見出し画像

データの活用で故障を防ぐ「最新鋭の漁船」の事例|長崎県 大中型まき網船団 第五十八神陽丸

長崎県大中型まき網船団、海興水産株式会社の運搬船「第五十八神陽丸」。

同船には漁船としては最新鋭の設備となる、機関室の遠隔モニタリングシステムが搭載されています。

前回ご紹介した記事は非常に反響が大きく、多くの漁業者さまからお問い合わせを頂きました。

同社ではこのシステムによって、船のエンジンの回転数や負荷率などをデータ化し、常に値を監視しながら日々の保守管理に役立てています。

今回はこのシステムで取得されたデータを実際に活用し、トラブルの解決や故障の早期発見に導いた事例をお届けします。

異常の原因を最短で特定

ミロード(写真中央の機械)

まずは回転数の異常を発見し、その原因を最短で特定できたケースです。

神陽丸では操業中に、ブリッジに設置されたミロードでエンジンの回転数が異常な値を指し示す現象が起きました。

具体的には550回転で走行しているはずが、急に回転数が530回転と表示され、またすぐに550回転に戻ったりと、回転数の値が乱高下を繰り返しているというものです。

遠隔モニタリングシステム 画面の例※実際の数値ではありません

船のエンジンにおいては20回転差という値は非常に大きく、実際に回転数がこのような変化をしていたら、エンジン音にも少なからず変化が生じてきます。

しかし、今回のケースではエンジン音にこれといった変化は見られませんでした。

そこで遠隔モニタリングシステムで取得したデータを確認してみたところ、こちらも値の変化に大きな異常は見られません。

  • エンジン音に異常は見られない

  • ミロードで見られる値の変化をモニタリングシステムでは観測できていない

  • この現象はドッグ中には起きず、航海中のみ起こる

これらの要素をもとに、取得したデータを照らし合わせながら機関長と関係各社で議論したところ、今回のケースではエンジンに異常はないという判断に。

また症状がドック中は起きず航海中にのみ出現することから、ミロードに表示された異常値は船内にある何らかの機器の干渉によるものだろうと断定しました。

干渉の原因はこれから調査を進めていきますが、ひとまずエンジンが正常であることがわかったことで、航海時の不安は大きく解消されたことでしょう。

関係各社での打ち合わせ

機関長や関係各社が共通のデータをもとに話をした結果、今回の議論の時間はわずか15分で終了。
従来ではこのような異常が見られた場合、機関長の長年の感や各方面の知見が重なりあい、何時間もの議論が行われます。

もちろん卓上の議論だけでは解決できず、航海ごとに試行錯誤をしながら操業中も調査をしなければなりません。

同船では遠隔モニタリングシステムを導入したことで、今回のようなトラブルにおいて無数にある原因の可能性をひとつに絞ることができました。

トラブルの原因分子を発見した事例

機関日誌の例

続いては、エンジンの排気温度の変化から違和感を発見したケースです。

船の機関日誌を見ていると、エンジンの排気温度が以前よりも高くなっていることを発見しました。

  • 5月時点: エンジン回転数が560回転ほど、ラックメモリが23mm、排気温度が350℃

  • 9月時点: エンジン回転数が560回転ほど、ラックメモリが26mm、排気温度が378℃

  • 翼角は同じ

この現象をモニタリングシステムで取得したデータと照らし合わせると、同じ回転数を出した際にエンジンにかかる負担が大きくなっていることがわかります。

ドッグ時の点検

これらのデータをもとに遡って原因を検討したところ、前回ドックした時にプロペラが小さく欠けていたことを思い出し、スクリューのプロペラに原因があるのではないかと疑いました。

プロペラに傷が入ったことによって、実際の角度とデータで取れている角度の値がズレが生じている可能性が考えられます。

また過去に別の船ですが、プロペラにヘドロが引っかかったことで角度がずれて負荷をかけられなくなった事例もありました。

今回取得したデータと過去の経験から、次回はプロペラの実際の角度を調べることなっています。

今回の事案は操業に直接影響を与えたわけではありませんが、このまま気づかずに動かし続ければエンジンへの負荷は増え、いずれは重大な故障に繋がりかねない事象です。

実際に機械が突然故障することは少なく、ほとんどの場合必ず何か前触れのサインを出しています。

今回はデータの活用によって故障の原因分子をいち早く発見し、重大な故障のリスクを回避することができました。

最後に

私たちライトハウスでは、このような未来の水産海洋業界に貢献する技術開発をすすめております。
今回紹介したエンジンのモニタリングシステム以外にも、魚価の向上や操業の効率化など、情報の共有で改善できる部分は多くあります。
漁船のIoT化にご興味のある方は、お気軽にLINEまたは電話にてお問い合わせください!

※サービスに関するお問い合わせの際は、LINEにていただけるとスムーズです。水産業界にまつわる情報や採用に関する情報も配信していますので、ぜひ下のボタンよりご登録お願い致します!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?