人間がラクしたがるのは、原子レベルで当たり前
「易きに流れる」という言葉がある。
ラクで容易な方へ流れるという意味の格言。正式には、「水は低きに流れ、人は易きに流れる」らしい。中国の思想家である、孟子の言葉。
僕も、この言葉に実感ありまくりだ。まず、研究に対する姿勢がそうなっている。
研究をする時に、「いかにラクをできるか」と常日頃から考えている。できればやった方がいいと言われても、絶対に必要でなければやりたくない。必要最低限の労力で問題を突破することに、全力を注いでいる。指導教員にこのことを伝えると、間違いなく怒られるだろう。
また、研究以外のことについても当てはまる。
運動や食事改善といった、労力がかかるけどやった方がいいことは、基本的には続かない。筋トレするよりもクッションの上でゴロゴロしたいし、スイーツやお菓子をついつい食べたくなる。
やった方がいいことリストをこなそうとしても、3日後(続いても1週間後)にはもうすっかり忘れてしまっている。
孟子さん、あなたのおっしゃる通りです。できれば楽をして生きていきたいです。そのことに集中して、僕は毎日生きてますよ。
そして、ここからが本題。前置きが長いのはいつものことですが、今回はこの「易きに流れる」現象を物理学の観点から考えました。
結論としては、原子も「易きに流れる」から、人間がそうなるのは当たり前のことでしょ、というもの。
それを説明しましょう。科学に詳しくない読者を、明後日の方向に飛ばさないように頑張るぞ。
まず原子について。
原子は、物質を構成する粒子のこと。人間も、原子が集まってできています。酸素原子とか炭素原子とか。原子は、直径約0.1ナノメートルという超小さいスケールの世界。当たり前ですが、肉眼では見えません。
すごーい小さいミクロな原子は、こんな感じになってるんですね。マーベル映画の「アントマン」も、このミクロな世界に行ってましたね。
原子は、さらに原子核と電子に分けられます。上の図で言うところの原子の中心に位置しているのが原子核(陽子+中性子からできている)で、その周りを円軌道で回っているのが電子です。
実のところ、電子は原子核の周りを雲のように広がっているのですが、イメージが掴みやすいので上の写真のように、ぐるぐると原子核の周りを回っていると思っていただければ大丈夫です。
言いたいことは要するに、この原子がすべての物質の構成要素になっているということです。原子はレゴブロックみたいなもの。色んな種類の原子が組み合わさって、種々多様な物資が出来上がっているわけです。
もうこの辺りで読者の7割(もっと?)は離れていったかもしれませんが、もう少し先に話を進ませてください。
この原子についてですが、エネルギーを持っています。原子力発電は、この原子のエルギーを使って、電力を生み出しているんですね。
そしてエネルギーが低い状態は、安定している状態です。逆に、エネルギーが高い状態は不安定。たまに言いますよね、「この課題やるの、エネルギーいるわー」って。(もしかして、この表現使っているの僕の周りだけ?)
そしてそのエネルギーが最も低い状態を、|基底《きてい》状態と呼びます。名前は忘れてください。どうでもいいです。僕も「こんな難しい名前つけやがって」と、思っていますから。
とりあえず基底状態とは、原子のエネルギーが最小値をとる、最も安定している状態だと覚えていただければ、問題ないです。
そして、その基底状態よりも高いエネルギーの状態を、|励起《れいき》状態と呼びます。
この用語が登場したところで、さらに読者が離れていっただろう。ここまでたどり着いた方は、好奇心旺盛で忍耐力もすごいと思う。物理の知識が全くない状態で自分がこの記事を読んでいたら、とっくに離れているだろう。
文字だけだと全然イメージできないと思うでの、ネットから図をお借りして説明します。
K、Lと書かれているのは、K殻、L殻のこと。高校の化学で習うやつです。玉ねぎの皮みたいに、K殻→L殻→M殻→N殻→…と電子殻が続いていきます。
この電子殻に、電子が収容されています。この電子殻とよばれる円軌道に沿って、電子が動いているんですね。一番最初に載せた写真みたいに、原子核の周りをぐるぐる回っています。
そして原子核から離れていく、つまり原子核から遠い電子殻にいくほど、電子のエネルギーは大きくなり、不安定になります。(この理由については、省略します!もう全部説明していたら、キリない!)
ようするに、電子がK殻にいればエネルギーが最小だったけど、L殻に行ったのでエネルギーが高くなったのです。あのこざかしい専門用語を使うと、基底状態から励起状態に行ったと表現されます。
励起状態にさせるには、外部からエネルギーを加える必要があります。やる気が出ない人に、はっぱをかけるみたいにね。
で、ここからがポイント。そして一番伝えたいこと。
それは、この励起状態は、すぐにまた基底状態に戻ってしまうということです。光を放出してね。外部からエネルギーを与え続けてないと、励起状態は保てないんです。
原子はエネルギーが低い方へと、必ず戻りたがるのです。そうするほうが、安定してラクになれるから。
まさに、「易きに流れる」じゃん!
原子もラクな方へ、ラクな方へ行きたがってるじゃん!
人間を構成している無数の原子たちが易きに流れるんだから、人間がラクな方へと行きたがるのも当たり前なのでは?
こうしてまた、サボり癖を肯定する理由を見つけてしまったのであった。ありがとう物理学。
よし、この記事を書くのにも結構エネルギー必要だったから、この後ゴロゴロするぞー。
■似たような記事
人間を原子に見たてて、人間関係のちょうどいい距離感について考察した記事。
この記事でも、エネルギーが最低になるところが一番安定するという性質を使って議論しています。その時の距離が、現実で実現している原子間の距離になります。
今回の記事と、かなり内容が近い記事。量子力学の不確定性原理を使った、ゴリゴリの理系記事です。数式アレルギーで、じんましん出ると思います。
■こいつキモいと思われた方への記事
物理学科には、変な人が多いです。僕はまともな方だと、自分で思っていますが。本当のところは、どうなんだろう?とりあえず気をつけておこう。
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