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9. 苦しみからの解放。東京NSC13期同窓会

挨拶

人生やりたい事はやるべきである。それを行動に移すにはとにかく一歩を踏み出すべきだ。その時必要なのが仲間なのだ。

それが今回僕が伝えたいテーマである。

僕のnote『芸人時代の話』も終盤に差し掛かっている。自分の身に何かあった時にこのnoteが遺書になってもいいように自分の思いや体験を記してきた。

是非、僕のnoteを1から順に読んで疑似体験をしていただけたらいいなと思う。下のマガジンから是非一度読んでみてください。

同窓会を企画

2023年夏

吉本の同期による同窓会をふと思いついた。

学校に同窓会があるのにNSCに同窓会がないのはどうしてか。あってもいいのではないか。

一度スイッチが入ると止まらないのが僕の性格なのだ。

しかし、幹事は僕である。

本来、こういうのを主催するのは主席であるとか、陽の当たる場所にいた人間である。

NSCの卒業も怪しかった、ド底辺の人間のやる仕事ではない。押し付けられて無理矢理ならまだしも率先して声を上げたのである。

これが非常に説明をややこしくさせてしまった。なぜ僕がやるのか?と説明が一つ増えてしまうからだ。

僕は不安を払拭しようと、宗教や何かの勧誘ではないと説明はしたが、これはこれで余計に怪しまれた。

『何で今同期をたくさん集めたいのか?マルチなのか?意図はなんだ?』

『わざわざやらなくても普段から同期と会っている。』

『そもそも幹事の事を知らない。』

などなど、厳しい出だしとなった。

一方、『企画してくれてありがとう』

『こういうのが、あったらいいなと思っていた』


『もう2度と同期と会えないと思っていた』

など同窓会を後押しするような意見も多数あった。

そもそも、何でこの同窓会を主催しようと思ったのか?

それは、元相方の近江君にきちんと謝りたかったからだ。わだかまりをなくしたかった。そして、お礼を言いたかった。

今だから話せる事もあるだろうし、当時の答え合わせをしたかった。

こんな思いを持っている人は自分以外にもたくさんいるのではないか?と思ったのだ。

元相方と2人で会うのは抵抗があるだろうし、実現しないと思ったのでこういう形をとった。

ちなみにこの同窓会の参加条件は東京NSCの13期生であること。現役か引退しているかは問わない。NSCの卒業も不問にした。参加のハードルは極力下げた。

僕は1人でも多くの人に参加して欲しかった。それはたくさんの同期と触れ合いたかったからだ。

とにかくたくさんの同期に会いたかった。

自分のように同期に会うことを必要としている人が他にもいると思ったからだ。

実際来てみたらこの人誰だっけ?みたいのも面白いと思った。

変な尖り方をして迷惑をかけた人に謝りたかった。

ライブなどでやる気がないなら帰れとか平気で言ってきた事を心から謝りたかった。

もちろん感謝を伝えたい人もいた。

あるいは、当時は嫉妬で上手く話せなかったけど今だから言えるなんてこともあるだろう。当時の思い出話もしたかった。

現役でやっている人も、セカンドキャリアで頑張っている人も一度は同じ志を持ってNSCに入った訳で分かり合えると思った。

ただ、実際はそんなに甘くなかった。と言うのは現役で今も戦っている人と、セカンドキャリアとで目線が全然違うのだ。どちらの意見も正しいし、それを一つにしようとするのは無理があった。

幹事グループの結成

僕は同窓会を開催するにあたり幹事グループなるものを作った。

お誘いの時点で『自分に出来ることがあれば手伝います』と言ってくれる人がいたことが幸いだった。

単純に人手という意味でも助かったが、それ以上に僕の案に対して軌道修正してくれる人が必要だったのだ。

僕の良いところは今回のように、言い出しっぺになれるということ。しかし、悪いところは見切り発車になりがちということ。

これが1人だったらとんでもなくイタい事をしていたのは言うまでも無い。実際幹事グループのおかげで黒歴史にならずにすんだと思うことがたくさんあった。

なるほど、そういう手があったのかと思わされる事もあった。発想が柔軟で勉強になる事が多かった。

幹事グループに、現役時代同期を引っ張っていたリーダー格のメンバーが入ってくれた事で同窓会の信頼度も上がった。

幹事グループにはよく怒られたけど、同期と絡める事が幸せだった。

NSC時代は同期と言えどもエリートと底辺は中々交わらなかった。しかし、時間が経ち同じ社会人としてフラットに会話が出来るのは不思議でもあり嬉しい事でもあった。次のフェーズに移った事を象徴する出来事であった。

同期とは

芸人という仕事はやはり特殊で、セカンドキャリアで悪目立ちをしてしまう事がよくある。職務中、前に出ようとすれば、仕事を舐めていると言われるし、存在を消していると芸人だったくせに面白く無いと言われる。

なんか面白いこと言ってよと何度言われただろう。ウンザリする程嫌なフリだと思う。

実際面白かったら辞めていないのだ。

セカンドキャリアではその辺の苦労が尽きることはなかった。

『こいつ、芸人より面白いから突っ込んであげてよ』と無理矢理会話をさせられ困惑したこと。

『俺⚪︎⚪︎より面白いだろ?』など、プロの芸人を下に見る発言に我慢せざる得なかったこと。

僕が地味に辛かったのは、芸人さんの名前を呼ぶ時だ。芸人を辞めてからも先輩芸人さんの事はさん付けで呼ぶ習慣があった。辞めたからと言って呼び捨てで呼ぶと言うのは抵抗があった。だからと言って普段の会話の中で芸人の名前が出るたびにさん付けをすると言うのは周囲からすると鼻につくわけだ。

