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パンドラ

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パンドラ・・・
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夜の闇を切り裂くライト。
人は誰もいない。

風の音がラジオを掻き消し
無音ではない孤独を感じる。

昨日と同じ道。
しかし、何かが違っていた。

likearl
1年前
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それは、
舞い降る雪の所為なのか。

それとも・・・

何かが終わってしまった
虚無感なのか・・・

likearl
1年前
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彼は、スマートウォッチを見ると
脈拍は正常なのか意識した。

そして、自分へ確認するかの様に
小さく、小さく、呟いた。

「時間は・・・狂っていない。」

たとえ、そうだったとしても
取り戻すことの出来ない時間。

likearl
1年前
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しばらくすると、
暗闇の彼方に灯が見える。

だが、彼には少しだけ
心の準備が必要だった。

選択肢は一つしかない筈なのに・・・

それでも、
まるで何かに取り憑かれたかの様に
有りもしない選択肢を模索した。

likearl
1年前
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「ピーッ、ピーッ、ピーッ」

答えは出ないまま
バックミラーを意識した。

トラックを降りると、
いつもの様に積荷を下ろす。

「今日は、遅かったなぁ」

彼は、突然現れた担当者に驚き
咄嗟に言ってしまった・・・

本当の事を・・・

likearl
1年前
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「あ、すいません、
ワールドカップに夢中で・・」

真っ青な顔で彼は言った。

しかし、担当者は間髪入れずに言った。

「どっちが勝った?」

彼は、えっ⁉︎と思いながらも
勢いに押されるまま言った。

「アルゼンチンです」

担当者は笑顔で言った。

「メッシ〜良かったなぁ〜」

likearl
1年前
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彼は少し暗い顔に戻り 思い出したかのように言った。 「あ、遅れて、すみません・・」 しかし、担当者は 「あ〜、まぁ、少しの遅れだ。 ワールドカップだし、気にしないで。 結果知れたし、ありがとう。」 そう言い残して仕事に戻って行った。

・・・彼は驚いた。

そして、正直に言って良かったと
胸を撫で下ろした。

___数日後

街はクリスマスの賑わいを見せる。

プレゼントをサンタにお願いするには、
彼の現実は既に理解していた。

likearl
1年前
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しかし、ふと彼は思う。

満たされた時間に多くの人が興奮した
ワールドカップの感動も、

その事で遅れてしまった自分を
さり気無く許してくれた担当者の優しさも、

彼にとっては最高のプレゼントに思えた。

「さぁ、行くか」

そして彼は、
今日もパンを運ぶ。

likearl
1年前
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