書評 溝口彰子著『BL研究者によるジェンダー批評』 その1
この本で、私が一番好きなのは「はじめに」の部分だ。
この部分を読むだけでも、この本を買う意味があると思う。
「批評とは何か」がこれほどわかりやすく書いてある本はなかなかないと思う。
そして、それが「楽しいこと」であり、「世の中をよりよくすること」にもつながる可能性がある、ということばもとてもいい。(「つながる」と言い切らずに、「つながる可能性がある』というところにも、溝口さんのまじめさを感じる。)
大学生になって初めての授業がこんなふうに始まったら、それからの大学生活が輝いて見えるだろう。
この本は二部構成になっていて、最初パラパラとみた時は、そこがよくわからなかったのだが、その点も「はじめに』で明確に説明されている。
つまり、第一部は一般の読者に向けた批評入門であり、第二部はその元になった溝口さんの論文や評論になっている。
一般の読者なら第一部を読んで、興味があれば第二部を読んでもいいと思うし、学生であれば論文や批評を書く際の参考として、第二部を読む、ということもできる。逆に研究者が、一般の人向けの文章を書くときにも、論文から入門書への落とし込みの例としてこの本は参考になると思う。(溝口さんは「第一部は第二部のメイキング」と書いていたが、一部は二部を噛み砕いだもので、ある意味、内容もさらに練られており、私にはむしろ「第二部が第一部のメイキング」という感じがした。)
「これまで批評文を書いたことがないという方も、映画の応援コメントのような短い文章は、気軽に書いてみていただけるのでは、と思います。」というメッセージも、批評が身近なものであることを実感させ、書く気にさせるもので、とてもいいと思う。
(つづく)
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