今日なかった事
冗談というのは事実とは違うから冗談になる。
いちいち例をあげるのも恥ずかしいけど、、
例えば僕が高校生の時に「食べ盛りだもんね」と言われてもそれはジョークにはならない。
毎日カツカレーの大盛りしか食べなかった僕が、食べ盛りでなかったと言えるはずもない。
だけどこれが48歳になった時に「食べ盛りだもんね」と言われたら、それは冗談だ。
初老が食べ盛りな訳がない。
もう既にお腹は出ていく一方なのに、食欲は痩せ細りはじめている。逆に冗談だと思いたい。
僕の中の友人の定義は「今日あった事」と「今日なかった事」の両方を話せる事だ。
「今日あった事」なんて誰にでも話せる。雨が続いてますね、とか、こんな映画を見ました、とか。
世間話の大半は「今日あった事」で構成されていると思う。
一方、「今日なかった事」は言う人を選ぶ。
雨が続いてますね。光鱗の槍ならずっと威力2倍ですよ。
こんな映画を見ました。お母さんに禁止されてるので本当はダメなんですけど。
こんなの大抵の人には言えない。本当にそうと思われるかもしれんし。
この「実際には起きていない事」が冗談だ。
大袈裟だったり、あり得なかったり、頭の中だけの出来事だったりが「今日なかった事」と言えると思う。
これは何を面白いと感じるか、何を知っているか、どんな関係性かによって言える範囲が決まる。
いうなれば、相手のことをちゃんと知っていないと冗談は通じないのだ。
だから、僕の中の友人の定義は「今日あった事」と「今日なかった事」の両方を言える人。
上京したての頃、大学の友人にこんな話をされたことがある。雨の降る初夏の事だった。
これをさも面白い話かのように僕に話してきた。
いや、別にウケ狙いで話してないんじゃない?と言われそうだけど、話し方は完全にすべらない話のテンションできていたから、勘違いじゃないと思う。
足が濡れたの所が彼にとってはオチだったようで、
今でもあのドヤ顔と湿った空気を思い出せる。
今になって思うと、彼も「実際に起きた事」しか話していない。だから僕は楽しく聞けなかった。
(そして東京の人間が面白くないのではなく、彼が飛び抜けて面白くないだけだった)
偉そうに語ってはみたものの、僕もまだまだ「なかった事語り」は苦手だ。noteを書く時だってあった事の羅列ばかりになってしまう。
でも、結局これを言えるのが一番の友達かもしれない。
「ごめん今聞いてなかった!」
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