ある日飲みの席でさん付けをした事で『知り合いみたいに言うな!』と言われた事があった。それ以来芸人さんの名前を呼ぶ事すら躊躇うようになってしまった。

この様な悩みに対して会社の同期に話しても何のことやら分からない事が多い。ズレたアドバイスをされるのがオチである。その点、芸人の同期に相談すると頭がスッキリする事が多い。

同期というのは不思議なもので、強い繋がりを感じる。会社の同期とは全然違う何かがある。芸人の同期にしか分かってもらえない事もあるし、何か相談したい時まず同期を頼ってしまう。出会ってから17年経つが辞めた今でも繋がりが消える事はない。

東京NSC13期同窓会開催

2023年11月25日

新宿の繁華街から離れたオフィス街にて、東京NSC13期の同窓会を開催した。

会場を決めるのは直前までとても難航した。まだコロナも流行っていたし、インフルエンザも多数出ていた。

当日、子供が熱を出して行けませんとかドタキャンが出る事も予想されたからだ。

ドタキャンを想定して予算は抑えつつ、来てくれた人を満足させる場所という事で新宿の中華のお店になった。

中華の店だから床がベタベタで汚いかなと思ったが全くそんな事はなく、清潔感のある店舗だった。

お店の人が中国の方でやりとりが心配ではあったが、こちらの希望通り最後まで親身に付き合ってくれた。


幸いドタキャンはほぼなくて滞りなく二次会まで開催する事が出来た。反省点は山ほどあったが、参加者は概ね満足してくれたようだった。二次会では同期のお店にお金を使う事も出来てそれもよかった。

ちなみに同窓会のグループLINEには100人以上集める事が出来たが、当日集まったのは60人くらいだった。

この人数を多いと捉えるか少ないと捉えるかは非常に難しかった。僕はグループLINEの人数に対して少ないと感じたが、幹事グループの見解としては僕が幹事でこれだけ集まったのは十分過ぎるだろうとの事だった。

確かに。本当そうなのだ。そう言われて感謝が大きくなった。

だって何かの勧誘かもしれないし、何か買わされるかもしれないし、何年も会ってない間に反社になってるかもしれない。とにかく、怪しさ全開の中、来てくれたのだ。感謝しかない。

当日までずっと辞めた人間が13期を名乗るのは現役に対して失礼かなと思っていたけれど、集まってくれた人からは開催してくれてありがとうと感謝をされたし、不参加の方からも激励の言葉を頂いた。

そして、思ったのはこんなイタい事出来るのは自分しかいないという事。そう考えると思い切ってやってよかったのだ。

久しぶりに会う同期は皆優しかった。それは目がバキバキの現役時代の印象で接していたからそう感じたのかもしれない。それに自分も現役の時は友達探しに来てる訳じゃねーんだよ。そんな気持ちでいたから話していて照れや恥ずかしさもあった。

しかし、それぞれのステージで戦っている同期達と会えた事は幸せでしかなかった。時間は全然足りず、もっと話したかった。

苦しみからの解放

僕が芸人を始めたのが20歳くらい。

NSCに入ったのが24歳。

吉本所属になったのが25歳。

芸人を引退したのが28歳。

そして、今が41歳。

芸人を引退してから13年が経った。

芸人時代の食えない苦しさもあったが、やりたい事をやれている幸福感の方がはるかに大きかった。

むしろ、実は芸人を辞めてからの10数年のが1番苦しかった。


セカンドキャリアでの元芸人ならではの苦労ももちろんあった。

でも、それ以上に心を支配していたのは空虚感の様なものだった。

テレビをつけると、昔の先輩や仲間が出ている。それは嬉しい事であったが、何故か胸が締め付けられた。

喜ばしいことだが、内心は喜べなかった。

あまりにつらくて、実は13年のうち半分くらいはお笑いを一切見れない時期があった。ここ数年でようやくまた見れる様になったばかりなのだ。


テレビをつけては、あーいいなー。悔しい。辞めてさえいなければもしかしたら。そんなモヤモヤに苦しめられていた。

そんな中、同窓会が開かれた。現役の人もセカンドキャリアの人もそれぞれ苦しんで戦っていると分かり不思議とモヤモヤが全て消え去った。

苦しんだ10数年が嘘みたいにキレイになった。

自分という小さな箱から出られた瞬間だった。

同窓会終了後ある参加者から今回の同窓会のおかげでやっとモヤモヤがなくなったと言われた。あー、自分と同じ境遇だと思った。

賛否両論あったけれど、開催して良かったと思う。前に進めたのだから。

人生やりたい事はやるべきである。それを行動に移すにはとにかく一歩を踏み出すべきだ。その時必要なのが仲間なのだ。

僕は心底そう思った。ぼんやり見えていた物を形にしてくれた同期には感謝している。

同窓会を終えてからは空虚感に襲われる事はなくなり、お笑いを楽しめるようになった。今は素直に過去の仲間達の努力が報われる事を心から願っている。

そして、僕は僕のステージでやりたい事をやろうと思う。昔の夢に比べたら地味な人生だけどとても大切な人生。昔も今も幸せだと思えるようになった。それが何よりの収穫だった。

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