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面白い文章を書くのが一番むずかしい

一度だけお笑いライブに行ったことがある。高校生のとき。兄と。

大阪にある、なんばグランド花月に。漫才を一回でもいいから、生で見てみたかった。毎年、M-1を家族と一緒にテレビで見るぐらい、お笑いは生活の中に浸透していたけど、ライブに行ったことはなかった。


僕が行った公演日では、有名どころでいうと笑い飯、天竺鼠、アジアンが出ていた。

腹がよじれるかと思った。世の中にはこんな面白い人たちがいるのかと思った。生で見る漫才はテレビで見るそれと、面白さが何倍も違う。会場が笑いで揺れていた。

天竺鼠のネタが「右肩が主役になる」みたいな話で、よく考えれば意味が全然わからないんだけど、ボケとツッコミのかけ合いがうますぎて、笑いすぎで涙が出ていた。


芸人の知り合いがいるわけでもないから、芸人の世界がどんなものかは知らない。だから、憶測でしか話ができないけど、昔からひとつ疑問に思っていたことがあって、それは「売れてない芸人でもモテるのはなんでだろう」ということ。

売れていない芸人の月収は、数万円みたいなことを耳にする。M-1の決勝に出るような芸人でも有名になる前は、「お笑いだけでは生活できないから、バイトをして食い繋いでいる」みたいなことを、アナザーストーリーで語っていたりする。

けれど、その売れていない芸人にも綺麗な奥さんがいたりして、「芸人はモテるんだなぁ」と思うわけだ。もちろん、経済力だけでは決まらないし、綺麗な奥さんと結婚したからいい、ということでもない。ただ、「売れていようが売れてなかろうが芸人はモテる」という印象を僕は持っている、ということを言いたかった。


このライブを初めて見たとき、冒頭で述べた疑問が確信に変わった。

これはモテるわ。

だって面白くて、人としての魅力が溢れているもん。まだテレビに露出していない芸人たちも、めちゃくちゃ面白かった。売れるのはその中のほんの一握りだから、売れっ子芸人はありえないぐらいお笑いのセンスがあるということも分かった。


お笑い番組を見ながら笑っていると、さっきまで感じていた悩みや暗いことが、どうでもいいぐらいに思えてくることがある。笑いは心に余裕を持たせてくれる。

その笑いを提供できる人たちだから、それはモテて当たり前だよなって思った。頭が良くないと、人を笑わすことはできないし。


文章を使って読者に起こさせる感情の中で、「笑いが一番むずかしい」ということを、何かの本で目にしたことがある。

僕もこれに納得する。笑わせようと思って書く文章は失敗しやすい。「笑わせてやる」という気持ちが先走って、空回りしやすい。

そもそも文字だけで人を笑わすというのは、あきらかに高等な技術とセンスを要するものだ。

面白い文章をかける人は、本当に才能があると思う。



僕はトークも下手だし、面白い文章も書けない。

ので、モテない。


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