雑記「言葉について」

綺麗な言葉とは一体何だろう。

Twitterのタイムラインを無心でスクロールしていると、もしくは小説をパラパラと読んでいると、たまに心惹かれる言葉が見つかります。時にそれは文章という塊になって見つかることもあります。私の貧しい語彙力では、その文字列を綺麗だとか美しいだとかでしか表現できないのですが、確かにそれには何か惹かれる魅力が含まれている筈なのです。

最も印象に残っているのは、夏目漱石の「夢十夜」。

『黒い眸のなかに鮮に見えた自分の姿が、ぼうっと崩れて来た。静かな水が動いて写る影を乱したように、流れ出したと思ったら、女の眼がぱちりと閉じた。』

初めてこの文章を目にしたとき、目の前にいる女性が涙を流すその瞬間をこれほどまでに美しく鮮明に描かれた文章がこの世にあるのかと酷く感銘を受けたこと、今でもよく覚えています。

魅力ある言葉・文章は必ずしも文豪にしか生み出せないということではないらしく、時に知人の口から飛び出ることもあって、私はそのたびに面を食らうのです。

一体、何がここまで言葉を魅力的に感じさせるのだろう。

文章は所詮言葉の羅列、言葉は文字の羅列。物事を的確に伝達するための手段であり、言ってしまえばただの道具に過ぎない。と、以前とある方が言っていたのを聞き、私もそれに賛同していました。理系の性とでも言いましょうか、大抵私は無駄を徹底的に省いたシンプルなものに美しさを見出す人間です。

しかし、言葉に関してはその限りではなく、婉曲的だったり、間接的な文章にも魅力を感じてしまうことがあるのです。

一体なにがここまで人を、私を惹きつけるのか、そんなことを考える昼下がりでありました。

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