母乳はいつまで?(口育て)

息子を保育園にはじめて預けたのが、1歳3か月の頃、当時はまだ母乳育児をしていた。
慣らし保育(入園後、環境の変化に少しずつ慣れさせるために、短時間から保育を開始する。食事が食べられる、昼寝ができる、など少しずつ保育時間を伸ばす。子どもや保護者の就労状況にもよるが、2週間程度で1日保育に移行することが多い)で、早めのお迎えに行くと、息子はきまって母のおっぱいめがけてやってきた。担任の先生に「おっぱいはいつまで?」と尋ねられた。

本人が欲しがれば欲しがるだけあげればいいかな、とあまり深くは考えていなかった。何よりも息子はおっぱいが大好きで、おっぱいを求めてやってくる。そして授乳時間は睡眠時間が削られようが、母親として幸せな時間だったのだ。

オキシトシン
・乳汁分泌を促進するホルモン
・子宮の収縮(母体の回復)を促進する
・赤ちゃんが乳首を吸う刺激(吸啜刺激)により分泌が促進される
・母親に恍惚感、幸福感を与える

元々、母親願望が強かったこともあり、既に母親となった嬉しさでいっぱいなところに、オキシトシンが加わるので、その幸福感は半端なかった。そしてその感覚に一種の依存状態になっていたのかもしれない。
産後はホルモンバランスが乱れ、睡眠時間も削られるので、まだまだ心身ともに大変な時期だ。ちょっとしたことにイライラして、話しかけてほしくない、(イライラの矛先はほとんどが夫)そういう時に、息子におっぱいをあげることで、自分ではどうにもできないストレス状態の心を癒してもらっていた。母親の機嫌を察知して泣いておっぱいを要求していたのかもしれない。子どもが欲しがっていたというより、私があげたい気持ちの方が強かった。
今、こうやって、当時の自分の行動や気持ちを言葉にしてみると、あらまぁ随分しんどかったのね、私は息子を使ってなんてことをしていたのだろうかと、複雑な気持ちになる。

話しを元に戻して、担任の先生から尋ねられたことで、先送りにしていた「おっぱい卒業」が一気に自分事になった。
子どもが欲しがるのに無理して止めさせることはない。時期がくれば自然に終わるだろうと思っていたが、質問されるということは、「卒乳・断乳のススメ」だろうと、勘繰ってしまい、「1歳半くらいかなと思っています」と答えた。(謎の正解を言わなきゃスイッチが発動していた)

先生は「いろいろな考え方があるけどね」と前置きをしたうえで、次のようなことを話してくださった。

・おっぱいからの栄養は、食事からとる栄養にかわっていること。

・自分の足で歩くようになって、こころもからだも言葉もどんどん発達し、
 新しい世界が広がっていること。

・ママと子どものコミュニケーションは、おっぱいを通したものから、
 言葉を使ったコミュニケーションに変わっていくこと。

乳を吸う口から、しっかりと食べ物を咀嚼して食べる口、言葉を獲得して話す口に発達して変わっていくということ。そして今まさに、どんどん発達しているのだから、その発達を後押しするためにも、おっぱいは卒業したほうがいいと思う、という考えだった。

腑落ち出来たら、気持ちの切り替えは比較的早い私なので、早速その週末から断乳することにした。

「今までおっぱいたくさん飲んで大きくなってくれてありがとうね」
「大丈夫、大丈夫、楽しい世界がどんどん広がっているよ、嬉しいね」
子どもに声かけあやしながら、自分にも言い聞かせながらのスタート。
泣いたり怒ったりが2~3日、食事の量が増えだして、5日目には一晩ぐっすり眠った。
その翌週、高熱にかかり機嫌も悪くなったけれど、おっぱいに戻ることはなかった。

こうやって、一人目の授乳は幕を閉じたのだが、あの時、声をかけてもらったことが、私たち親子にとって大きな転機だったと思う。そして最初は大変でも断乳してからのメリットの方が大きかったので、そのきっかけをくれた先生にとても感謝している。
そういうこともあって、おっぱい卒業の時期を決めかねているお母さんがいると、情報提供のひとつとして、この話をしている。
あくまでも成功例のひとつ、そんなにスムーズにいかないことだってたくさんある。だから押しつけや強要にならないように、お母さんの気持ちをまずは尊重したうえで、専門職としてきちんと情報を伝えてあげることは大切だなと思う。

赤ちゃんと大人では口の構造に違いがある。赤ちゃんのイラストは丸い輪郭に目は真ん中ぐらい、おでこが広く目から下の方が小さい。幼児になると顔の形も縦長の楕円になり、目の位置は上方に移動する。これは口腔の容積が大きくなっていることを示していて、哺乳に適した狭い口腔容積から、離乳初期から後期に向けて、口腔容積が広くなって、噛んだり、唾液と混ぜ、口の中でまとめるなど、食物の移動がされやすくなる。

山崎 祥子 「じょうずにたべる たべさせる」芽ばえ社 


赤ちゃんは口腔容積が狭い



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?