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【時事】日韓トンネル情報整理

時々ネットで話題になる日韓トンネルについてのまとめです。

結論から言うと「ほぼ不可能では?」なんですが、危険視する方が多いですし、twitterではバズりやすいネタなので重宝されているイメージがあります。全容を知ると、ここの実現性がある程度わかると思いますので、お時間のある方はご一読ください。結論は最後に記載いたします。

歴史・関連団体の部分はかなり長いので、流し読みでも読み飛ばして頂いても構いません。単なる情報整理ですので。また、膨大な量があるので割愛した箇所も多いです。ご了承ください。

◆歴史

1. 終戦まで

1938年
鉄道省の湯本昇鉄道監察官が「中央アジア横断鉄道計画」発表。これはシルクロードに鉄道を敷設し、同盟国であるドイツまで結び、シベリア鉄道に次ぐユーラシアの大陸横断鉄道を目指すというもの。
※なお、現在は中国が「一帯一路」構想の元に「ユーラシア横断鉄道」を建設し、稼働させていますが、当時の日本の描いた構想とは全く異なるプロジェクトなので割愛。興味のある方は調べてみてください。

中央アジア横断鉄道計画

1939年
「弾丸列車計画」が立ち上がる。これは大陸内の物資輸送の迅速化を図るものであり、新幹線の起源もここのようです。構想として「将来は対馬海峡に海底トンネルを掘削、満洲国の首都新京(現:長春)や中華民国の北京までの直通列車を走らせるというものもあった。

列車計画図(『写真週報』242号=1942年10月14日号より)

1942年
「大東亜縦貫鉄道に就て」という報告で、アジアをまたぐような鉄道計画が提唱される。ここに「弾丸列車計画」の構想をMIXさせると下記のような図が出来る。

弾丸列車構想+大東亜縦貫鉄道構想

2. 1980年代

1980年
大林組が「ユーラシア・ドライブウェイ構想」を掲げます。これは日本からイギリスまでを一本の道で繋ぐという構想です。ユーラシア大陸を横切る形ですが、大陸内は陸路としても、序盤の「日本から朝鮮半島に至るまでをどう繋げるのか」の箇所で日韓トンネルが出てきます。

大林組 ユーラシアドライブウェイ構想
大林組 ユーラシアドライブウェイ構想 日本と朝鮮半島を繋ぐルート
日韓トンネル 唐津ー壱岐
日韓トンネル 壱岐ー対馬
日韓トンネル 対馬ー朝鮮半島

①唐津から壱岐まで(32km)
②壱岐から対馬まで(60km)
③対馬から朝鮮半島まで(50km)

①は橋梁で、技術的には可能。②は海底トンネルで、こちらも可能。問題は③です。落差数百メートルの断層が(対馬トラフ)、窪みには軟弱な土が堆積。そのため、海底トンネルという選択ではなく海中にパイプのような形状のトンネルを作る案が記載されている。
※詳細を読まれたい方は「大林組EURASIA DRIVEWAY」をご覧ください。

1982年
韓国のソウルにて、統一教会の教祖である文鮮明が、人類一家族実現の基盤として全世界を高速道路で結ぶ「国際ハイウェイプロジェクト」を提唱。

文鮮明 国際ハイウェイの提唱


1983年
任意団体 国際ハイウェイプロジェクト・日韓トンネル研究会設立(後述)

1986年
佐賀県東松浦郡鎮西町(現・唐津市)名護屋で「日韓トンネル名護屋調査斜坑」の起工式が行われた。事業主体は国際ハイウェイ建設事業団(後述)
斜坑は470 mまで掘られた。

3. 1990年代

1990年
盧泰愚大統領が訪日時の国会演説において海底トンネルに言及し、海部首相に建設を提議。(日韓新時代共同研究プロジェクト)

盧泰愚大統領国会演説記事・海部元首相日韓トンネルに前向き

1996年

1999年
金大中大統領も「日韓トンネルが建設されれば、 北海道からヨーロッパまで結ばれるので、未来の夢として考えてみる問題」と、トンネル 建設を提唱。
日韓新時代共同研究プロジェクト

4. 2000年代

2000年
ASEM会議(アジア欧州連合会議)にて森喜朗元首相 は「日本と韓国をつなぐトンネルを作りASEM鉄道という名前を付けよう」と提案。(日韓新時代共同研究プロジェクト

2002年
日韓海峡圏研究機関協議会「海峡圏研究」第2号でとりあげられるが、やはり海底の地層の落ち込みや地盤については困難な問題があると記載。

日韓海峡圏研究機関協議会 「海峡圏研究」第2号

2003年
盧武鉉韓国大統領は小泉純一郎総理大臣との首脳会談で「北朝鮮問題が解ければ日韓海底トンネル建設の意見が再び経済人の間からでてくるものと思う」と日韓トンネルの必要性に言及。(日韓新時代共同研究プロジェクト

2008年
日韓海底トンネル推進議員連盟発足。設立目的は「対馬海峡にトンネルを通し、日韓を自動車で結ぶ」というもの。膨大な経済効果が望める大プロジェクトであるとうたっていた。

2009年
釜山発展研究院が自主的な代案ルート「韓日トンネルと北東アジア統合交通網構築のための基礎研究」(福岡~対馬~加徳島~釜山・江西)を提示。
また、この頃に唐津の牧場跡地(現在のトンネル斜坑入口)の所有権が「世界基督教統一神霊協会」登記になった模様。(佐賀新聞)

