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【予習記事】ジェンダー単元|男女賃金格差問題について

課題図書

「現実はいつも対話から生まれるー社会構成主義入門」
 ケネス・ガーゲン メアリー・ガーゲン 著

問題1

日本における男女間賃金格差問題について現状を把握し、自分なりの考察をしてみる

(参考情報)
2022年の日本の男女賃金格差は21.3%(OECD平均は12.1%)
https://www.oecd.org/tokyo/statistics/gender-wage-gap-japanese-version.htm

アメリカの男女間賃金格差https://www.jil.go.jp/foreign/jihou/2024/04/usa_01.html



課題に取り組む前、家事育児に従事し、パート・アルバイトをしている、または就労していない専業主婦の存在が男女賃金の格差としてデータに表れていると考えていた。

しかし、この2つのデータはフルタイムの労働者を対象としているため、純粋に労働市場における男女間の賃金格差を比較している。

■データから分かること
・OECDの男女間賃金格差 (Gender wage gap)
男女賃金格差がOECD平均で12.1%で、日本は21.3%で下位に位置している。

・アメリカの男女間賃金格差
アメリカのフルタイム労働者の賃金の中央値を見ると、2022年では女性は男性の84.0%で、年々上昇している。

しかし、人種別に見るとアジア人女性は白人男性とほぼ同水準だが、白人女性、ヒスパニック系女性、黒人女性は約6~8割の賃金と開きが見られる。

年間給与額ランク別人数と男女比のデータでは、
女性の年間給与の中央値は男性より1~2ランク低い区分に含まれる結果となっている。

また、同じ人種・民族で比較した場合も、女性の給与の中央値を含むランクは、男性よりも低い。産業・職種別、地域別に見た集計では、産業別では「宿泊施設・食品サービス」、職種別では「サービス職」及び「事務支援職」、州別ではハワイ州を除き、女性のランクが男性のランクより低い結果となっている。

■気付いたこと、思ったこと
・人種別のデータを見ると、白人男性とアジア人女性の賃金差はほぼない。一概に全体で女性は男性の84.0%の賃金差というと、人種別に異なる格差問題の実情が見えにくくなる。
・白人男性と、アジア人女性・白人女性・ヒスパニック系女性・黒人女性をそれぞれ比較していたことに違和感があった。同じ人種での比較を載せるのではなく、白人の男性と様々な人種の女性と比較することで、人種の賃金格差を男女賃金格差の結果に反映させ、格差を大きく見せているように思えた。
・最初は、男性の方が残業時間が長い可能性や、女性のほうが賃金が低い職業や業種に就いている可能性を考慮して、男女の賃金の差は格差と言えるのか?と疑問に思っていた。
しかし、実際に参考情報を読み込み、同じ職務で男女の賃金に差がある現状をようやく認識した。

問題2

男女間賃金格差問題について考えるとき、Aの問いで考える場合と、Bの問いで考える場合で、どのような違いが生まれるか/生まれないかについて考えてみる

A「なぜ女性の賃金は男性より低いのか」
B「格差を説明するために、どのように優劣を可視化し、論理化しようとしてきたか」


AとBの解釈について

AとBの問いの姿勢は対照的で、
Aは客観化な意見が統合された一般論、Bは何かの視点に立って論理が構築された社会構成主義を明らかにする方法、つまり何らかの私見に立ち男女格差問題について問われているのではないかとチームで考えました。

A「なぜ女性の賃金は男性より低いのか」

一般的に、「男性が外で働き、女性が家事をすべき」という社会規範とその歴史により、昇進の機会や賃金の決定などにおいて女性は過小評価され、
女性の賃金は男性より低い結果になっていると考えられる。

自分では一般化が難しく、これでしっくりこなかったので、2023年にノーベル賞を受賞したクラウディン・ゴールディンさんの説明をお借りします。

Popular science background: History helps us understand gender differences in the labour market (pdf)
Scientific background to the Sveriges Riksbank Prize in Economic Sciences in Memory of Alfred Nobel 2023 (pdf)

Claudia Goldin
Harvard University, Cambridge, MA, USA
“for having advanced our understanding of women’s labour market outcomes”

(この内容を雑にまとめました)

◇概要
女性は、農業や家族経営の仕事、織物などの家内工業など家事労働以外の労働をしていたはずだが、公式な文書で女性の職業として"wife"が使われており、あまり正確に仕事が記録されていなかった。
そこで、ゴールディンさんは新たなデータベースを作成し調査することで、女性の労働市場への参加のデータを収集することに成功した。

産業化以前の19世紀では女性の方が労働力に寄与していた可能性が高い。しかし、工業化が進み工場と家での仕事の両立が難しかったことから、女性全体の労働の割合は下がった。とはいっても、未婚の女性の40%は労働に従事していた。

18世紀末期からの200年の間の期間を分析すると、アメリカの女性の労働参加はUの字のカーブで表せることが分かった。

Illustration: The U-shaped curve
© Johan Jarnestad/The Royal Swedish Academy of Sciences


また、女性の産業への進出と社会全体の経済状況に相関があると長らく言われてきたが、実際に相関はないことが分かった。

◇歴史的な経緯と問題点
問題点:法律規制や社会的スティグマ、結婚、女性への期待

⊕需要UP:技術の進歩、サービス部門の成長、教育水準の向上が、女性労働に対する需要の増加をもたらしたことを示した。
⊖法律規制:marriage bar
 女性が教師やオフィスワーカーとしての従事することを妨げる法律
⊖20世紀の女性は、子育て後に再就労するとは思っていなかった
(教育などのギャップ)
⊕ピルの発明により、女性の教育やキャリアの計画が立てやすくなり、1970年代頃賃金格差はかなり改善されたが、問題は完全に解決されることはなかった
⊖女性への期待>自由な職業選択
 20世紀では、女性は結婚の前に数年働き、結婚のタイミングで労働市場から退出されるように期待されていた
⊖労働の単位が出来高払いの仕事から月払いなどの長期契約ベースの雇用に移行したことで、雇用主がキャリアが安定した男性を採用することをを好むようになった

◇まとめ
社会の発展の経過において、その時々の様々な要素の影響を受け、男女の労働格差が形作られる。労働格差が見られる理由として、女性が家庭への責任
や結婚により人生における選択が制限されてきたことが説明された。


B「格差を説明するために、どのように優劣を可視化し、論理化しようとしてきたか」

チームミーティングではふわっと解釈していたのですが、「男女の優劣を可視化・論理化することで格差を説明する」ということ、特に、男女の優劣を可視化・論理化されているケースが思いつかず、分からなくなりました。

引き続き、深めていこうと思います。





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