエン酸回路系はこちら
上記2つの工程ではATP産生がそれぞれ2つって少なっ!
と思うかもしれないが実はこの第1工程、第2工程は第3工程で大量にATPの産生をするための準備段階でもある。
つまり、ATP産生の本番は第3工程である『電子伝達系』。
この電子伝達系では34ATPを産生することができる。ではどのように電子伝達系でATPを産生していくのだろうか。
教科書的には『電子伝達系とは、NADHやFADH2から放出された電子がミトコンドリア内膜において伝達される過程で、ミトコンドリア内膜を挟んだプロトン勾配(H +の濃度勾配)を形成し、そのプロトン駆動力によってATP合成酵素からATPを産生する系のこと』とある。
ん〜わかりにくいですね。
結論からいうと水素と電子をつかって多くのATPを産生する。
第1工程の解糖系、第2工程のクエン酸回路系で脱水素酵素(NAD⁺、FAD⁺)により抜き取られた水素があったのを覚えているだろうか。この水素を使って大量のATPを産生していくのである。
NAD⁺、FAD⁺は水素を抜き取りそれぞれNADH、FADH₂となる。
マトリックス内でこのNADHやFADH2が酸化されるとNAD+、FADとH+に分かれ高エネルギーの電子(2e–)を放出する。
NADH → NAD+ + H+ + 2e–
FADH2 → FAD + 2H+ + 2e–
まずはこの放出された電子(2e−)が活躍する。
ミトコンドリア内膜には放出された電子(2e−)を受け取る複数の電子伝達タンパク複合体があり、受け取られた電子は内膜を移動しながら少しずつエネルギーを放出する。
この放出されたエネルギーを利用して、マトリックス内に残されていたH+を膜間腔へと移動させる。
これが繰り返されることで膜間腔の中のH+がどんどん増えていきいっぱいになってくるため、どこかに放出しなければならなくなる。
うまいことできていて、このいっぱいになったH+を放出する仕組みもしっかりある。
膜間腔とマトリックスの間の内膜にはATP合成酵素というものがあり、いっぱいになったH+はこのATP合成酵素を通って膜間腔からマトリックス内へと戻っていく。
このATP合成酵素を通過するときに名前のとおり、ADPとPiからADPが合成されるという仕組みである。
整理すると
①NADH、FADH₂がH+と電子(2e−)に分かれる
②電子(2e−)がエネルギーを放出し、H+を膜間腔へと移動させる
③膜間腔でいっぱいになったH+がATP合成酵素を通過してマトリックス内に戻るがその際にATPを合成する
以上が第三工程の「電子伝達系」の流れである。
ATPを産生する流れを解糖系、クエン酸回路系、電子伝達系とみてきたが、やはり人間の身体は信じられないほどうまくできていると感じる。