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金も銀も、人の中にある~本の紹介【最高】

ずっと長いこと読み続けていた小説が、とうとう終わりを迎えました。

もしかすると以前にも書いたことがあるかも?

著:高田郁さん
「あきない世傳 せいでん 金と銀」シリーズ。

ときは江戸時代。
貧しい田舎の学者の家にうまれた さち
父、兄の急逝で生活に困り、母と妹を残し、幸は大阪の呉服店に奉公にあがることになる。
大阪天満の呉服商の女衆として、鍋の底を磨く日々を送ると思っていたが、あるとき、番頭・治兵衛にその類まれな才覚を見出され、幸本人も商いの道に心惹かれていく。
「売っての幸い、買うての幸い」。
素直で賢く、そして努力をいとわない幸の、波乱万丈ながらも感動の人生を瑞々しく描いたお話。


着物が好きな方も楽しめるかも! 私は好きです

これは最終巻(特別巻)の「幾世の鈴」。


……実は、まだ読んでません(笑)

これで完全に終わっちゃう、と思うと、なんだかもうちょっと準備してから読みたくて。
そのくらい濃くて、リアルで、感動で、期待を軽やかに超えてくる、最高のお話だったんです。

心から続きを待っていたにも関わらず、読んでしまうことへの躊躇いを感じる。矛盾した心を自覚せざるを得ない、ニクイ作品です(笑)


全15巻。
巻数にすると少なく感じるかもしれませんが、マンガではなく小説です。
しかも、登場人物のセリフをなぞるだけの「シナリオのしくじり」みたいな小説ではありません。

言葉、地の文、書いてある文章の端々に、血が通っていて、息をしているような、本当に今自分が、江戸の空の下にいて、雨上がりの濡れた道にたたずんでいるような錯覚を感じるんです。

私、「こんなに素晴らしい文章、知らない(最高)」と思う作家さんが数人存在するのですが、その筆頭とも言える方です。


お話の中では数十年の年も経っています。
私もそれと一緒に旅してきたような気がします。
圧巻、としか言えない。

うう、とうとう終わっちゃう……。




時代小説なのですが、本当に私はこのお話から、たくさんのものを学ばせてもらいました。
何をか、と聞かれると具体的に言えません。

でも、大切なことをたくさん教わったと思うのです。

以前のシリーズ「澪つくし料理帖」も大好きで集めていたんですが(NHKドラマにもなりましたね)、今回のこのシリーズは、それをさらに超えてきてます。

なんていうのでしょう。
「生き方」そのものを学んだと思います。

「商売の話」というと、なんとなく生々しい、欲の話だと聞こえる方もいらっしゃるかもしれません。

それが、全然違います。


いえ、そういう人も出てきます。
主人公の幸自身、亡くなった父から、「商は詐なり(商売とはつねに詐欺だ)」と聞いて育ちました。(※当時の武士の考え方)
そして、確かにそういう人物とも、幸は相まみえることになります。

が、幸は違いました。

売る側も、買う側も、幸せに。
そして、生産者や、関わるすべての人が幸せに。
それが、幸の目指す道でした。

三方よし」という言葉があります。

近江商人の言葉で(旅行で彦根に行ったときにも書いてありました)、「売り手よし」「買い手よし」「世間よし」がそろう、これが商売には大事なことだ、という意味です。

幸は、それを生きたわけです。

愛別離苦。
たくさんの出会いと別れ、あり得ないような困難を経験しながら、それでも商いを通して道を歩き続けた幸。

この本は正直なところ、「読書が本当に好き」な方にしか勧められないかな、と思い、あんまりたくさんの方にはご紹介してこなかったんです。
簡単な本をちょちょらに読むとか、結論を先に聞いて続きを読む(最近のネット記事のように)ことに慣れていて、そこに至るまでのアレコレを楽しめない方には、ちょっと難しいかも、と思いました。

「苦労」を「不幸」だと思う人には、難しいような気がしていたんです。

でも、人生の苦労って、本当は「不幸」じゃないですよね。

幸は本当に苦労したけれども、本当に幸せでした。
その生き方を通して、たくさんの人も変化し、成長していきました。読者である私も。


興味持たれた方は、ぜひぜひ一巻だけでも読んでみてください。
おそらく、止まらなくなること請け合いです(笑)
そして、こんなにも生きているかのように登場人物を描写できるのか、という驚きも感じるかもしれません。

傑作です。


最後までご覧いただき、ありがとうございます😊✨

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