デッキ枚数論

デッキ枚数は何枚がいいのか?

結論から言えば、

①先攻ならば1枚初動8枚で40枚、1枚初動9枚で44枚

②後攻ならば1枚初動7枚で41枚

となる。(もちろん、芝刈り系統などの特殊なデッキは除く。もっとも、その特性からすると49or50or54or60ということになろうが。1枚初動が7枚以下しかないならそもそも後攻取るべきであったり、2枚初動のデッキは先攻を取るなら40枚で初動16以上に、後攻なら40~42枚で初動14以上にすべき、など様々な例外はある。さらに言えば、後攻を取るデッキでも先攻を取らされた、取らなければならない場合に備えて初動9の44デッキにするという選択肢もある。)

なぜか?

度々議論になるこの話題、「体感」などという言葉で曖昧に片づけないために、様々な情報をきちんと整理していく。

特に、ドロー確率、初動枚数、先攻・後攻の差はきちんと整理しておく。

まずは初動枚数について

初動=そのデッキが理想的な動きをするために必要なカードである。

大会環境で基本的なマッチ戦を想定すると、3戦中2戦、理想的な動きをして勝てばよいので、重視すべき確率は2/3=66.6…というのは有名な話だが、今回はそれ以外に、「期待値」と「初手n枚率」についても整理したい。

「期待値」だが、これは何枚手札に来るか期待できる枚数、ということだ。要は、期待値=1ならば、初手に1枚来ることが、期待値=2ならば初手に2枚来ることが十分起こりえますよ、ということが言える。

「初手n枚率」、これは初手にn枚(任意の枚数)来る確率がこれくらいある、ということだ。

なぜこれらを考えるのか、それは初動の種類によって理想とされる枚数が異なるからだ。

初動には1枚で動き始める1枚初動と複数枚そろって初めて動けるn枚初動(基本的に2枚初動。3枚初動はほぼそろわないのでナンセンス)がある。もちろん、1枚初動は1枚くれば理想の動きができるので強いが、あまりに暴れすぎれば規制の対象になる(ギルスとか、過去の真紅眼融合がいい例ですね)。2枚初動はそろいにくく事故率が高いので、枚数を多く積む必要がある。

ここで問題なのは、

(ⅰ)1枚初動を複数引くと2枚目以降は基本腐る

(ⅱ)2枚初動は複数引けないと腐る

ということである。(ⅰ)の具体例はHEROなどを想像すると分かりやすい。例えば、VHEROヴァイオンを1枚初動だと仮定しよう。ヴァイオンを初手2枚引いたら? 1枚間違いなく腐る。その分、他のカード、誘発や罠、制限カードを引きたいのは言うまでもない。もちろん、増援+ヴァイオンのように、ケア札となる引き方もないわけではないが、そもそも誘発打たれなかったら手札にヴァイオン×2となる状況は変わらないわけで、1枚初動が手札に2枚以上来るのは基本腐ってる、とみて問題ない。

(ⅱ)の具体例は、一般的なシンクロ・エクシーズデッキに見られるものだ。素材になるのが1枚しかない、シンクロエクシーズ出来ずにターン渡した、などはよく見る事故例である。最近環境でよく見るドライトロン2枚初動だけど事故らねーじゃん!と思うかもしれないが、あのデッキは後述の確率一覧表を見れば事故らないのが納得できる。だが、2枚初動は基本的に事故るのだ。それには初動枚数を多く積まなければならないことに理由がある。さらに言えば、期待値=2を達成するのに非常に多くのスロットを割かれて、他のカードとせめぎあいになる、ということから、強力なデッキを構築しにくいということでもある。

つまり、1枚初動の場合は「期待値」=1以上を満たし、初手1枚率が高ければ、理想の動きをした上で罠や誘発などで盤石の態勢を作れる、2枚初動の場合は「期待値」=2以上を満たせば事故りにくいデッキを作れる、ということになる。

では、主な確率一覧表を見てみよう。

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これら1~5の表は各デッキ枚数における、先攻=初手5枚、後攻=初手5枚でのデッキ投入枚数別のドロー確率&期待値一覧表である。(気になる人は遊戯王wikiの確率ページ参照の上、ExcelでCOMBIN関数を用いて計算表を作るといい)

