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函館市 戸井地区の現状と課題 ①

 函館市東部4地区、平成の大合併で2004年12月1日に函館へ編入された戸井町、恵山町、椴法華村、南茅部町の旧4町村のことである。

 東部4地区は市内の中でも高齢化、人口減少が輪をかけて著しい。しかし、豊富な観光資源があり、最近では観光客もコロナ禍以前と同じように戻ってきたなんて話を聞く。

 恵山地区であれば恵山が活火山として古くから有名で登山道もあり、5月には恵山つづじ祭りが開催されている。宿泊施設として恵山温泉旅館、石田温泉がある。他にも テントサイトが利用できる道の駅なとわ・えさん があり、こちらは最近では毎月のイベントやドローン空撮など観光客が楽しめる取り組みを行っている。

 椴法華地区は他の4地区よりも小さな地区だが、宿泊施設としてホテル恵風があり、その向かいには恵山岬灯台と公園、更に恵風側から降って行くと干潮時に現れる水無海浜温泉がある。他にも同地区には銚子サーフビーチがあり、サーフィンの大会も開催されている。

 南茅部地区は他の地区よりも観光資源が豊富だ。同地区の縄文遺跡を含む北海道・北東北縄文遺跡群は世界文化遺産に登録されており、道の駅 縄文ロマン 南かやべ もある。宿泊施設としてもホテル函館ひろめ荘、川汲温泉旅館、二本柳旅館がある。同地区にて6月に開催される南かやべひろめ舟祭りは活気があって盛り上がりを見せる。

 そんな中、戸井地区には特に目立ったものがない。有名なのは汐首灯台、その近くにある旧戸井線アーチ橋だが、景観を眺めることはできても立ち入り禁止のため、当然登ることはできない。注意事項を記した看板も設置されている。

旧戸井線アーチ橋
近隣の民家裏にある階段は災害時非常階段であり、
私有地のため、侵入禁止である。 
汐首灯台
海上保安庁が管理しており、立ち入り禁止。
通路にはマムシの出没も多いらしい。


 同地区には函館市住宅都市施設公社が指定管理者の戸井ウォーターパークという温泉保養施設兼オートキャンプ場があるが、観光名所とは呼べないだろう。戸井ウォーターパーク以外では戸井憩いの丘公園(武井の島展望台)という場所もあるのだが、ヒグマ出没 の看板が設置されており、恐怖感があって個人的にはおすすめできない。

 そんな中、平成29年度(2017年)に戸井地区は南茅部や恵山と比べて目立つ名所が少ないのが課題として地域資源を観光地化して訪れる観光客を増やそうと函館市戸井支所が中心となり、PR事業として200万円をかけて釜谷地区にある山、通称 釜谷富士 の展望施設を海岸側に新設、汐首岬の北海道・本州最短地点の看板もリニューアルした。

 そして、完成したの釜谷富士展望施設がこちらである。


忽然と現れたベンチとテーブル。
6人がけできるらしい。
コアな層には堪らないのかもしれない。

  ……何とも物寂しい雰囲気のこちらが観光・鑑賞スポットという位置付けで設置されたものである。外観は屋根はなく、テーブルとベンチ、説明を記した案内看板のみ……それだけである。
 さて、肝心の展望施設から釜谷富士への眺めだが──。

景観はあまり良くない。



 民家や電線により、そこまで眺めが良いとは思えなかった。他にも函館市のホームページではこちらの紹介で振り向くと津軽海峡を一望できると記載しているが、雑草が背丈近くまで生い茂っており、こちらもあまり良いとは言えなかった。草刈りなどの管理はあまりしていないのだろう。
 正直言って がっかりスポット である。

生い茂った雑草。津軽海峡を一望とは言い難い。

 釜谷富士を眺めるだけなら釜谷漁港東側からの方が断然景観が良いと個人的に思う。こちらからであれば汐首側と津軽海峡を眺めることもできる。
 まあ、釜谷富士に関してはバイパス側から見てもそんなに変わらないのであるが。

釜谷漁港東側
釜谷富士
汐首側と津軽海峡

 とはいえ、漁港のため、漁業関係者への配慮を大事にすることを忘れてはいけない。漁港内では水揚げされた水産物の搬入・搬出作業などを行っているため、邪魔にならないようにするのがマナーである。 

 さて、釜谷富士から話は変わるが、リニューアルした汐首岬にある北海道・本州最短地点の看板はこちらである。

縦1.5m、横4mらしい。
距離のみで解説するような説明文は特にない。

 風化していたので頑丈にした感は伝わってくるが、特に何か説明を記したものはなかった。
 また、直ぐ近くにはかつて鰯漁で使用されていた朽ちた袋澗があり、函館市のホームページでは説明文が掲載されているが、こちらも現地には特に何か説明を記したものはなかった。
 尚、駐車に関しては5台程駐車できそうなスペースがある。なぜかソーシャルディスタンスの掲示が外されず、そのままあるが。
 ちなみにこちらから津軽海峡を眺めるよりも汐首灯台バス停(函館駅前行)がある海岸側からの方が眺めは良いと思う。


かつて鰯漁で使用されていた袋澗
駐車スペース
ソーシャルディスタンスの掲示はそのままになっている


汐首灯台バス停(函館駅前行)側からの津軽海峡。
撮影日が別日のため、曇っているが一望できる。


 今回、戸井地区の地域資源観光地化として函館市戸井支所が取り組んだ事業を紹介したが残念ながらPRとしては成果が乏しいと思う。
 特に釜谷富士展望施設に関しては何のために設置されたのか地元の人もよくわかっていないらしい。実際に尋ねても、
「年寄り多くて足腰悪い人いるからそれで作ったんじゃないの?」
という回答ばかりで観光としての利用とは思っていないようだ。
 そもそも観光客は海岸側道路ではなく、車やバイク、またはロードバイクなどでバイパス側の道路の利用率の方が高い。つまり、こちらに立ち寄ることは少ない。
 バスに関しては函館バス恵山行91系統の乗車率が低いし、それ以前にわざわぞここに降りてまで見たいものではないというのが率直な感想だと思う。


 はっきり言って意味のないオブジェである。

 函館市戸井支所はこれを観光資源に活用できると本当に思っていたのか疑問である。観光活用を行いたいのであれば他の東部地区支所のように広報用のSNSアカウントを開設すべきである。戸井支所に関しては東部地区で唯一アカウントが存在しないので先ずはその取り組みから始めるべきだろう。

 

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