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恵子ちゃんの誕生日①

①欲しかった銀のキョロちゃん編

小学生になるとお誕生日会などと洒落たものをやるようになる。片田舎で、農家がほとんどの私の集落にも、恵子ちゃんと言う子が引っ越してきて、お誕生日会が開かれた。

新築の綺麗で広いお家に招かれて、母が買ってくれた何かしらのプレゼントを持って行ったと思う。

トランプなどのゲームをして、お昼をご馳走になり、おやつまで振舞われた。その中にチョコボールがあった。金や銀のキョロちゃんが出れば、おもちゃの缶詰がもらえると言う、あのチョコボール。

そこで、私のチョコボールに銀のキョロちゃんが出たのだ❗️

うわー❗️っとみんなが私の手元に集中する。ちょっとだけ、誇らしいような気持ちになっていた時、誰かがこう言った。

「恵子ちゃんの誕生日だから、恵子ちゃんにあげなよ」

そうすると口々にみんなが、そうだ、それがいいと言い出した。私にとって初めての銀のキョロちゃん。なぜみんながそんなことを言い出したか、私には全くわからない。後にわかる発達障害のせいなのか、ほとんどの子が第二子でませていて、大人のルールに馴染んでいたからなのか、みんなは、恵子ちゃんにあげるのが1番いいと思っていたようだった。

さほど気が強くない私は、「じゃあ、あげる!」とさも良いことをしたかのように、それを恵子ちゃんに手渡した。

チョコボールなんて、しょっちゅう買ってもらえるわけでなく、私のことだから、きっと集める前に失くしてしまったかもしれない。でも、初めて手にした銀のキョロちゃんを、訳のわからない理由で、人にあげてしまうのは納得できず、ずっとモヤモヤが心の中に残った。

もちろん、今なら、みんながそう言った理由もわからないではない。そのくらいの大人にはなった。
早生まれのせいか、私だけ長子のせいか、発達障害のせいか、理由はわからないけど、その時、訳のわからない理由を『押し付けられた』という思いはずっと残った。

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