製品プラと容リプラの一括回収がスタートしますが…
プラ新法施行から間もなく1年
「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」(通称:プラスチック資源循環法、プラ新法)が施行されてから間もなく1年。
2023年度からは法律の目玉の1つである、製品プラスチックと容器包装プラスチックの一括回収がスタートします。
これまで容器包装に使われたプラスチックは容器包装リサイクル法(容リ法)に基づき市区町村が回収し、再商品化事業者がリサイクルを行っていましたが、プラスチック製品については対象外となっていました。
このため家庭では同じ使用済みプラスチックでも分けて排出しなければならず、面倒で分かり難い面がありましたが、これで悩むこともなくなりよりリサイクルも進むことになります。
非常に良い取り組み、のはずですが…
一括回収を行うには、①容リ法ルートを活用する方法②市区町村と再商品化を実施するリサイクル事業者が連携して行うプラスチック資源の再商品化計画を作成し、国(経済産業省、環境省)から認定を受けて実施する—の2つの方法があります。
①容リ法ルートを活用する方法
従来と同様に収集したプラスチックを容器包装リサイクル協会に引き渡し、協会が入札でリサイクル事業者を決定するため、市区町村は直接リサイクルには関与できません。
②市区町村と再商品化を実施するリサイクル事業者が連携して行うプラスチック資源の再商品化計画を作成し、国(経済産業省、環境省)から認定を受けて実施する
市区町村が主体となって選別からリサイクルの工程までを一体化・合理化することでコスト削減を図ることができます。また、リサイクル方法を市区町村が決めることができるので、回収したものがどのようにリサイクルされているのか、住民により分かりやすく伝えることができます。リサイクル事業者にとっては、容リ法の入札制度では落札できない可能性もありますが、市区町村から直接リサイクルを請け負うことで、ものを安定確保ができるメリットがあります。
国の認定第1号の仙台市は4月から全域で実施
この再商品化計画ですが、昨年9月の宮城県仙台市、同12月の神奈川県横須賀市と愛知県安城市と、まだ認定を受けたのは全国で3市(2023年3月15日現在)。
このうち横須賀市は今年4月から9月までは一部のモデル地区で行い市内全域での一括回収は10月から、安城市は来年1月からの開始としており、今年4月から市内全域で実施するのは、認定第1号となった仙台市のみということになりそうです。
仙台市ではプラ新法に先駆けて、2020年度と2021年度に地区を限定して一括回収・リサイクル実証事業を実施してきました。
もともとごみの分別・減量化には力を入れており、ごみ分別の啓発キャラクター「ワケルくん」の市民の認知度もかなり高いとか。
こうした土台もあり多くの市民に受け入れられたことから、一括回収の本格実施を決め、再商品化計画を作成し全国第1号認定に至ったということです。
認定を受け4月の本格実施に先駆けて、1月からすでに市内10地区で先行して一括回収を行っています。
人口100万超の大都市・仙台が一括回収の先陣を切ることには、全国の市区町村からも注目が集まっています。
市区町村にとって最大の課題は「費用負担」
市民の分別も分かりやすくなり、リサイクルも進む、良いこと尽くめのように思える一括回収ですが、再商品化計画の認定がまだ3件しか出ていないことからも分かるように、多くの市区町村が様子見だったり、二の足を踏んでいるというのが現状。
実施への最大の課題はやはり「費用負担」の問題です。容器包装プラスチックのリサイクル費用は製造事業者の負担となっていますが、製品プラスチックに関しては市区町村が負担することになります。
仙台市では一括回収を行うことで年間およそ1.3憶円のコスト増となることを見込んでいます。ただでさえ財政難という自治体が大半の中、新たなコストをかけて一括回収を行うというのは難しいというのが実情でしょう。
また、リサイクルを請け負う再商品化実施事業者の問題もあります。仙台市にはもともとJFEエンジニアリンググループのJ&T環境の工場があり、そこで市の容器包装プラスチックも扱っていたことから、スムーズに連携して再商品化計画を作成することができました。
こうしたリサイクル事業者が地域に存在しない市区町村が事業者を誘致するとなると、多くの時間と費用がかかることになってしまいます。
こうした費用問題等については、国の一歩踏み込んだ支援策も必要かもしれません。
まだまだ課題山積みのプラスチック一括回収ですが、少しずつ歩みを始めるということで、今後も動向を注視していきたいと思います。
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