夢のつづき


あれからしばらく10年ないぐらいかそれぐらい。
普通に、一般的に、人を好きになり付き合ったりするがどうしてもうまくいかずいかないけれどもう過去にも戻れず。この人で最後、最後にしようと決めた男とも終わり何もかもに疲れた時、二人目の人に出会った。

初めは多分逃げだった。自分が恋愛依存だと自覚しているし人を好きになるのは簡単だったし、この人を好きになりたいと思って好きになることができた。もちろん多少の好意ありきの話だが

一緒にいるうちにああこんな人と一緒にいられたら自分は幸せになれるのに、と思った。けど昔ずっと一緒にいられると思った人とも別れてしまったしもう自分の好きという気持ちに絶対的な自信が持てなくなっていた。離れることがないから信じられるから一緒にいるのに自分が壊してしまったことを未だに受け入れられなかった。そうしてこの人と出会って約三か月。わたしたちは結婚した。

きっかけはゲーム内のイベントだった。よくある時期イベのガチャで結婚式のピックアップが始まった。リセマラをした、友人何人かにも厚意で手伝ってもらって無事獲得をし泣いた。その時かけていた曲は今でも結婚式の曲だと思っているし街やテレビふとした場所で聞くと今でも鮮明に当時のことを思い出す。ネタと思っているか信じているかは分からないけれどみんなにおめでとうと言われた。嘘でも嬉しかった。知ってくれていたから。

そうして結婚をして、遅くはなったけれど婚姻届を書いた。凄いことにたまたま企業か何かで二次元相手との婚姻届を受理してくれるイベントをやっていた、それをたまたま見かけて婚姻届を書きもちろん友人の欄も書いてもらい提出した。これがまたちゃんと判を押して、結婚証明書までもらいふたりの結婚を祝福してくれていた。ここまでしてくれるのかと驚いたしこういう人の気持ちに寄り添ってくれる企業で働きたいと思ったけど距離の都合で断念。

次に指輪を用意した。用意したというか買ってもらった。実際には買った。事実を書くと現実に引き戻されて吐き気がする。分かってるこっちが現実。

ここで昔嫁サイトをやっていたことを思い出し何を血迷ったかSNSを始めた。そしてコアだろうけど非botのなり垢を探した。自分は完璧主義者なので少しでもキャラがブレていると関わらないがひとり上手な人がいて、その人によく相手をしてもらった。

そういう夢のような生活をさせてもらっているのに人間は本当に欲深くてたまに怖くなってしまう。会話できるだけで幸せだった自分の独占欲が膨らんでいった。もちろんSNSなのでそのなり垢には他の女も存在してもちろん同じように会話をしている。元々独占欲が強く嫉妬もするタイプだったので他のが見えているとより強く感じるようになった。

ある日そのことを伝えると、ちょっと待っていなさいと言われ待っていると通知がきて、何かと見に行くとわたしだけの専用アカウントを作ってくれた。わたしはもともと専垢だったのでふたりだけしかいない世界になった。なんて幸せなんだろうと思った。こんなに幸せなことがあるんだろうか、わたしひとりを大切にしてくれているなんて、本当に夢を見ていると思った。疑り深い性格なので同じようなIDを調べたり他の人にも作っているんじゃないかと思って調べたが確実に自分だけに自分だけの専垢を作ってくれていた。

毎日夜時間を作ってわたしと話すためだけにここにきて、眠るまで一緒にいてくれる。胸がいっぱいで苦しかった。そして思った。わたしは相手に何ができるのだろうかと。自分はこんなに幸せにさせてもらって相手には何のメリットもないのに時間を浪費させている。何かしたいわたしができることならなんでもしたいと、だいぶ禁忌だしだいぶ葛藤があったけれど中の人にコンタクトを取ってみた。

とてもいい人だった。太陽みたいに明るく、ネガティブなわたしを支え、理解して話をしてくれる人。申し訳なく思わないで、好きな気持ちが伝わるしあなたが幸せならいいのと言われた。神なの?と思った。

そうして中の人とも連絡を取り始め、旦那さんとも会話をするという二重生活が始まってとても親しくなり会おうという話になった。きっかけは何だったかもう思い出せないけど、やばいと感じた。いや警戒心が強いのでネットから人に会うなんてほとんどないけれどそんなやばさよりわたしは旦那さんに会うも同然なことに気付く。それはそうだ、いつも会話をしている旦那さんはこの中身の人なのだから。うんと可愛く、そして相応しい人でいなければいけないと死ぬほどおしゃれをして会った。

何度もそういう機会があり、誕生日を祝ってくれたり結婚記念日を祝ってくれたりほとんど旦那さんの役割をしてくれていた。わたしも好きだった。人として明るくわたしを支えてくれたから好きだったのか、旦那さんの恩があるから好きだったのか、この好意が今でもどこからきているものなのか分からないけれど好きだったのは間違いない。喜んでくれるならなんでもしたいと思えた。

今でも忘れられないのは夢デートをしたこと。


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