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午後のロードショー「ハプニング」


公開 2008年
監督 М・ナイト・シャマラン
公開当時 マーク・ウォールバーグ(37歳) ズーイー・デシャネル(28歳)

「世にも奇妙な物語」の一篇を拡大したような内容です。
М・ナイト・シャマラン監督の映画はほとんど見ていますが、「シックスセンス」「ヴィレッジ」のようなどんでん返し系と、本作や「オールド」のような一つのネタのループで押し切る一点突破系に大別されると思います。

基本的に、人間が植物の放つ毒素で自殺衝動に駆られる→自殺する→逃げるの繰り返しなのですが、クセのある登場人物と奇妙なセリフ回しで何故か最後まで見ずにはいられない惹きがあり、シャマラン監督の外連味を感じてしまいます。

魚眼レンズのように登場人物の顔面の中央にグイーンと寄っていく映像と、彼らが放つ意味深なセリフ、サスペンスホラーとしての匂わせとはったりが効いているものの、実際ストーリーはさほど展開しておらず同じ事象のループなのです。

この上なく緊迫した状況にも関わらず、
「これから数学の問題を出すから答えを出してくれ…」
「僕に考える時間をくれ!科学的に考えよう!変化する対象の確認、実験データの判読と解析が必要だ…」

シャマラン節とでも言うべき独特の奇妙なセリフのオンパレードなのです。

「風から逃げよう」
風が吹き、草木が「ざわわ…」とそよぐと、植物から毒素が放出され、感染した人間はなぜか自殺する。
人々は感染を恐れ、町から町へと逃げ惑う。

ほぼ十数分に一度人が死ぬシーンがあり、彼らの自殺の方法というのが「ライオンに喰われる」「芝刈り機に巻きこまれる」など実に痛々しくショッキングなのですが、実際に流血シーンは見せる事無く、その残酷さは登場人物の表情と音声のみで語られます。

登場人物のクセの強さも本作の見どころなのですが、極めつけはなんといっても終盤に登場する老婆です。
ラジオもテレビも一切無い情報は遮断された辺境の一軒家に住む老婆。 
登場人物たちを見るや第一声が「頼むから夕食を食べさせてくれと言いたいんでしょ…」
突然激高し「泥棒!私の家から出ていってすぐに!」
その後すぐに感染、自分の家のガラス窓に頭を突っ込んで自死するという、あまりにクレイジーなキャラなのですが、「狂う老婆」というのはシャマラン作品に度々登場する印象です。

結局、なぜ植物が汚染物質を放出させたのか、なぜこの現象がぴったり24時間で終わったのか、感染した人間がなぜ自殺するのかなどは一切説明されておらず、オチの無い長尺のコントを見せられたようです。

人々が感染に過敏になり安全地帯を探して逃げ惑う様子は、コロナ禍を経験した後に改めて見ると、未知のウイルスの怖さという点で共感でき感慨深いものがあります。

М・ナイト・シャマランと言えば「シックスセンス」のインパクトがあまりに強かったせいか、ラストの大どんでん返しを期待してしまい、本作の感想では「期待外れだった」との声が多いようです。

廃刊になってしまいましたが雑誌「TV Bros」の中で「五月女ケイ子のお悩み相談室」というおふざけコーナーがあり、その中のお悩み相談で「М・ナイト・シャマランと申します。最近良いどんでん返しがまったく思いつきません。どうしたら良いでしょうか…」とありそれに対するお答えとして「それはさぞお困りでしょう。私が思うに、相談者様はどんでん返しにこだわりすぎているのではないでしょうか…」で爆笑したのを思い出します。

彼がこのアドバイスを参考にしたかは定かではありませんが、本作以降は終盤のどんでん返しよりも人間ドラマに重点を置いている感があります。

雑多なサスペンスホラーとは一線を画す唯一無二の個性があり、「オチが無い。でもそれでいい」と許せてしまう魅力があります。

今日も無事に家に帰って午後ローを見れていることに感謝😌です。

総合評価☆☆☆☆☆
ストーリー★★
流し見許容度★
午後ロー親和性★★

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