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#98 生きていてよかった

【往復書簡 #98 のやりとり】
①(9/12):及川恵子〈喜べ、12歳の私〉
②(9/14):泖
③(9/16):くろさわかな

喜べ、12歳の私


先日、とあるバンドのライブを取材してきました。

いつも担当しているライターさんがコロナに感染してしまった、とのことで急遽お声をかけてもらったこのお仕事。
私が小学生の頃から大好きで、そして今でも大好きなバンドがメインになった小さなフェスのようなライブで、二つ返事で快諾したのは言うまでもありません。昔も今もかっこいいバンドのライブを私の言葉で表現できるだなんて。こんなチャンスが目の前に現れるなんて。

この時、思ったんです。
「あーーー!!!!マジで生きててよかったーーー!!!!」
って。

「こんなことってあるんだ」とも思いましたし、「こんなことがあっていいのか」とも思いました。
私の運はここで尽きてしまうのではないか、という気持ち。まさに恐怖。
ご褒美みたいな出来事なのに、ご褒美みたいな出来事だから怖くなりました。人間って複雑ね。

それでもやっぱり「生きていてよかった」と思えたのは、この仕事をしている自分のことが少しだけ誇らしく思えたからです。
常に自己肯定感の針がマイナスに振り切っている私が自分を誇りに思えるだなんて初めてのことでうろたえてしまうのですが、
そのバンドのアルバムを何枚もレンタルして、コピーした歌詞カードを手に持ち、コンポの前に座っては何度も何度もリピートして聴き続けていた12歳の頃の私に胸を張れる!とも思いました。

そして音楽が好きで好きで昔からこうやって音楽を聴き込む瞬間を重ねてきたからこそ、その数十年後の未来に、こうしてライブ取材のお仕事がいただけるようになったのかな、という自分の人生への自信にもつながりました。

自分のことなんだけど、音楽が好きな少女でいてくれたことにも感謝したい。
できることなら12歳の私の頭を撫でてあげたい。
なんなら抱きしめてあげたい。
そして今の私もすごいぞ、と褒めてあげたいです。
こんな気持ちになったのは初めて。誇りって、自分に感じてもいいんですね。え、なんか小っ恥ずかしいこと書いてる。

お二人はこれまでどんな瞬間に「生きていてよかったなあ」と思いましたか?
ぜひ教えてください。