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空から旭川・富良野を見てみよう(1)


創作の動機

「空から日本を見てみよう」(テレビ東京系)を懐かしく思い出しつつ、改めて放送記録一覧を眺めていたらひとつ気がついた。

北海道の道央地域(旭川・富良野・帯広など)について、地上波時代・BS時代(空から日本を見てみよう+)を通じて、一度も取り上げられないまま番組が終わっている。

北海道は函館・洞爺、札幌・小樽、釧路・知床を取り上げているが、真ん中がすっぽり抜け落ちた形である。

西日本(関西・中国四国・九州地方)は特にBS放送時代、かなりこまめに出向いて取材制作されている。伊豆諸島や屋久島など、著名な島嶼部も回っている。それだけになお意外だった。

BS放送が始まってからは教育目的利用も意識していたようで、「空から日本を見てみようDVDコレクション分冊百科」全100巻が2016年から3年間にわたりデアゴスティーニ・ジャパン社より販売されていたというから、全国網羅を目指していた節もうかがえる。ならば道央完全無視はなおさら首を傾げる。文字通り画竜点睛を欠いている。

人気の観光地をいくつか抱え、自然の風景や独特の現象、生息する動植物に魅了され、静かな安らぎや非日常のワクワクを体験するべく訪れる人は極めて多い。おしゃれな「映え」スポットは無数にある。農業や林業に加えて特徴的な地場産業もある。もちろんおいしいものにも事欠かない。空撮アングルを取り入れたらさらに新たな魅力が引き出されるだろう。この番組にとって絶好の題材となる地域のはずである。

取り上げられなかった理由はいくつか想像できそうだが、関係者に対して失礼にあたるようなことはあえて記さない。

作られていないのならば、頭の中でシミュレーションしてみよう。久しぶりにやる気が湧いてきた。

もちろん私個人で空からのアングルは撮影できないし、非公開の場所に”顔パス”で潜入できないし、工場などの作業の様子を早回しで撮影するような技は全く使えない。

親しい知り合いがいるでもないし、初対面の人に話を聞く度量もない。そもそも話すことについて障がいがある。なのでこれまで幾度か歩いた際に得られた印象を”くもじい・くもみ流”に再解釈して、番組風に構成してみたい。

この作品はフィクションです

始める前にまずお約束から。

この作品はフィクションです。
実在する施設・店舗をモデルとして描写する場面がありますが、一観光客としての来訪経験に基づき構成したものです。関係者への取材活動は行っておりません。
従って、実在の人物・団体などとは一切関係がありません。過去に放送された実在番組とも関係はありません。
あくまでフィクションとしてお楽しみください。

必要に応じて、Google MapおよびGoogle Earthより空撮アングルに相当する画像を引用しています。

※掲載写真は特記以外2023年10月撮影

オープニング

♪Land of Innocence~希望の大地

「もしもし、そこのあなた。
地面の上を歩く生活に疲れてはおらぬか?
たまには、わしらと一緒に空から日本を眺めてみるというのはどうじゃろう?」

「きっといろんな発見があるはずですよ。」

「今回は旭川から富良野まで、北海道の真ん中を飛んで行くぞ!」

「わあ!動物園、ラベンダー!」

「うむ。しかしそれだけではないぞ。雄大な山と自然に囲まれたこの地には、不思議なものがわんさかあるぞ!わしらの好きな、アレやアレもある。」

「楽しみです!」

「では、そろそろ出発じゃ。わしらと一緒に大空を飛んでみませんか、空から日本を見てみよう!」
(ポワポワポワポワ…)

旭川市上空(筆者撮影)

Scene 1(近文駅~旭川市街地)

♪Mr. Fantasy's Love(飛行ルート案内地図画面)

「まずは上川盆地の西側、神居古潭から旭川市内を目指して飛んでゆくぞ」

「はーい!」

♪Hula Girl

(テロップ) 旭川市 DATA
人口327,960人(道内2位) 面積747.66k㎡(道内28位) 2022年1月1日現在
1902年1月25日気象観測史上日本最低気温-41℃を記録

「旭川は北海道のほぼ中央、忠別川・美瑛川・石狩川が合流する上川盆地に開かれた、北海道第二の都市じゃ。アイヌの伝承に由来する神居古潭の山を過ぎて、嵐山を越えると旭川の市街地じゃ」

「京都みたいな名前ですね。あっ、特急が走っています!」

「函館本線じゃな。函館を起点に長万部・小樽・札幌・岩見沢・滝川と経由する北海道最大の幹線、函館本線はこの旭川までじゃ」

「駅のホームに羊羹がひと切れ落ちています!」

Google Map より引用

「ははは、あれは近文駅ホームの待合室じゃ。1911年の開業当時からの建物と言われておるぞ」

「100年以上ですね」

近文駅(2022年5月)
特急「ライラック」通過(2022年5月)

