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パンをこねる

日曜日の昼下がり、私はパン作る。先週はシナモンロール、先々週はチョコレートデニッシュ、その前はレーズンパン。一部は出来立てを戴き、残りは焼く前の状態で冷凍保存し、平日のおやつに取っておく。今週末は何を作ろうかな、と夢想するのも楽しい。

パン作りを始めたのは最近である。昔から、マドレーヌやマフィンといった家庭のお菓子作りには馴染みがあり、コロナ禍の初期から、休日は偶におやつを自給自足していた。そして”おうち時間“も2年目になると、暇に任せて工程が複雑な絵柄を施したクッキーやら、焼き加減の調節が難しいマカロンやらにも手を出し、時間をかけた手作りの愉しみを益々味わうようになった。それでも飽き足らず、何か新しいものにも挑戦したいなあ、とパン作りにも手を出したのが半年ほど前のことである。

パン作りとお菓子作りの決定的な違いは、発酵させるか否か、だと思っている。パンは小麦粉に酵母を加え、休憩をはさんで生地を発酵させて焼く。生地を適度に捏ねて発酵を適切に行うことで、ふんわりとしたパンを焼くことができるのである。一方、ケーキなどのお菓子は、基本的には発酵させない。泡立てたり膨らし粉を使うことで、ふんわりとした仕上がりになる。

メロンパンは上のクッキー生地と下のパン生地を合せた、
いわばお菓子作りとパン作りのハイブリッドだと思う

コロナ禍でもなければ、複数回にわたる発酵の工程を踏むパンなど、作ろうとも思わなかっただろう。手間がかかるうえ、初心者のうちは失敗することも多いと聞いていた。パン作りのハードルがぐっと下がったのは、お菓子作りを想定して購入したオーブン機能付きの電子レンジのおかげだ。最近のオーブンレンジは蒸す機能やグリルの機能がついているほか、発酵機能もついていた。おまけに、取扱説明書と一緒に付属していたレシピ本には、基本のパンレシピが幾つか載っていた。

オーブンレンジは一人何役もこなす分、普通の電子レンジよりもかなりお値段が張る。せっかく買ったのだから、この子を最大限使いこなさないともったいない、という思いもあったりする。

余談だが、オーブンレンジはこの多機能さが仇になる時もある。パンを発酵している数十分から1時間の間、当然のことだが、電子レンジの機能が使えない。このせいで、夫は食べようと思っていたレンジでチンするだけのチャーハンをあきらめたりしていた。ゴメン、、、

話を戻そう。パン作りは、始めてしまえば思っていたよりもずっと手軽で楽しかった。数を重ねて、生地の捏ね具合や発酵時間の調節も、臨機応変に対応できるようになってきた。複数にわたる工程も、仕事の合間を上手に使えばいい気晴らしになったし、何よりも、出来立てのパンはどんな有名ベーカリーのパンよりもおいしかった。

そして今、私はパン生地との対話、それ自体にも面白さを感じている。計量した強力粉を触り、水の温度を調節し、捏ねる時はグルテンの弾力を手のひらで感じる。その日の気温から発酵にかける時間を調整し、生地が乾燥しないように気を付けながら成型する。冷凍保存した生地も、その日の気温に合わせて、何時に食べたいから何時ごろには外に出して自然解凍させよう、といったことを判断する。捏ねながら、発酵の様子を見ながら、私は植物か何かを育てている気分になった。

パン作りを始めて半年、まだまだ上手くできないこともある。水分量を見誤って生地がべたついてしまったり、発酵時間が短く膨らみが足りなかったこともある。だが、手作りの何よりの喜びは、自分の食べたいときに食べたいものを自ら供給できることだと思う。

淹れたてのコーヒー、カリカリに焼いたベーコン、半熟の黄身の目玉焼き、洗ってちぎっただけのレタスのサラダ、そして、まだ湯気の立ち上る焼きたてのパンが、我が家の休日のブランチになるのだ。

いつぞやの朝ご飯は出来立てのパンを使ったカスクート

#エッセイ #休日のすごし方 #パン作り #おうち時間 #休日

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