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傍聴席にて 〜犯罪加害者になるのは紙一重〜

裁判官が法廷に入ってくると、法廷にいるものは全員起立し、裁判官に一礼する。厳粛なムードで裁判が始まる。

私は、たまに裁判の傍聴に足を運ぶ。初めて傍聴したのは大学生の頃、当時下宿していたアパートから裁判所が近かったこともあり、単なる好奇心で裁判所に向かった。

エントランスにある開廷表をみて、「器物破損」の罪で起訴されている20代男性の審理を傍聴することにした。その男性は、以前、薬物使用の罪で前科があり、当時の起訴は執行猶予中の出来事であった。

当時の器物破損罪は、元恋人の車を破損させたことによるもの。

検察官が起訴状に記載された事件の内容を読み上げ、その後、どういう流れで事件が起きたのかどういう被害があったのかを具体的に説明する冒頭陳述や立証が行われた。

どうやら事件の引き金は、別れ話のもつれが原因のよう。別れ話を切り出された被告人は、後日、再度原告と話し合うために原告の職場に行った。だが、原告は被告人に取り合おうとせず車に乗り込み走り去ろうとした。かっとなった被告人は、原告の車のサイドミラーを蹴り破損させたというのが一連の流れだ。

今回の事件の争点は被告人に情状酌量の余地があるのかという点。

被告人の人柄や原告との付き合い方が、被告人側と原告側の両方の証人尋問や原告とのメールのやり取りで明らかになっていく。
被告人には、ふびんな生い立ちこそあるが、原告に対し数々の暴言や暴力があったのも事実である。
身を守るため原告が被告人から離れたいと思ったのも無理はない。

最後の被告人の意見陳述では、反省と更生への弁が述べられていたが、果たしてどのような判決がくだされたのであろうか。(判決はすでに出ているが、傍聴していない。)

この事件の傍聴を振り返って思うのは、事件として起訴され被告人となったり、民事裁判で多額の慰謝料を支払ったりする可能性は誰にでもあり、身近な生活にその可能性は潜んでいるということだ。


実際、私の友人には過去に、元恋人との別れ話が受け入れられず、話し合いを求めて許可なく相手の家に侵入したことがあるものがいる。
恋人同士だったとはいえ、もし、相手が住居不法侵入で訴えていたら、友人は有罪であっただろう。
友人は相手の善意に救われたのだ。おそらく、世の中はそういうグレーゾーンの罪がはびこっており、裁判沙汰になるかどうかは紙一重なのだ。

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