「函館本線が石狩川を渡ると、旭川の中心部じゃ」

写真中央の雲の筋付近が函館本線
中央左の高い煙突を持つ建物の左側が石狩川(筆者撮影)

「旭川駅が見えてきました!…くもじい?」

旭川駅付近上空(筆者撮影・テロップ付与)

♪Firecracker

「はて、ここらに大きなイカがおったはずじゃが…見当たらんのう」

「何言ってるんですかくもじい、町の真ん中にイカがいるはずないでしょう」

「いや、確かにおった!」

(テロップ)「 くもじいが探している建物はどこ?」

(ナレーション)「くもじいが言っているのは、2条10丁目の家具店。1937年に建てられた、白い洋風のビルに黒い瓦屋根3個と塔を載せた帝冠様式建築でしたが、既に解体されました。」

「何と、なくなっちょるのか…今は空き地じゃな」

2条10丁目にて。取り壊された旧館と新館の接続跡が残る

「残念です…」

「なくなったものは仕方ないのう。旭川駅を見ておくか」

「賛成!」

Scene 2(旭川駅)

「旭川駅って川のすぐ隣にあるのですね」

「そうじゃな。昔はもうちっと構内が広かったぞ。富良野線のホームだけが忠別川沿いで、やたらと離れていたんじゃ。今のホームはそのあたりにまとまっておる」

旭川駅南口
地平時代の旭川駅富良野線ホーム(1999年7月)

(ナレーション)「旭川駅は1898年、北海道官設鉄道により開業。現在の駅舎は4代目で、周辺の立体交差事業に伴い2010年に高架駅として建て替えられました。」

「わっ、中はウッディですね。コンコースに椅子やテーブルがたくさんあります!」

旭川駅コンコース
旭川駅コンコース

「旭川は家具の町と言われておるのじゃ」

「家具?」

「旭川は大雪山系の山々に囲まれ、昔から質のよい木材を豊富に産出しておった。上川盆地開拓により陸軍第7師団や駅が置かれ、本州から高い技術を持った職人たちが移住してきたことが旭川家具の始まりじゃ」

「さっきのお店も家具店でしたね」

「そうじゃな。旭川家具はデザインにも職人たちの技術にも定評があるぞ。技能競技大会やデザインコンペで常に腕を磨いておる。サステナビリティにも取り組んでいるのじゃ」

「改札口の中もおしゃれです!一枚一枚の板に名前が刻まれていますよ」

5・6番ホームエスカレーター入口
改札口付近の壁面

(ナレーション)「これは新しい駅舎の完成を記念して、壁面に使う北海道産のタモ材板に10,000人の名前を刻むプロジェクト。全国各地から応募があり、募集開始から3ヶ月で10,000人に達しました。」

「くもじいのもありますか」

「いや、うっかりしておった」

「くもじいにしては珍しいですね」

スポンサーテロップ画面

「国鉄の頃、旭川駅は”あさひがわ”だったのじゃ」

「どうして濁っていたのですか」

「それがよくわかっていないんじゃ…ごにょごにょ」

「言葉を濁しましたね」

Scene 3(買物公園)

♪Mr. Fantasy's Love

「では、旭川の中心部を飛んでみようかのう」

「楽しみ!」

♪Coffee Talk

「駅前から北へまっすぐ伸びる道は平和通買物公園じゃ。1972年、日本で最初に常設歩行者天国とした道路じゃぞ」

「おしゃれなお店がいっぱい!でも、ちょっと淋しそうです」

平和通買物公園 正面奥に旭川駅
平和通買物公園 北方向を望む

「昔は百貨店や映画館などが軒を並べておって、文字通りショッピングを楽しめる繁華街じゃった。が、この頃は郊外大型店舗の出店や人口減少で、閉める店が増えておる」

「旭川もですか…」

「希望は残っておるぞ。地元の若い者が新しい感覚の飲食店を開いたり、夏にはビアガーデンやバルなどのイベントが開かれたりしておるんじゃ」

♪Firecracker

「賑わい、戻ってきてほしいですね。…あっ、くもじい!あそこに溺れている人がいます!」

「何を言うんじゃ、海や川でもないのに溺れるわけがなかろう」

「でも、あそこに助けを求めている手が」

「手?そんなはずが…本当じゃ!何じゃ、こりは!くもみ、助けに行くぞ!」

「ラジャー!」

(テロップ)「 街の真ん中で助けを求める手は何?」

Google Map より引用


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