5. 2010年代

2010年
唐津のトンネル斜坑入口の所有権が「世界基督教統一神霊協会」から「国際ハイウェイ財団」移る。(佐賀新聞)

2011年
韓国国土海洋部は、日・中・韓の海底トンネルに対する基礎研究を交通研究院に調査を依頼。「海底トンネルは経済性がない」の結果に基づき、海底トンネルの推進を中断すると明らかにした。(Searchina

上記を受けて、また韓国政府側が国家的プロジェクトにする可能性も薄いため、2008年の日韓海底トンネル推進議員連盟は活動休止、解散。

2013年
長崎市内の団体の請願を受けて、対馬市議会が早期建設を政府に求める意見書を可決(J-CAST NEWS

2014年
対馬にて「日韓トンネル対馬調査斜坑 阿連抗口オープン式」の式典が行われる。これには統一教会側の参加者も多数出席。

やや日刊カルト新聞

韓国側でもTV報道されており、その動画がYoutubeにあがっております。

6. 2020年代

2021年
韓国の野党「国民の力」の金鍾仁代表が釜山を訪れ、日韓海底トンネル建設を公約に掲げた。

2022年
唐津市定例記者会見で峰達郎市長は「(県から)トンネルを掘るだけでは(開発行為に)該当しないとの報告を受けた」と述べた。同市は「あくまでも民間団体が任意で私有地内で活動されているものと理解している。市は一切この事業に関与していない」と説明。(佐賀新聞

また、安倍元総理銃撃事件を受けて統一教会と関連のある議員が話題になっていた時に、自民党 細田博之議員が関与を問われ、下記のような発表をしている。

◆関連団体

1. 一般財団法人国際ハイウェイ財団

組織概要を貼っておきます。所在地が「東京都新宿区新宿5-13-2」となっていますが、この所在地を検索してみますと「世界平和統一家庭連合 東京同胞家庭教会」が出てきますね。

国際ハイウェイ財団

2. NPO法人 日韓トンネル研究会 

日韓トンネル研究会

3. 日韓海底トンネル推進議員連盟

2008年発足、2011年解散
日本の国会議員9名の超党派連盟
(メンバー)
衛藤征士郎(大分2区)代表
谷川弥一(長崎3区)
保利耕輔(2014年に引退)
高木義明(2017年に引退)
保岡興治(2017年に引退)
野田毅(2021年に落選)

◆私見

これが今後進展することはおそらくないと思われます。その理由を、下記に述べて参ります。

1. 情勢の変化

戦中は半島は「日本の国土」でしたから、食料や軍需品の物資輸送は必要だった訳です。また、南北朝鮮も分断していなかった。トンネルなどの移動手段さえあれば、平壌まで行く必然性が生じた時に便利だったことでしょう。「大東亜縦断鉄道」はそういうコンセプトだったと推察します。が、今は国境がそれを阻みますので、トンネルがあっても、さほど遠くまでは行けなくなってしまっています。当時は民間の飛行機なんてのもなかったので、列車移動の必要性があると思うに至ったのもわかるのですが、今はどちらかというと「空の便」ですよね。

2. 距離

・青函トンネルは全長53.85km(海底トンネル)
・英仏海峡トンネルが全長50.49km(海底トンネル)
・ゴッタルドベーストンネル全長57km(地上 / 世界最長)
大林組の資料のように唐津から壱岐をトンネルではなく橋梁で繋いだとしても、残りは100km超。過去にそんなに長いトンネルは地上ですら例がありません。

3. 時間

人々が行き来するとしたら、2国間を結ぶ場合は「首都と首都」の往来が一番多いと思います。東京からソウルまでは飛行機で2時間40分。トンネルを使っても「九州まで」で、そこからの所要時間を勘案すると「トンネルで行く必要性がない」になります。ちなみに福岡~釜山は高速船「BEETLE」という船が出航していて3時間40分で到着します。私もこの移動方法で釜山に行った事があるのですが、閉塞感がないので快適でした。(往路は船酔いしましたが)

4. 技術面

何といっても断層と地盤です。技術面の資料は大林組の資料の後にもいくつか散見されるのですが、必ずここが懸念材料となっているようです。大きく高さが分かれる状況、しかも緩い地盤では建設ぞのものが成り立たないのでは。

5. 安全性

災害に弱いであろうことは想像に難くないと思います。長距離のトンネルなので、中央部で何らかのトラブルが発生した際には、人命救助も復旧も困難を極めそうですね。あと、海底トンネルの問題点は「排気」や「換気」だそうです。ここも難易度が高いようです。

6. コスト

2011年に韓国側での試算でペイできないと出ています。また、以前の試算なので2023年に算出するとまた違う数値になるでしょうが「10兆円」という額が提示されていますが、そもそも現状は国の予算が割り当てられている訳でもないので「統一教会関連団体」のみで何とかお金を集めている模様ですよね。その統一教会及び関連団体の「霊感商法」スキームには、昨年以来かなり厳しい目が向けられていて、今までより更に資金集めは難易度が増します。まず必要な資金が調達できない。
今のところ、対馬や唐津の土地を買って「少しだけ掘った」のレベルです。完成にこぎつけられる可能性は限りなく低いと判断しています。




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