表1・2を見ると、デッキ内に1枚だけ投入したカードが先攻・後攻でそれぞれどのくらいの確率引けるか(存在率)、が分かる。これはすなわち、デッキ内に投入した制限カードがどれくらい引けるか、またはPSYフレームドライバーなどの引きたくないピン差しカードをどれくらい引くか、ということになる。当然、デッキ枚数が少ない方が引く確率は上がる。

先攻では、40枚デッキならば12.5%でドロー。これは8回に一度引く確率である。が、デッキ枚数が41~44ならば8~9回に、45枚以上に増やすと、9回以上に1回引く確率、となる。

後攻では、40枚デッキならば15%でドロー。これは7回に一度引く確率。42枚なら7〜8回に、48枚になると8~9回に一度引く確率になる。

表3・4・5はデッキ内投入枚数で見たドロー確率である。要は初動枚数だ。ここで「期待値」=1以上(1枚初動の場合)と、初手1枚率に注目すると、先攻を取る場合は投入数8ではデッキ枚数40で期待値=1、初手1枚率43.71%(表3)、投入数9ではデッキ枚数44で期待値=1.02、初手1枚率43.39、デッキ枚数45で期待値=1、初手1枚率43.39(1枚率最大)となる。(表5)。

また、初動カードの初手存在率で考えると、初動8枚の40枚デッキでは初手存在率69.39%、初動9枚のデッキだと、40枚では74.17%、44枚デッキでも70.10%と、初動を1枚増やして40枚をオーバーしても、初動を引く確率が上昇している事実が改めて確認できる。

後攻の場合、投入数7ではデッキ枚数41で期待値=1.02、初手1枚率43.31、デッキ枚数42で期待値=1、初手1枚率43.31(1枚率最大)となる。(表4)

以上のことから最適なデッキ枚数を考えると、

①先攻の場合、初動8枚ならば40枚に、初動9枚ならば44枚となる。

これはどちらも初動存在率が67%を超える=3戦中2戦は来る確率であり、期待値が1を超えている確率だ。さらに言うならば、初動カードを増やせるならば初動9枚の44枚デッキの方が初動存在率が勝っており、より理想的な動きをする確率が高いともいえる。ただし、初動9枚の45枚でも初手1枚率は44枚デッキと変わらないが、これは初手存在率自体は69.14%と、40枚デッキの初手存在率を下回ってるため、お勧めできない。

40枚にするか44枚にするか好みの問題かもしれないが、

40枚=制限カードを12.5%で引いてカードパワーの暴力だ!

44枚=1枚投入カードは11.36%のドロー率に低下したが、それはPSYフレームドライバー引かない確率でもある。制限カード引く確率だって1%程度落ちただけだ。安定感のあるクソ盤面押し付けてやるぜ!

という感覚でいいだろう。

また、芝刈り系デッキでは、基本的に初動枚数×5または初動枚数×5-1をデッキ枚数の目安にすると、初動の初手存在率・期待値が理想的になる。具体的には初動10枚で49or50、初動11枚で54or55、初動12で59or60となる。(ここでまさか59枚デッキという選択肢もアリと分かったのは意外だった。が、誤差レベルの確率であることや枚数を考えると選択肢は49、50、54、60のどれかだろう。)。ただし、芝刈りデッキは、デッキ投入数2が限界の準制限カードであり、デッキ枚数が増えるほど初手存在率は下がる。名推理・モンスターゲートで補っても、芝刈り+推理orゲートの5枚体制ではなんとか3戦中1戦、フル投入の8枚体制でも、デッキ枚数を42枚以下にしなければ初手存在率67%を超えない。芝刈りだけでは後述するが存在率3割を切る始末である。つまり、芝刈りを安定して打つことは不可能、ということであり、芝刈りに頼らない構築が絶対条件となる。

②後攻の場合、初動7枚の41or42枚デッキとなる。

ただし、42枚デッキは初動の初手存在率において初動8枚の40枚デッキに負けている。安定性を考えると41枚がいいだろう。

さらに、これらのことからデッキ内の誘発の枚数も自ずと定まってくる。誘発はデッキが何枚だろうと、初手に1枚は欲しい。そうなると初手存在率が66.6…%を上回り、期待値も高い方がいい。枚数で言えば、表3・5を参照するといい。

簡単に言えば、40枚デッキなら8枚以上、41、44枚のデッキなら9枚以上ないと、3戦中2戦初手に来ることは期待できないということだ。他のデッキ枚数にする場合でも、目安は「デッキ枚数÷5」(小数点以下切り上げ)枚以上積む必要がある、ということになる。

