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雪が囁くから(最新)

雪が囁くから
作 tukiyo

登場人物

遥陽(ハルヒ) 主人公。南国育ちのため、東京の大学にかようために出てきて生まれて初めて雪に触れた。女子らしいフワッとした優しい性格。初雪とともに出会った不思議な青年ルイに惹かれてゆくが、遥陽には大切な彼氏、恭介がいる。二人の間で揺れ動くが、、、

愛佳(マナカ) 遥陽の親友、恭太の妹。兄と親友の恋をいつも暖かく見守るキューピット。明るい快活な性格。急に身辺に現れ出したルイをストーカーだと怪しんでいる、

恭太 (きょうた)遥陽の彼氏、愛佳の兄、最近、急に現れた ルイをかなり敵視している。普段は心優しく遥陽をこよなく愛する青年。

ルイ 正体は雪の精霊 。真冬の間だけ魔力が強まる為、人の姿になりこの世に現れることができる。遥陽が好きで彼女に会うために人の姿になり現れた。しかし、雪が溶けきる前には寒冷地を移動して生きなければならない。完全に溶けてしまい蒸発したら、その命は失われてしまう。

❄❄❄❄❄

遥陽
さむーい!今日は冷えるなー、、、ここって冬こんなに寒かったんだねー

愛佳
うん、確かに今日は間違いなく寒い、遥陽はいつも寒い寒い言ってるからさー、いつもはちょっと大袈裟なんだよねー

遥陽
えー!愛佳、、、なによー。そんな大袈裟かな?だって、、、仕方ないじゃない?わたし、南国育ちなんだから

愛佳
まーねぇ、確かにね遥陽はこっちの大学入るために島から出てきたんだもんね〜そりゃ、寒いよね
年中暖かいんでしょ?

遥陽
そ、常夏の島だよ
だからね、、、わたし、今年はすっごく楽しみにしてる事があるんだー

愛佳
ん?なーに?

遥陽
へへ、、、それはね、雪だよ!ゆーき!
生まれてから一度もリアルで見たことがないんだー!雪をみて!触れて感じてみたいの!

愛佳
ふーん、なるほどねー
けど、わたしは嫌だわー雪なんか降られて積もったりしたらさー電車のダイヤとかおかしくなっちゃうじゃん?予定が狂うからめんどくさいんだよね〜

遥陽
まぁね〜確かに、それはそうだろうけどさ〜
、、、!!あ!!
ねーー!今、雪降ったよ!

愛佳
はぁ!こんないい天気なのに?降らないよ〜?

遥陽
降ったよ!ほら、おでこになんか冷たいのが落ちてきたもん!ほらほら、見て〜水滴ついてるでしょーー!これは絶対に雪だよ!
雪がわたしに挨拶しに来てくれたんだよ!

愛佳
、、、あぁ、はいはい、そうゆうことにしとくよ!ほら、バイト遅刻しちゃうよ!急ごう!

遥陽
あ!うん!待ってよー愛佳〜

(間) バイト先

恭太
遥陽、、、ギリギリだなぁ、ほら、早く制服に着替えなきゃ、また店長に叱られるよ!準備、ササッと俺がやっとくからさ、、、急いで!

遥陽
ごめーん恭太、、、ありがとう、愛佳、ほら、早く着替えちゃお!

愛佳
あ。うん!兄貴!サンキューっ!可愛い妹のぶんもよろしく頼むよーっ

恭太
ばーか、つまんない事言ってねぇで、お前も早く着替えろよなー

愛佳
はーい 笑
なによー、彼女の遥陽に対する態度との差が激しい気するんですけどーっ

恭太
あったりまえだろー
彼女がいちばん大事。妹は、、、えーと、まぁ大事なヤツリストの10番以内には入れといてやるから、有難く思えよ

愛佳
はぁ?
なーによ、それーっ
可愛いくないアニキーっ

恭太
お前がなーもう少し可愛いげある態度にでたら、もう少しランクアップしてやる、、、ほら、つべこべ言ってたら、店長きちまう、、、急げ!

