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《脱サラ》僕の派遣型風◯起業録~助走編~

30代中盤、負債と、転職失敗の果てに

話は平成の大阪に、鮭のように遡ります。

本題に入る前に、先ずは当時の僕の状況から《恥ずかしいですがw》赤裸々に記してみましょう。

我ながら冴えない話なんですが、あの頃の僕は、もう何もかもがドン詰まりの行き止まりでした。
苦労して転職し、入社した不動産業者は、入ってみればとんでもない悪徳業者で、詳細は省きますが、インチキだらけ、ハリボテだらけの毎日ーーー。

結局2ヶ月で退職するのですが、退職のきっかけが、

《明日の早朝、この顧客のマンションのポストに投函される朝刊から、折り込み広告を抜いてこい》
※自社か他社か知りませんがその日の広告に、その顧客に見られたらはなはだマズイ内容が掲載されてしまう、ということだそうなw

・・・
という、キテレツな指示だったことは、今でもハッキリと覚えています。

《それってドアポスト?集合ポスト?ポストの施錠は?防犯カメラとかは大丈夫なんかな?》

結局、その辺りの情報は何も貰えなかったにも関わらず、何故か果敢にも挑戦を決意した僕は、早朝4時半、白い息を吐きながら指定のマンションに向かいました。

覗いた集合ポストは空で、エレベーターで昇った6階の廊下を見渡せば、家々のドアポストに突き刺さる新聞たちが見えます。

《はぁ・・・何でまたこんなことを俺が・・・》

嘆きながらも腹を決め、指定の部屋のドアポストから、朝刊を引き抜こうと試みるアホな筆者。
ただ、スルッと抜けるような感じでは全くなく《ドアポストの蓋が返しになってたわけです》結局現場で10分程も粘った挙げ句、ようやく我に返ったわけでございます→遅いw

《つーかこれって窃盗やんな?ってか、今俺が捕まったら、あの主任や社長は責任取れるんかいな?》

ちなみに、広告を抜き取れなかったことを主任に入電しても、携帯は電源さえ入っていませんでした。

《こんな犯罪まがいなこと他人にやらせといて、それを放置して普通に寝れるって、どんな感覚?w》

んで、その朝。

さすがに働く意欲が萎えて、退職を告げるべく出社した僕に、主任と社長はこう言いました。

主任「夕べ着信入ってたみたいやけど何?」

僕「あ、あそこ、ドアポストで新聞抜けなくて・・・。無理に抜いたらバレて、窃盗になるなと思いまして、指示を仰ごうと電話しました」

主任「ああ、取れんかったんや、ま、それならそれで大丈夫やから。広告見られても次の手あるし」

僕「・・・え?そっ、そうなんですか?・・・ところで主任、新聞から折り込み抜くっていうのは窃盗にはならないんですかね?」

そこで会話に入ってくる社長。

社長「おいおい、広告抜くくらいでそんな弱気なこと言うてたら、うちの仕事は勤まらんで?自分、訪販出身の割には荒くたいことでけへんねんな。ビビりなんか?」

それは、羽毛布団の訪販出身で《トップセールスだったこともある》ブラック企業上等の僕でさえ、ちょっとついていけないようなノリでした。
業務の内容が《完全アウト》のオンパレードであることもさることながら、やらせる側とやる側双方に、全く血が通っていないのです。

やらせる側は手足として下を扱い、下がどうなろうと他人事だし、やらされる側はこの仕事の《金儲けの》ノウハウと、人脈を掌握するまでの数年間、どんなにアウトな行為でも淡々とこなすだけーーー。

要はそこにあるのは人間関係ではなく、極めてドライなWin-Winの関係のみでした。
そして何より、毎日業務としてアウトなことを繰り返している内に、彼らはもう救いようもなく、罪悪感が麻痺していたのです。

