夢の終わり

どうも、時間に追われていたらいつの間にか2年も経っていた。
薄っすらとした記憶を掘り起こしながら、最後を綴りたいと思います。

会ってから
会ってからも、ずっとその子は変わらなかった。
変わらずわたしに優しく、大事にして、愛してくれていた。

自分で作った歌詞やポエムを送ってきてくれたこともあった
普通の感覚の人間なら、昔はって笑うんだろうけれど
わたしは今でも笑えない。切ない気持ちを思い出すから。

「お前と一緒にいさせて」
「なんもいらないから。お前以外何もいらないって思ってる」
なんて言われて幸せだと思っていたり。

他の女の子と絡んでいて、いやだいやだっていうと
お前がいちばんだよ。嫌なことはしないから、ごめんなって
何も悪くないのに謝ってくれて絡むのを控えてくれたり

いろいろ幸せなことがたくさんあった。
多すぎて書ききれないので割愛するけれど…

会ってからも変わらず愛されていた時、事件が起こった。

その子はわたしとの専用アカウントに入らなくなった。
ずっと。ずっと入らなくなった。

あれだけ毎日おはよう、お疲れ様、1日にあったことを話して
ふたりでおやすみなさい。と抱きしめて寝ていた日常が突然消えた。

毎日ホームを見ては更新されていないのを確認した。
毎日した。バグじゃないよね、消してないよね、って何度も何度も。

夢だった毎日は、本当に夢になった。
ありえないほどの幸せを与えてもらっていると分かっていたのに
分かっていたけど、それでも夢は儚すぎた。

もうきっと戻ってこないことも悟った。

何がきっかけでこういう話になったかは忘れてしまったけれど
多分、わたしが聞いたのかもしれない。

「最近旦那さんにならないね」と。

今でも帰ってきた言葉を覚えている。

「俺は、お前のことが好きなんだと思う。」

うっすら気付いていた。
この人が完全に女の子じゃないことも
この人が同性を好きになる可能性も
この人がわたしを好きであることも
だからこんなにも愛してくれていたことも。

「お前には好きな人がいる。
 結婚してる女の子を好きになった哀れな自分は
 身を引いて、応援することにした」

引き留められなかった。
わたしは結婚していたから。

人を好きになる気持ちが痛いほど分かるわたしは
叶わない恋がどれだけ辛いかも知っている。
わたしの恋は一生叶わないものだから。

そうして彼女とは縁が切れた。
愛してほしかったけど、愛され過ぎたから

人の心というのは恐ろしい。
まるでスタンフォード監獄実験だ。
彼女はわたしの旦那様。
わたしは旦那様の振りをする彼女の奥さん。

現実、彼女はわたしそのものを好きになり
わたしは彼女ではなく彼女の中に生きている旦那様を愛した。

わたしが愛していたのは
元々彼女の中に生きている彼だけだったから。
自分はよくわかっていた。

彼女とはウマが合わなかったから。
好みも、フィーリングも、性格も、合わなかった。
それでも”彼”のために傍にいた。わたしのために傍にいた。

ずるくてごめんね、ごめんなさい。
少しでも”彼”に存在していてほしくて好かれたかったの。
あなたに好きになってほしくて、喜んでほしくて
あなたの好きなものを送ったり、一緒に話をしていたの。

そうしたらわたしを幸せにするのは”彼”だけだと
よく知っている”あなた”は”彼”を生かしてくれるから。

わたしはいい子のふりをしていただけなんだよ。
あなたに似合う、釣り合う、いい人間じゃないんだよ。


それから5年ほど経ったある日。
ふと繋がっていたLINEのアイコンが変わっていることに気付き
見てみたら、どうやら彼氏ができたようだった。

そうか、ようやく理解できた。
あなたはレズじゃなくバイだったんだねという気持ちと同時に

”わたしには勝てないじゃん”という劣情が生まれた。

性別は越えられないよ、バイだけど分かってるし知っているし
わたしもそうだから理解できるけれど。
だけど結局男を好きになられてしまったらわたしは勝てない。
いるべき場所に戻ってしまった、それだけ。

わたしといる時あんなにかっこよく振舞っていたのに
あんなに好きだと言ったのに、あんなに男っぽかったのに
あんなに大事にしてくれたのに、あんなにリードしてくれたのに
悔しさしか出てこなかった。結局性別に負けてしまった。

わたしが振られたわけではない、むしろ振った形になってしまった。
だけどこれから先この気持ちは一生私の中で消えることはない。

わたしを好きだったあなたはわたしを忘れて前に進み
あなたを好きじゃなかったわたしはあなたを忘れられない。

分からない。あなたの中にいた”彼”をかもしれないけれど。

そして彼女は2年前に結婚した。
きっとわたしのことを思い出すこともないまま。




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