3.「簿記がわかってしまう魔法の書」小沢 浩(著)

 簿記は、門外漢には一体何をしているのか見当がつきづらいという意味で魔法の要素は確かにある。そして、これを理解しようとテキストをめくると貸方・借方という聞きなれない言葉が出てきて学習の意欲を削ぐ。本書は、それを簿記という魔法を使うための呪文の言葉だと説明する。その謂われを理解する必要はないとした上で、語源にも触れるのが本書の特質を物語っている。検定試験対策と言うより簿記の考え方の原則が全編にわたって述べられている一冊。「簿記がわかってしまう魔法の書」小沢 浩(著
 
 本書では農夫の少年が、魔女から手配された豆の種の報酬を要求され額を過大に払いそうになる場面が出てくる。そこで魔女はやれやれという感じで、費用と収益の差分から求められる利益を諭す場面が展開される。現実に金融の知識がある人物が怪しいビジネスを展開することはあり、それを見破るとまでは言えずとも御守りとして簿記の知識は役立ちうる。
 また減価償却費の考え方として、耐用年数に応じて市場価格が目減りする分を費用計上すると一般に説明されがちだが、市価うんぬんではなく取得にかかった正味の年毎の費用を計上するという指摘にそうなのかと唸った。

「ヨーロッパが生んだ最大の発明の一つは、複式簿記である」
ワイマール公国財務大臣/文筆家 ゲーテ

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