食べさせてあげたいもの

 わたしは韓国料理、特にチゲが好きで、自分で作ることもしばしばある。
 本場のチゲの味は知らないので、あくまで自分好みの味付けなのだけれど、なかなかおいしくできていると思う。

 パートナーと同居を始めたばかりの頃、夕飯に自作キムチチゲを出したことがある。

 パートナーは、「おいしい」と言いながら食べているし、箸も進んでいるのだけど、いまいち反応が薄い。
 わたしとしては申し分ない出来だったが、他人からすればそうでもないのかもしれないと思っていた。

 しかし翌日、味噌汁を作ったときのこと。
 冷蔵庫に食材がとぼしくて、具の代わりにかつお節と海苔を大量に入れた。
 わたしとしては、ちょっと出汁の風味が強すぎるような味噌汁で、まあ食べられなくもないか、というものだった。

 だが、パートナーはそれを、「すごくおいしい」と言ってくれた。
 前日のキムチチゲより、おいしそうに食べてくれる。

 理由をきいてみれば単純で、
 パートナーは、かつお出汁が効いた和食が好きだった。

 当たり前だけど、味の好みは皆違う。
 でもわたしは、自分がおいしいと思うものは相手もおいしいと思うと決めてかかっていた。

 食べさせてあげたいものが、「おいしいと思うもの」から「おいしいと思ってもらえるもの」に変わったときの話です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?