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チーム千田@Abemaトーナメント

「お笑い好きは常に若く新しい人を求めている」
あちこちオードリーで上記の話があったが、それはお笑いに限らず将棋界も同じ。

将棋界では珍しい団体戦のAbemaトーナメント。チーム千田のメンバーは、初参戦リーダー千田翔太七段、職人肌の振り飛車党の西田拓也五段、17歳高校生棋士の藤本渚四段である。昨日放送された予選Eリーグにて、チーム千田はチーム渡辺に5勝4敗で勝利した。

千田七段はドラフト会議から一貫してエンタメ重視である。エンタメといっても遊びではなく、将棋の実力あっての魅せ方を考えられている。漫才がおもしろいから人気が出た芸人に通ずるものがある。

チーム千田はTwitter投稿数が非常に多い。そして、藤本四段を押していることがわかる。

藤本四段は2022年10月四段昇段で、現在最年少棋士。しかし、藤井七冠や伊藤六段のような将棋の鬼の雰囲気はない。むしろ緊張しやすく、対局前にお腹が痛くなるそうだ。それを言っちゃうあたり勝負師らしくなく、親近感が持てる。

また、AIを比較的使わないらしく、序盤から研究を外すような手を指す。相手の主戦場で戦わない意志が凄い。受け将棋だが、終盤の切れ味は鋭く、昨日のチーム渡辺戦で渡辺九段と佐々木八段を撃破した。強い。

藤本四段は明らかに終盤型なのに、詰将棋はあまり好きではない。そして、それを周囲に言いづらいというようなことを話していた。ここでも庶民に寄り添う共感型棋士だ。

千田七段は前々期順位戦B級1組の高順位によりリーダーになった。2022年3月9日、千田七段は順位戦の最終局に勝ったが、対戦相手の木村九段が記者に「(千田七段の昇級は)どうだった?」と聞いて昇級を逃したことを知った。木村九段が「(聞いて)ごめんね」と言ったら、千田七段は「覚悟の上ですから」と答え御辞儀した。木村九段の優しさと千田七段の格好良さが伝わって、何とも味わい深いやり取りだった。

昨日の対局のオーダーは千田七段がほぼ決めているようだった。視聴者が見たいと思えるような組み合わせを実現できるように。藤本四段を最初の方に出したのは、プレッシャーを緩和するためか。千田七段が藤本四段を気遣う姿が随所に見られた。千田七段本人も初参戦リーダーでプレッシャーを抱えているだろうに。男気を感じた。

そんな初参戦ふたりをフォローする人格者の西田五段。棋風は性格と真逆の攻撃的振り飛車。昨年のAbemaトーナメントでは佐々木八段をボコボコにしていた。昨日は決着局で佐々木ー西田戦が実現。

堅い将棋にしたい意向の佐々木八段に対し、西田五段は穴熊許さじと暴銀を繰り出した。迫りくる銀に翻弄されたのか、佐々木八段の玉が穴熊からまさかの脱出。

これ、3月のライオンで見たやつだ。

佐々木陣は守りの金が2枚。この金たちは不安定な位置にいて、ヘルメットになっているのか否かわからない。西田五段が玉頭に加えて角のラインから攻める準備をすると、佐々木八段は受けても切りが無い状態となったため攻めに活路を見い出し2二歩の桂取り。しかし西田五段はこれを無視して攻撃の手を緩めない。結果、西田五段が圧勝。昨年のトラウマが発動したかのような佐々木八段の指し手に、フィッシャーはメンタルの比重が大きいと感じさせられた一局だった。

3人とも魅力的なチーム千田でした。

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