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【映画】すずめの戸締まり

※ネタバレ少しあります!ご注意!

話題の「すずめの戸締まり」を観て参りました。「秒速5センチメートル」を知ってから、基本的に劇場で必ず観る監督の作品ですので、期待度MAXでの鑑賞です。テーマがテーマであり、少々ショッキングなシーンもありますが、総評として私はかなり楽しむことが出来ました。

深堀りできるタイプの映画なので、感想を残しておきたいです。

前置き

物語を大雑把に説明すると、主人公すずめと草太が「災厄を封じて日本中を旅する物語」です。災厄を封じて回るってのはファンタジーの王道ですよね。抑えきれなかった災厄と対峙する流れも壮大なRPGっぽいですよね。巨大なミミズを観た時はワンパンマンの「ムカデ長老」を思い出しました。災害レベル竜ですねw

新海誠監督もこの映画を「ロードムービー」と表現していたようです。ロードムービーってのは変化に富む分面白くて、様々な人との関係構築、出会いと別れが繰り返されるごとにキャラは深みを増していきます。そして「共に旅する相手」との関係値も同様に変化していく訳で。

主人公の岩戸すずめ、彼女が住んでいるのは宮崎県日南市。福岡でも熊本でもなく宮崎なのは、推測ですが日本の神話の舞台であるからでしょうか。
宮崎には「古事記」や「日本書紀」の舞台であり、天岩戸神社も宮崎県です。(厳密に言うと高千穂エリアは県北、日南市は県南に位置します)
岩戸という苗字は、おそらくは「天岩戸」から取られたと推察。物語が宮崎から始まるのも、日本の歴史が始まるイメージと重ね合わせているのではないかなと考えていました。
帰宅後に劇場でもらった「新海誠本」を読んでいると、すずめのモデルはアメノウズメノミコト(天鈿女命)との事。なるほど、すずめは「ウズメ」から取られていたのか。

という訳で、この物語のジャンルを表すなら「ファンタジー + 神話 + ラブストーリー + ロードムービー」というw

キャラの魅力

震災のシーンについては後述。まあ、災害などは人間の力では避けられない面があるから仕方ないと思ったりもするのですが、対人関係の軋轢は「避けられたハズなのに…」と。私が個人的にきつかったのは「鈴芽と環さんの口論シーン」です。

環さんが鈴芽に投げつけた言葉は、きっと本音なんですよね。愛情もあって、本当の親子のように接していても、どこかに自分の境遇への不満はあって。これはおそらくゼロにはならない。そして、鈴芽もその事を少なからず感じている節がある。勿論、2人の間には愛情や信頼関係は構築されているので普段は大丈夫なんですが、ふとした瞬間に負の感情が表れる。この旅路の前は、この2人は「それを見ない事にしてうまくやりすごす」を選択していたと思うのですが、この旅路で2人は「相手の不満もひっくるめて認めた上で、更に強い結びつきで乗り越える」を選択したんだと思います。

女性からはきっと芹澤が人気なんだろうなぁ。最初はアルファロメオに乗る金持ちのボンボン+上から目線の嫌な奴的なイメージだったんですが、意外とボロ車だったり、聴いている音楽が80'sだったり、お人好し感がどんどん発露されてきて。

草太については逆に「完璧超人かよ」とあまり感情移入できなかった感はあります。少しダメっぷり出すキャラの方が私は好きなのかもですw
細かいところで言うと、椅子草太の走るシーンの足音がちゃんと「パカパッ、パカパッ、パカパッ」と3音だったのは細かいなぁと。

音楽

RADWIMPSについてではないです。この映画で流れる「懐メロ」についてです。これは監督のセレクトなのかな?世代的に80年代歌謡曲を聴いてこられたとは推察しますが。流れるのは下記の曲目。芹澤、年齢詐称してない?w

・ルージュの伝言
・SWEET MEMORIES
・夢の中へ
・卒業
・バレンタイン・キッス
・けんかをやめて

震災について

この物語の終盤に「黒塗りの日記」が出てきます。事前情報極力ナシで臨んだ私的には、この物語での全ての疑問が氷解する場面でした。注意喚起があったのは、実在の災害を取り扱った物語だったからなのか…。
私はあの震災の被災地にはいなかったし災害で身内を失った経験がないので被災当事者の方とは違う意見になるのかもですが、フィクションの形を借りてあの震災を乗り越える姿を描きたかったんじゃないですかね。

「君の名は。」は隕石、「天気の子」は降りやまない雨、この2つはあくまでフィクションとして割り切れる災害だったので、東日本大震災をテーマにあげるのはおそらく企画段階で慎重論も出たと思う。それでも制作に突き進んだのは私は評価したいです。悲劇を忘れてはいけませんが、そこに踏みとどまらない事、作品に昇華する事こそが「復興」だと思います。


いい映画でした。しばらく経ったら、またきっと観たくなるはず。

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