愛佳
はいはいー

(二人が話てる後ろから急に声がした)

ルイ
あの、、、こんばんは

恭太
あ、は、はい、、、あ、お客様ですか?
すみません、、、まだ開店前なんですが
ルイ
あ、そうなんだ、、、雰囲気がすごくいいお店だから、、、ふらっと入っちゃって、、、ほら、外、すごい雪降ってきたし

愛佳
わぁ!ほんとだー!すっごい降ってきた!
あ!遥陽!呼んでこよ!
雪、見せなきゃーー
遥陽ーーっ
(遥陽を呼びにロッカーへ)

ルイ
開店前なら、邪魔になりますよね、、、ごめんなさい、出ます。

恭太
あ、いや、あの、お客様!すごく降ってますし、寒いでしょうし、、あと15分ほどで開店させるつもりですから、、、どうぞ、座って待っててください

ルイ
ありがとうございます、、、あなた、オーナーさんですか?若いのに凄いなー

恭太
あ、いいえ俺はまだ大学生で、、、でも、この店は俺が大学生になったばかりの頃からずっと働いてきたから最近じゃ店長からいろいろ任されてるんですバイトリーダーってやつかな

ルイ
へぇ、そうなんだ、、、
学生で店任されるって、やはり、すごい、素晴らしい。

恭太
はは、、、てれるな、、ありがとうございます。
少し、準備に戻ります、ゆっくりしててください!

(そこへ愛佳に急かされながら遥陽が現れる)

愛佳
ほーら、見てみなよ!
雪!すっごいでしょー!しっかり目に焼き付けなよー、わたしは、着替えちゃんとしてくるからなねー

遥陽
、、、わぁ!!ほんとだ!、、、はぁ、、、雪って、、、こんなに綺麗なものなんだね、、、
、、、すてき、、、

(テーブル席に座るルイに気づき慌てる)

遥陽
あ、、!お、お客様でしたか!す、すみません!
わたし、、雪に夢中になっちゃって、、、気づかなくて失礼しました!

ルイ
、、、ふふ、構わないよ、、、貴方は雪が好きなんですか?

遥陽
、、、えと、好きっていうよりも憧れてました!わたし南国育ちで今まで雪は一度もリアルで見た事なくて、、、だから、ずっとずっと、こうして雪に出会いたかった
こうして、雪に出会えたの今日がはじめてです。
、、、死ぬほど嬉しい

ルイ
、、、ふふ、死ぬほど?
、、、あなたみたいなかわいい人に会えて死ぬほど嬉しいなんて言われたら、、、幸せですよ。少し照れます。

遥陽
ん?え?

ルイ
、、、あ、いや、雪が、ね、きっと、そんなふうに思ってる、、かなぁって

遥陽
雪、、が? ふふ
はい、雪もわたしと同じ気持ちで、両思いなら嬉しいです

ルイ
、、、両思い、、、
、、、その気持ち伝わるといいですね。

遥陽
あ、はい!、、、ところで、お客様、、、ん?
あれ???

恭太
遥陽、、、どうした?
あれ?あのテーブルに男の人座ってたろ?
帰った?

遥陽
、、、うん、そうだよね、いたよね、たしかに、、、あれ?さっきまで話してたのになぁ
いつの間にいなくなったんだろ?

(間)

遥陽
いらっしゃいませ!、って、あ、あなたは、あの雪の日の人

ルイ
こんばんは、、、
今日はもう、お店開いてますか?

遥陽
あ、はい!大丈夫ですよ
さ、こちらへどうぞ

ルイ
ありがとう

恭太
あ、こんばんは、いらっしゃいませ、こないだは急にどうかされたんですか?
消えたみたいに居なくなっちゃってたから、、少しおどろきました

ルイ
あ、ごめんなさい、急に思い立ったことがあって挨拶もしないで失礼、、

恭太
あ、いや、そんな事はかまわないんですよ、雪すごかったし大丈夫でしたか?

ルイ
えぇ、、、僕は雪は大好きだから、平気でした。
、、、ところであの、、お嬢さん、、、

遥陽
え?わたし、ですか?
あの、なんでしょうか?

