美しかったろうな。

　毎日を暮らしていくうえで、1日を棒に振ってしまうのが怖くて、最低限のやることを書き出すことにしました。
　書いておくと、いったんやるべきことが自分にしみ込むような感じがします。今日は他に郵便局へ行く、とか、フェリー乗り場の下見をしに行くこともやったから、120点満点。

　やり終えたらチェックを入れる。力強くピピっとブイをいれました。

　掃除をしていると、思わず手を止めてうっとりとしてしまうものに出会いました。

　トップ画像のアジサイのドライフラワー。祖母が華やかになればと飾ったもので、最初は中にセミの抜け殻が隠れていることに気が付きませんでした。
　祖父と家のことをしていて、飾ってあったアジサイのドライをよけて窓を拭いていると、中に茶色いかわいい足のようなものが見えた気がしました。明るい縁側に持っていって、花びらの中を覗くと、キラッと光るまん丸の目。蝉の抜け殻がこんなところにと、びっくりしました。
　それは祖母の遊び心なのか、それともアジサイとして咲いている時に、その花の中でセミが羽化したのか。
　この花はたぶん庭に咲いているアナベルだったから、白い花の中から薄い浅葱色のセミが出てくるのはまるで妖精が夜に目を覚まして伸びをしているようで、きっと美しい旅立ちだったろうなと想像してしまいました。

　こんなふうに、日々のふしぎに気付ける人になりたい。
ふしぎは不思議のままで、そこに生まれる自分の気持ちがどんなものであれ、大切にしたい。

　祖母にこのドライフラワーならぬドライインセクトの事を聞くタイミングを逃してしまったから、本当の真相はお預けですが、祖母のかわいい思いつきであっても、庭で抜け殻を探してきて、花びらの間に仕込む祖母の姿を想像すると、思わず笑みが溢れるくらい可愛らしい後継です。

　明日は何をしようかな、またチェックリストを作っています。

♩その目で　　
　　　　　ベランダ

2018年　アルバム「Anywhere You Like」

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