《こんな無法地帯におったら、そのうち前科つく羽目になるわ》

訪販の営業《僕の在籍していた企業》は確かに離職率8割超でしたが、あくまで訪販法の中で仕事をするし、何より、チームワークや師弟愛、男気や人間味がある環境でした。
同じくしんどい業務にあたるにしても、ルールの中で人と支え合いながらするのと、違法な内容を殺伐とした中でするのは、全く意味が異なります。

業務内容を知ってしまっていたので、すんなり退職できるか、きちんと給与が日割りで出るか心配でしたが《社長の周囲にややこしいのも居たし》嫌味は言われつつも無事、即日退職し、僕は晴れて自由の身になりました。
ただ、そこで知り合った顧客についつい親睦を深めてしまった方が1名おりまして、一応、挨拶の電話を入れることにしたのです。

僕《あ、山田さん、斗月です。実は会社を辞めまして。短い間でしたけど御世話になりました》

山田《あ、そうなん?まぁ、怪しい会社やもんな、良かったやん!ところでホラ、この前話してた副業の件、無職になったんなら一緒にやりません?》

山田さん《仮名》は学習塾の経営者で既婚者ですが、裏の顔を持っていました。

地方、中央問わず、毎日馬券を買い続ける競馬狂。

当時の彼は消費者金融に限度額一杯の負債を抱えており、その高金利の借金を何とかする為に副業を始めたいとのことで、僕は自分の友人《高校の同級生》が、いわゆる派遣型◯俗《デリ◯ル》を運営していたことから、開業が意外なほど簡単なことを、つい教えてしまったのでした。

山田《開業に必要なものは聞いて下さいました?》 
僕《ああ、聞いときましたよ》
山田《良かったら、明日でも昼飯どうですか?僕、今日馬券取ったんで、奢りますわ》

パチスロと負債と彼女と

ちなみに、山田さんの負債は300万円ほどあったようでしたが、実のところ当時の僕は、彼と目くそ鼻くその状況だったのです。

ア◯ム、武◯士、ラ◯フ、プロ◯ス、4社から計200万円の負債。

それらは全て、4号機のパチスロ《北斗、吉宗等》にどっぷりとハマりこみ、僅か2年ほどでこしらえた借金でした。
そして罪深いことに、週末のパチ屋には当時付き合って10年の彼女も必ず同行しており、看護師の彼女は600万円あった貯金を、僅か2年で《0》にしてしまったんだそうです。
《別れて随分してから偶然会い、聞いた話しです。ちなみにその際、現状1000万円貯金があると言っていました。看護師恐るべし!》

典型的な、養分・中毒カップルーーー。

長きに渡り交際する中で、僕らは何度か結婚について話し合いました。
ただ、僕が強く結婚を望んだ時、彼女は《仕事が楽しいから》とそれを拒否し、彼女が結婚を意識し始めた時、僕は転職を繰り返し、なかなか腰が落ち着かない不安定モードに居たのです。
長すぎた春を諦め、お互い、何度も別れようと試みました。でも結局、週末、連れだって行くパチンコ屋で現実逃避をし、その一喜一憂の中で、時間だけが流れてゆき・・・。

《転職続きだし、利息を入れ続けるだけで精一杯なこの状況。先のない俺の人生にこれ以上彼女を巻き込めない。一刻も早く、別れてあげないと!》

そうして意を決して突き放しても、結局は我慢できずに連絡をよこす彼女を無視できず、またパチスロ行きwww

今にして思えば、あの頃の僕は人生で最も捨て鉢でした。奮起、再起する気持ちはあれど、それでも仕事は続かず、負債はもうどうにもならず、スロットはやめられず。
 
《もうどうなってもえーわ。山田さんとデリ◯ル、一緒にやったろ!》

半ば自暴自棄な精神状態で、僕は決意を固めました。そのやけくそな決断が自分に、果たしてどんな流れを生むのかーーー。

その時の僕は、全く想像できていなかったのです。

《続く》

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