ルイ
あなたにこれを、、

遥陽
え!なんですかコレ?
わぁ、、、綺麗、雪の結晶みたい、、、

ルイ
はい、雪の結晶でできてるんですよ、、、溶けないように魔法をかけました。あなた、雪が大好きだって言ってたから、それ喜んでくれルカなぁって、、、

遥陽
え、、、これ、わたしに?、、、あ、これきっとクリスタルかなにかでできてるんじゃないですか?すごい透明でキラキラしてる、、、神秘的、

恭太
、、、遥陽、、、お客様からモノを頂くのは、、

遥陽
あ、そ、そうだよね
すみません、お客様、こちらを頂戴するわけにはいかないんです。お気持ちは嬉しいんですけど、

ルイ
、、、そうなんですね
勝手なことしてごめんなさい、、、あなたがあんまり雪をみて嬉しがってくれていたから、、、つい、、、ほんとにごめんなさい、これは持ち帰りますね

遥陽
、、、お客様、、、あの、お名前は?

ルイ
僕はルイです。お嬢さんあなたは?

遥陽
あ、わたしは野本遥陽です。あのルイさん、ほんとにすみません、せっかくなのに、、、お気持ちはいただきますから!

恭太
ルイさん、、、僕は原田恭太っていいます。
店長代理として僕からもお詫びしますよ、、、それから、遥陽の彼氏としてもね。
やはり男性が自分の彼女に宝石プレゼントするのを黙ってるわけには、、、

遥陽
恭太、やだ、恥ずかしいよ

恭太
遥陽、、、いや、ここは言わせてくれ、こういう事はハッキリ伝えるべきだと俺は思う

ルイ
遥陽さん、恭太さん、わかりました。ごめんなさい。ほんとにごめんなさい。僕、世の中の決まり事とか、、、そういうのにすごく疎くて、、、気持ちだけが先走りました。許してください。
今日は、もう帰ります、、、あの、また、来てもいいでしょうか?

遥陽
あ、、、はい、それはもちろん

恭太
、、、ルイさん、お客様としてなら俺は大歓迎ですよ、、、次はちゃんとオーダーして、なんか召し上がって帰ってくださいね。うちは熱々のミートドリアが名物です。

ルイ
熱々の、、、ふふ
食べられるかなぁ、、、
僕、、、熱いのは苦手で、、、あ、でも、また来たいから、、、近いうちに、、、では、また

(間)

遥陽
恭太ぁ、なんかずっと機嫌わるいね、、

愛佳
兄さんはさ、ほら、さっきのあの綺麗な顔したお客さんの事が気になってるんだよねぇ、、、えと、名前なんだっけ

恭太
ルイさんな、、、だっていきなり、女子に宝石プレゼントって、なんなんだか、雪の結晶に魔法かけてきたーとかもさ。怪しいよ、、あぁいうことする男って信頼できない感じがする、、、それに、、、遥陽、すっごく嬉しそうだったし

遥陽
え、、、待ってよ、違うよーあれは、あんまりにもあの雪の結晶のような宝石が綺麗すぎて、ビックリしてただけだよ

恭太
、、、へぇ、そうかな
なら、、、いいんだけど

愛佳
遥陽、とにかく気をつけなよね、、、わたしもさぁいきなりモノをくれようとする男ってどうかと思うし、綺麗な人だったけど、、、なんていうかさぁ、、、人間っぽくないっていうか、、、ちょっと妙な感じもするんだよね、ルイさん。
、、、また来るって言ってたでしょ?
遥陽狙いだな!まちがいないよ!ストーカーされちゃったりしないように!気をつけてね!

遥陽
えー!そ、そんなぁ、、、困るよ

恭太
大丈夫だ、遥陽、お前には俺がいる、変なことにはならない。絶対に俺がお前を守るから

遥陽
恭太、、、

愛佳
あー、もう、妹の前でなーにいけしゃあしゃあと歯の浮くようなセリフ吐いてんの、聞いてるほうが恥ずかしいわ!
ご馳走様!!さ、早く帰ろ、今日もさむーい

遥陽
うん、、、寒いね、、、また、、、雪、、、降るかな?

