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じいちゃんとバルタン星人とお酒

ねぇ、じいちゃん、私は小学生の時、じいちゃんはバルタン星人と友達だと本気で信じてたよ。


​夏休み、冬休みになると必ず、じいちゃんばあちゃんの家に泊まりに行っていた。じいちゃんと工作をしたり、公園に行ったり、ばあちゃんが作るコロッケを食べたり、たくさんの思い出ができた。中でも、じいちゃんとの工作は、バルタン星人とじいちゃんが友達であると信じるきっかけになった・・・


私の兄は、ウルトラマンが好きだった。ある年の夏休み、兄はバルタン星人と通信ができるように、リビングからじいちゃんの部屋にかけて有線wi-fiのように回線を引こうと言い出した。(なぜ、ウルトラマンではなくバルタン星人になったのか理由はわからない)
材料はラップを使い終わった後の残った芯と荷造りの際に使うビニール紐、セロハンテープ。リビングからじいちゃんの部屋につながる壁は、ビニールの紐だらけとなり、いかにも通信ができそうな感じに仕上がった。

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回線が完成し、その夜、晩御飯を食べた後、じいちゃんだけすぐに自分の部屋に行き、次の日の朝までリビングに戻ることはなかった。

次の日の朝、じいちゃんに
「なんで夕飯食べたら、すぐに部屋に行ってるの?」
と私が聞くと、じいちゃんが
「バルタン星人と通信してたんだよ」
と答えた。
私はそれを聞いて、本当にバルタン星人と通信できたんだと感激してしまった。それ以降、毎朝毎朝、じいちゃんに昨日の夜はバルタン星人と通信できたかどうか確認した。何度も何度も、通信が成功したことを確認していたため、私は、じいちゃんはバルタン星人と友達なんだと信じ込んだ。



それから約20年経ち、今振り返ると、じいちゃんはお酒が好きで毎晩飲んでいた。その度に酔ってしまい、自分の部屋で寝て、酔いを覚ましていたのかもしれない。あの時、じいちゃんは正直に私に「お酒で酔って寝ていたんだよ」と言えず、バルタン星人を口実に利用したのかもしれない。


じいちゃんばあちゃんはもうこの世にいなくて、真意を確かめることはできない。でも、じいちゃんばあちゃんの家に行くとその回線がまだ残っていて、バルタン星人と通信できるかなと思ってしまう。

「じいちゃんとバルタン星人が友達」と信じたことは、今でも、寝ているときの夢にまで出てくる。それくらい信じたことだった。

じいちゃんばあちゃんのおかげで面白くて、楽しい思い出ができた。ありがとう。



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