また、ハリファイバー展開に代表されるデッキに眠っていてほしいコンボパーツに関しては、2枚積みがいい。理由は、表1を見れば分かる通り、1枚のみでは表1の確率で手札にきて腐る。だが、2枚にすると次の表の通りになる。

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この通り、確かに初手存在率は上がったが、初手2枚率=2枚とも引いてデッキ内から枯れる確率はどの枚数でも1.28%以下!実に10%以上下がるのだ。

ちなみにこの表は、先ほど触れた、隣の芝刈りをはじめとする準制限カードをドローする確率でもある。

また、先ほど初手2枚率に触れたが、初手2枚率=2枚初動デッキの安定した初動枚数もこれで類推できることになる。具体的には、2枚初動デッキの場合、投入枚数が何枚以上ならば期待値=2を超えるのか、ということだ。

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表7より、先攻を取るなら40枚デッキでは16枚で期待値2を超える=安定して2枚初動を確保できる。(なお、17枚積むなら42枚デッキ、18枚積むなら45枚デッキでも期待値2を超えた。=1枚積むたび、デッキ枚数が3枚増やせる。)

表8より、後攻を取るなら14枚投入した42枚以下のデッキならば期待値2を超えた。さらに、初手2枚率が最も高いのは41or42枚デッキの時である。

これらの枚数を見ると、ドライトロンがなぜ安定するか分かる。バンαなどの下級ドライトロン、リリースコストとなる儀式モンスター(特に弁天)、エマージェンシーサイバーの合計枚数が優に16枚を超えているからである。

よって、2枚初動のデッキを使う場合は、デッキ枚数に応じて、先攻なら16以上、後攻でも14以上、初動を積まなければならないこととなる。(ただし、同一カードを引いたり、腐る組み合わせは存在するので、構築難易度はさらに増す。)

ただし、初動をそれだけ積むということは他のカードにスロットを割くことができないということでもあり、一度盤面を崩されると立て直しにくいということでもある。2枚初動デッキはデッキ構築力とプレイングが試されることが改めて証明された。

さらに話を広げ、再度入れ替え枚数も考えよう。よくある、サイドチェンジしても引かねえ!というやつである。

サイドを使用する=残り2戦ということになる。つまり、先攻を取って相手のメタになる罠をしかける、後攻を取らされるから誘発を引いて先攻の相手に対してカウンターする、どちらになるか分からないが、最低でも2戦中1戦=50%以上の初手存在率がないと話にならないということだ。

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表9・10を参照すると、40枚デッキでは5枚、それ以上のデッキ枚数になると6枚以上投入しなければ、初手存在率50%を超えてくれない。つまり、入れ替え枚数4枚以下では、残り2戦中1戦引けるか分からないということになり、サイド対策しているとは言い難い、ということになる。そうなると、サイドデッキの構築が、環境トップ3のメタカードをそれぞれ5枚以上ずつ、被るなどでサイドに余裕があれば、さらに別のカードを追加していく、ということになる。

以上のことから、

①1枚初動の多いデッキが安定、一度崩されてもまくれる底力がある。

②デッキ枚数は先攻なら1枚初動8枚ならば40枚、9枚ならば44枚が理想的。後攻では1枚初動7枚で41枚デッキが安定する。

③40枚デッキは制限カードを引く確率がわずかに高いが、初動9枚の44枚デッキの方が安定感は高い。

④2枚初動デッキは40枚デッキでも最低、先攻では16枚、後攻では14枚の初動札を積まなければ期待値2に届かず安定しない。ただし、それだけ初動を積むと他のカードを入れるスロットを食うため、誘発や罠を入れるスロットが厳しくなる

⑤サイドチェンジをするなら5枚以上変えないと引かない可能性が高い。

と言える。

そしてこれはあくまで数学の確率論である。俺はカミ(神?紙?)に愛されてるからドライバーは引かないし制限カードだけ引けるぜ!という者は宗派が違う、としか言いようがない。数学において、確率の神を信じるか、乱数の神を信じるかというだけだ。

だからデッキ枚数について議論をしかけ、「体感」とか「俺は」というのは要するに宗派の違いを主張しているだけで、最悪宗教戦争になる。

何が言いたいかというと、「もう二度とデッキ枚数議論は致しません。すいませんでしたorz」

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