恭太
、、、さぁ、どうだか?
俺は嫌いだな、雪。寒いのも苦手だし。

愛佳
、、、て、あ、噂すれば
ほら、、、

遥陽
あーっ、雪!やっぱり降ってきてくれた!
、、、はぁ、、、やぱ、綺麗、、、わたしは好きだなぁ、、、やっぱり、、、雪が、好き。

(間)

恭太
遥陽、ほんとに家まで送らなくて大丈夫?

遥陽
うん、恭太!今日は買い物付き合ってくれてありがとね〜
駅前の本屋に寄って帰りたいから〜
今日はここでー!
じゃ、また明日、学校でね!

恭太
うん、じゃ、また明日!
気をつけて帰れよ

遥陽
はーい!、、、
さぁ、本屋さん、本屋さん、、、って、はぁ、今日も寒いなぁ、、、
南国育ちには堪えるよー
、、、でも、こんな寒い日は、、、
もしかしたら、、、
、、、あ!!やっぱり!
雪だー!
雪!降ってきた!

ルイ
遥陽さん

遥陽
、、、あ、、ルイさん!
、、、え、どうしてこんなとこで会うんだろ?
ルイさん、もしかして、お家、この辺りですか?

ルイ
えぇ、、そうです。僕は遥陽さんのすぐ近くにいるんです
、、、あ、そうだ、、、よかったら、、、少しお話できませんか?
お家はあちらのほう?
送りますよ、、、歩きながら、お話しましょう、、、

遥陽(心の声)
そう言ってルイさんは
ニッコリ微笑んだ、、、優しい微笑み、、、わたしはまた改めて、ルイさんをしげしげと見た
背が高い、、、髪も目も肌も色素が薄い、、、目なんかちょっと青みがかってみえる、、、ハーフなのかもしれない
全体的になんとなく儚げな雰囲気を漂わせるこの人を、今、捕まえておかなかったら、もう二度と会えないような、そんな不思議な気持ちになった

遥陽
あ、はい、、、わたしもルイさんとお話してみたいです。
、、、じゃ、歩きながら、、、

ルイ
うん、、、
雪、、、降ってきたね、、、君に会う日はいつも、雪だ。

遥陽
あ、そう言えば、、、
確かにそうですね

ルイ
雪も君が好きなんだよ
きっと、君に会いたくて降るんだ、、、ほんとに君に会いたかった

遥陽
、、、え???

ルイ
、、、あはは、そんなふうにね、雪が囁きながら降ってくる気がしない?
ほら、目を閉じて、雪の降る音を聴いてごらん

遥陽
、、、ルイさんて、不思議な事を話す方なんですね、、、雪が囁きながら降ってくる、、、かぁ、、、ロマンチック
、、、じゃあ、雪は他には私になんて囁いてくれるんだろう

ルイ
、、、君が好きだよ、、

遥陽
え?えぇ!?

ルイ
、、、ってさ、雪がね
そう言ってるよ。
遥陽、、、君が好きだ。ってね、、、

遥陽
、、、ルイさん、、

ルイ
ふふ、、、急ごう、、、雪、たくさん降ってきた
僕は平気だけど、君は寒いだろ?風邪ひいちゃう、、、

遥陽
優しい笑みを浮かべるルイさんの傍らで、時折、そっと背の高い彼を見上げた、、、長いまつ毛に
ふわっと雪が降りたりして、、、
なんか、、、すごく、
私、、、ドキドキしてる
まるで映画のワンシーンみたいにゆっくりスローモーションで時が流れるような錯覚を覚えながら、、、だけど、実際には、あっという間に時間は過ぎて

遥陽
あ、あの、じゃ、わたし、この辺りで!もう、そこを曲がればうちだから、、、

ルイ
うん、ありがとう、少し君と話せて嬉しかった。
じゃ、、、また、こんなふうに偶然に恵まれますように、、、君に幸運の雪、、、降りますように、、、

遥陽
、、あ、はい、さよなら、、あ、あの!!

ルイ
ん?なぁに?

