女もつらいよー中国の未婚事情

 結婚は人生の一大事らしい^^

 今や、30代前半の日本人男性の未婚者率47.3%、女性で34.5%、30代後半でも男性35.6%, 女性23.1%という。独身者で交際相手、恋人がいるという人は18-35歳の男性で25%、女性で35%しかいないという。なんたること!
 

          国立社会保障・人口問題研究所 出生力調査 

 というのも、結婚することによって、「今以上」、「親以上」の生活が期待できるというかつての夢は今や「見果てぬ夢」と化しているから?
 のみならず、かつて結婚が容易に(?)できた理由も雲散霧消している。第一に、男性の殆どが、終身雇用、年功序列賃金に守られた正社員か自営業者の跡継ぎで経済的な心配はなく、女性サイドにあっても、相手が誰であっても経済的側面では安心して専業主婦になれたが、当今の不平等社会情況では、就業は固より収入が安定して増える見通しなぞ得られない。第二に、実は男女の出会いが容易だった点も大きい。お節介なまでの友人、親族のよる見合いという麗しき習俗が生きており、自ら活動することなく結婚相手候補に出会えた。男女とも正社員という未婚異性が身近に多い職場では、社内旅行だの、社内サークルだの自然な出会いの場面があり、じっくり相手と親しくなる時間的余裕もあった。このためであろうか、往時の恋愛結婚カップルの半数が職場結婚であった。

 かくして日本をはじめ先進国では未婚が広がっているのだが、西側各国のみならず、中国とてその例外ではない。日本では未婚男性をかつて朝鮮語由来の「チョンガー」と呼んでいたが、この語はもはや昭和世代にしか通じない。中国でも同様のニュアンスで“光棍儿”と称していたが、最近では“剰男”、さらに未婚女性を“剰女” と言う。「」は「売れ残り」や「余り」を意味する。

 中国におけるこうした未婚情況を孫紅著『“剰男”“剰女” 適婚人口的初婚風険』(中国社会科学文献出版社、2022年)が解読している。中国国家統計局によれば、21年末時点の総人口14億1,260万人のうち、男性7億2,311万人に対し、女性が6億8,949万人と男性3,362万人も多い。

 

 女性100人に対する男性比率として105±2人が自然状態とされるが、国家計画出産委員会によれば、男女比は118だという。出生時の男女比も111.3と依然高水準を維持しており、結婚適齢期(20〜40歳)では108.9という。

 こうした人口動態のアンバランスな男女比が“剰男”を生み出すマクロ的な構造要因ではあるが、本書が注目するのは個人の配偶者選択におけるミクロレベルの意思決定である。孫は婚姻に際しての男女双方の「需給」に注目し、婚姻市場への参入としての初婚年齢の推移をたどっているが、年齢、所得、学歴、職業、居住地域、親世代の情況などによる差異が著しいという。

 殊に、《嫁高娶低》という傾向は注目される。つまり、結婚相手として女性が社会的階層の上位者を求めるのに対し、男性は下位者を娶ることを望むという。女性にとって、自分より社会的階層が上位の男性は人数が限られ、奪い合いの状態になるのである。

 中国女性はマクロ的には希少な存在ではあったとしても、結婚相手はよりどりみどりの選び放題ではないのだ。特に大都市に住む高学歴の職業女性にとってその配偶者選択は容易ではない。ここから30歳前後の未婚女性を中心に“剰女”が生まれることになる。

PEAK CHINA HOUSING Kenneth S. Rogoff Yuanchen Yang    

 他方、男性にとっても、結婚の必須条件とされる住宅・クルマ・預貯金、そして彩礼(=結納)の準備は極めて高いハードルである(see 《男はツラいよ:高騰する彩礼》)。中国でも女性の社会進出が進み、学歴や経済力の向上とともに、男性に要求する水準も上がっている。いまや北京、上海など大都市の住宅価格は平均年収の40倍以上で、家を買うことなど見果てぬ夢でしかない。
 結婚観のミスマッチが“剰男”、“剰女”を大量に生み出している。       [了]
                                                   






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