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『紙猫』紹介 その3

『紙猫』誌紹介の続きです。
前回から、ずいぶん日にちが空いてしまいました。

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さも仔細ありげにひかり仔猫の目   蔵田ひろし

何人かのメンバーが誌面で触れているように、「仔猫句会」という名前の由来は、句会に出された句の「仔細」と「仔猫」の読み違えからきています。この句はその由来を詠みこんだもの。同時に「一句は猫の句を入れる」というしばりにも対応しています。一般に猫の目は仔細ありげに見えるものですが、純真な印象である仔猫の目さえもそうだ、という点が面白いと思います。

仔猫句会の前身のような吟行句会が、かつてありました。蔵田ひろしさんはその幹事をずっとしてくださっていました。そのときは吟行地のみならず、句会場や食事の手配もあったため、毎回大変だったと思います。

同じ会場で継続して行う句会でも幹事は大変なのですが、吟行の幹事はさらに負荷が高いです。仔猫句会は、いろいろあって、途中から幹事持ち回りになりました。そしてコロナ時代を経て、夏雲システムも併用し、なるべく無理なく省力化して行っています。


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たんぽぽの何も考へてない黄色  小寺美紀

俳句で断定的な表現が使われているとき、却って逆の意味をイメージさせることがあります。この句も素朴な花であるたんぽぽの、明るい黄色を「何も考えていない」と言っていますが、そう書くことで、本当にそうだろうか、と思わせるところがあります。

小寺美紀さんは「円虹」所属。仔猫句会では珍しいホトトギス系です。東京在住メンバーですが、ご家族が関西にお住まいで、都合があうときにリアル吟行に参加されています。2018年10月の園部町の秋祭の吟行では、美紀さんのご家族にたいへんお世話になりました。


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ゆりかごも呪術の品も藁仕事  小林かんな

これは、万博公園内にある国立民族学博物館(みんぱく)に行ったときの句だと思います。呪術の品も確かにいろいろあり、興味深かったです。ゆりかごがあったかどうかは覚えていないのですが、どことなく「ゆりかごから墓場まで」というような言葉も連想されて、あらゆる民族の雑多な品が展示されているみんぱくの雰囲気がよく伝わります。みんぱくは関西の人にはよく知られている場所だと思います。他の地域の人にも大阪を訪れた際の吟行場所としてオススメします。

小林かんなさんとは、確か私が関西に来てすぐに知り合ったので、ずいぶん長い付き合いです。仔猫句会だけではなく、「ユプシロン」でもお世話になっています。スイッチが入ると熱のこもった句評を聞かせてくれます。長い付き合いでもちょっと謎めいたところを感じる、かんなさんです。

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次回につづきます(不定期)

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