遥陽
、、、ルイさん、明日!
、、、また、会ってくれませんか?
わたし、明日はバイトがなくて、、、駅に6時、、、また、少しだけ歩いて、、、お話、、、したくて、、、あ、わたし、急に、、、何言ってるんだろ!?ごめんなさいっ

ルイ
いいよ、明日、6時に駅だね、わかった、待ってる

(間)

、、、わたし、とんでもないことを言っちゃった。

自分から男の人に待ち合わせをお願いして、しかも、よく知りもしない人、、、彼氏だっているのに、、、
どうかしてる、わたしは
ホントに、、、
でも、会わずにはいられない、、、ルイさんに、、、会いたい。

(間)

ルイ
遥陽さん、こんばんは、、、

遥陽
あ、こんばんは、ルイさん、、、
あ、あの、、、今日はまた一段と冷えますね、また、雪かなぁ?

ルイ
降って欲しいですか?

遥陽
、、、はい、雪みたいです!

わたしがそう言うと、彼は暮れてゆく空を見上げてから、すーっと目を閉じた、、、
不思議に、間もなくして、ハラハラと雪が舞い降りてくる、、、

遥陽
えーっ、、、わ、まるでルイさんがふらせてくれたみたい!
魔法みたいです!

ルイ
魔法なんだ、、、
実はね、僕、雪の精霊なんです。
あなたがあんまり僕を、、、雪のことを恋しがるから、、、その姿がかわいくて、、、こうして会いに来てしまった。

遥陽
、、、雪の、、、精霊?

ルイ
、、、ふふ、、、冗談です。ちょっと、からかいました。

遥陽
えー、もう、、、本気にしちゃいそうでしたよ!だってルイさん、、、ホントに雪の精霊みたいに、、色白で綺麗だし

ルイ
僕が雪の精霊なら
遥陽さん、あなたは、まるで春の日差しを思わせる女神のようだ、、、温かく穏やかで
皆がホッとするのでしょうね、、、あなたが持ってるその雰囲気、憧れます。

遥陽
わぁ、、、嬉しいです
そんなふうに言って貰えて、わたしのこの遥陽って名前、春の温かな午後に生まれたからって、ついた名前なんです、だから、そんなふうに生きれたらなぁ、、、て、人を温かな気持ちにできるような、、、

ルイ
そうですか、、、
あなたにぴったりな名前だ、、、あなたといると
温かい、、、て、いうより、、、暑いくらい、
今日は、とくに、なんだか、熱を感じる、、、
ん?あれ?、、、ごめんなさい、ちょっと、、、いい?

遥陽
そう言ってルイさんはわたしのオデコに手を当ててきた、、、
ヒヤリ、、、とした、手の冷たさ、一瞬驚いたけど、、、なんだろ、すっごく気持ちいい、、、あれ?何だか、頭がボンヤリする、、、

ルイ
遥陽さん、君、熱がある、、、いけないな、、、急いで帰りましょう

遥陽
え??あれ?
、、、あ、ホントだ、何だか、ちょっといつもとちがうかも、、、

ルイ
さ、送ります、早く、、

遥陽
わたしは、ルイさんに促されて、歩きだした。

ルイ
大丈夫ですか?遥陽さん?、、、ふらついてきてる、、、遥陽さん、僕の手をとって、、、さ、、、しっかりして、、、おうち、もうすぐです。

遥陽
、、、は、はい

どうして、こんなに熱があることに気がつかなかったんだろ、、、
、、、きっとルイさんの事で頭がいっぱいになっていたからだ、、、

わたしの手をひいてくれる、ルイさんの手は冷たい。寒いからかな?
でも今はこの冷たさがすごく気持ちいい、、、

ルイ
、、、手、、、熱いね、、、はぁ、君の熱で、、溶けちゃいそう

遥陽
、、、え、あはは
ルイさん、ジョーダンばっかり、、、はぁ、ごめんなさい、、、せっかく会ってもらったのに
わたし、熱なんか出しちゃっ、、、

ルイ
、、、え?ちょっと、遥陽さん?大丈夫?
、、、わ、、、いけない、熱がすごい、、、
、、、失礼、抱き上げるよ、、、

遥陽
ふわっと身体が宙に舞ったように感じたあと、わたしの意識はそこで途絶えてしまった。

(間)

ルイ
とりあえず、、、
ベッドに寝かせたけど、、、彼女、、、熱いなぁ、、、酷い熱だ
、、、そばにいると、、、ほんと、、、熱くて、、、溶けそうだ、、、

遥陽
、、、う、、、ん
、、、

ルイ
遥陽さん?大丈夫?
、、、辛そうだなぁ、
えっと、冷やすもの、だよね、、、こんなときは、、、何をすればいいんだ、、、人間は、どうしたら、また元通りになるんだ?、、、分からない、、、遥陽、、、つらい?

遥陽
、、、う、、、ん、、、

(電話のコール音)

愛佳
もしもし、遥陽?
あれ?出ないなー留守録しとくね〜
明日、大事な試験の日だからね!寝坊しないでよ!あれに落ちたら、ちょっと危ないんだからねー、こらー寝ちゃったのかぁ?、、、もう、大丈夫かなぁ、とにかく明日、約束の時間にね!
じゃーね

遥陽
、、、あ、、、
愛、、、佳
そだ、、、明日、、、大事な、、、日、、、わたし、、、寝てなんか、、、いられな、、、

ルイ
、、、え、あ、ダメだよ
寝てなきゃ、、、
明日?大事な日なの?
明日、そこに行かなきゃ、、、君は困るんだね、、、
遥陽、、、辛そう、、、
遥陽、、、僕が、助けてあげる

遥陽
朦朧とする意識の中で不意に誰かの手が額と頬を包む感触がした、、、
そして、、、優しい囁きが聞こえてくる

ルイ
、、、遥陽、君が好きだよ、だから、僕が君を楽にしてあげる、、、君がまた、元通り元気に笑ってくれるなら、、、僕は
、、、君にすべてを捧げても悔いはない、、、
、、、例え、溶けて、、、消えてしまっても、、、
遥陽、君に会えて良かった、君が僕を、、、雪を好きだと言ってくれて
ホントに、、、嬉しかった、、、
、、、はぁ、、、君は、熱いな、、、僕の君への思いのようだよ、、、
熱くて熱くて、、、身を焦がすほどに、、、
、、、うぅ、、、
遥陽、、、君を悩ませるこの熱は僕が全部引き受けてあげる、、、、だか、
、ら、、、君は、いつものように、穏やかな、春の日差しに、、、なれ、、、遥陽、、、、(雪が溶けて蒸発している)、、、君の身体、、、あつい、、、な。

(間)

遥陽
、、、朝、、、目が覚めると、いつもの自分のベッドの上にいた

、、、あれ?わたし?
昨日は、、、どうしたんだろ?
えっと、、、誰かと一緒にいたような?
、、、ん?誰と?

身体をベッドから起こす

「、、、あれ?服?着替えないで寝ちゃったの!?、、、それに、、、なに?髪の毛、、、濡れてる、、、なんで?」

結局、いくら思い出そうとしても、、、
それがなんだったのかまったく思い出せなかった、、、
そして、もうひとつ、不思議な事がある

左手に何か握りしめていることに気づいた私は
そっと手を開いた

「、、、あ、雪だ」
握りしめていたそれは
雪の結晶を小さな宝石にしたようなものだった
、、、なぜ、こんなものを握りしめていたのか、これをどこで手に入れたのか、、、それすらも、わたしはなんにも覚えがなかった
部屋に差し込む日差しに照らされた、その結晶は
キラリと光る
その煌めきがまるで囁きかけているように感じた

ルイ
遥陽、、、君のことをずっと見守っているから、、、

遥陽
まるで、もう二度と会えない、、愛しい人が囁きかけてくるような気がして、、、
気がつくと、頬が涙で濡れていた、、、
もうすぐ、、、クリスマスだ、、、
窓の外を見ると
快晴、、、
青空が広がっている
、、、クリスマスには
雪は、、、降るだろうか?
わたしは、また、手のひらの中のきらめく結晶をみつめた。

おわり

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